2020年 4月 4日 (土)

元NHK相澤冬樹が放った渾身のスクープ。「森友」で自殺に追い込まれた財務省職員赤木の遺書がもっと早く出ていれば安倍に大打撃になったのに!

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   相澤冬樹大阪日日新聞記者が大スクープを放った。媒体は週刊文春。タイトルは「森友自殺財務省職員 遺書全文公開『すべて佐川局長の指示です』」

   2年前の2018年3月2日、朝日新聞が「財務省が森友の国有地取引関連の公文書を改ざんした疑いがある」と報じた。その5日後の3月7日、改ざんを命じられた近畿財務局職員・赤木俊夫(54)が自宅で首を吊って自殺した。

   当時、赤木の妻に遺書とメモが残されている、そこには文書の書き換えを指示されたとあり、佐川宣寿(のぶひさ)理財局長や麻生太郎財務相の名前が書かれているといわれた。

   相澤はNHKで司法を担当していて、森友学園事件を追っていた。

   彼がNHKを辞めてから書いた『安倍官邸VS.NHK』(文藝春秋)によると、ある記者が赤木のメモの内容を掴んできた。そこには、改ざんは財務局が勝手にしたのではなく、本省からの指示があったこと。佐川(前理財局長)の指示で書き換えたこと。決裁文書の調書の内容について、上から、詳しく書きすぎているといわれ書き直しをさせられた。このままでは私一人の責任にされてしまう、などと書かれていたというのである。

   早速、遺族取材を始め、赤木の父親、妻にあたるが、一切の取材を拒否されてしまう。「こうしてご遺族の取材は頓挫した」(同書より)のである。

「これ、見たいですよね」安倍と近い小池NHK報道局長に疎んじられ、記者職を外された相澤に赤木の妻から近づいた

   森友学園取材を続ける相澤は、安倍官邸と近い小池英夫報道局長に疎んじられ、記者職から外されてしまう。

   相澤は、「森友事件は私の人生を変えた」と思い定め、この事件の深層を追うためにNHKを辞めて大阪日日新聞へと移るのだ。

   相澤とは2019年の2月に会って話を聞いている。

   彼は「森友事件は森友学園の事件ではない、国と大阪府の事件だ」といった。

   自殺した財務省職員については、「改ざんはなぜ行われたのか、どんなふうに行われたのか、亡くなった方はどうしてあそこまで追い込まれたのか。そういうことを解明して、彼の無念を晴らしてあげたい」といったが、この事件の闇は深いから解明には時間がかかる、「正直、一生かけてやっても、結局、最後の最後の本当のところは分からなくて、死ぬ間際に真相解明できませんでしたと言って死んでいくかもしれませんけれど、そのぐらい一生かけてやっていきますよという覚悟」でやるといい切った。

   それがこのスクープに結実したのである。

   週刊文春の相澤の手記によると、森友学園事件を追って上司とぶつかり、NHKを辞めたことを知った赤木の妻のほうから「会いたい」と連絡があったという。

   赤木が亡くなってから半年余りが経った11月27日に、大阪・梅田の喫茶店で会った。彼女は、「これ、見たいですよね」といいながら、パソコンの中にあった夫の手記を手渡したそうだ。

   内容の重大性はよくわかったが、コピーもメモも写真も断られたという。後に彼女が相澤にこういったそうだ。

   この手記を相澤に渡して、そのまま自分も夫の後を追うつもりだった。だが、相澤の興奮する姿を見て、手記を渡すのも死ぬのもやめたそうである。

   今年の3月7日に赤木俊夫の三回忌を迎えたが、その間、財務省は彼女に対して、誠意のない態度をとり続けてきたという。

   そうしたことで、彼女の気持ちにも変化が出て、手記を公開することを決意し、それと同時に、3月18日、夫・俊夫が自殺したのは、「公文書改ざんに加担させられたからだなどとして、赤木さんの妻が18日、国と佐川宣寿・元同省理財局長に計約1億1200万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした」(朝日新聞3月19日付)のである。

   「森友問題 佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNOを誰もいわない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止符」

   これは赤木が死の直前に書き遺したものである。「手がふるえる」という箇所に下線が引いてあるそうだ。

   手記では、2018年2月から7月まで、「これまで経験したことがない異例な事案を担当し」て、強度のストレスが蓄積して7月から病気休暇を取るに至ったことや、森友学園への国有地売却問題で、財務省が国会等で虚偽答弁を貫いていることが、この事案を長期化・複雑化させていると指摘している。

   さらに「佐川理財局長の指示を受けた、財務本省理財局幹部、杉田補佐が過剰に修正箇所を決め、杉田氏の修正した文書を近畿局で差し替えました」。「3月7日頃にも修正作業の指示が複数回あり現場としてはこれに相当抵抗しました」が、本省から来た出向組の小西次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ」と調書の修正を悪いこととは思わず、あっけらかんと修正作業を行ったというのである。

   赤木は「大阪地検特捜部はこの事実関係を全て知っています」と書いている。だが、大阪地検は全てを知りながら、全員不起訴にした。

   赤木の心の支えは、7月の人事異動で担当部署が変わることだったが、他の職員も上司も全員異動させられたのに、赤木だけが同じ職場に残されてしまったのだ。

赤木の遺書には「なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止符」と書かれていた

   この当時、赤木は、自分も罪に問われる、検察に狙われていると怯えていたという。

   家で療養している赤木に、久保田検事から電話がかかってくる。

   「ぼくは職場に復帰したら検察に呼ばれる。検察は恐ろしいとこや。何を言っても思い通りの供述を取る。(中略)ぼくが何を言っても無理や。本省の指示なのに最終的には自分のせいにされる。ぼくは犯罪者や」

   普通の生活を送ってきた公務員なら、検察の事情聴取と聞いただけで怖れ、震えるのは当然のことであろう。

   財務省が全ての責任を負うべきなのに、最後は逃げて近畿財務局の責任にする。「怖い無責任な組織です」(赤木)

   手記の最後に、「刑事罰、懲戒処分を受けるべき者」の筆頭に、佐川理財局長の名前を書いている。だが、「この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することが出来ません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(五十五歳の春を迎えることができない儚さと怖さ)」、最後に「気が狂うほどの怖さと、辛さ こんな人生って何?」という言葉と「さようなら」で結ばれている。

   この手記を読んだ人間の何人かは、彼は弱い人間だ、何も死ななくてもいいのに、と思うかもしれない。私も読みながら、そう感じたことは事実である。

   だが、赤木俊夫という人間は、巨大な財務省という組織と闘うためには、死をもって告発するしかないと考えたのであろう。赤木の妻には失礼ないい方になるが、夫の死の直後に、これを公表していれば、安倍政権と財務省に大きな打撃を与えられたはずである。

   もちろん、今回のスクープを、コロナ騒動でうやむやにしてはならないこと、いうまでもない。森友事件も加計学園問題も、安倍首相と妻の昭恵の関与は明らかだと思うが、メディアは彼らを追い詰められていない。

朝日と東京は一面トップ。読売は第二社会面に小さく載せただけ。読売はメディアとして恥ずかしくはないのか

   赤木の遺言を無にせず、第2、第3の相澤記者が出て来こなくては、彼も浮かばれまい。

   今朝の朝日新聞と東京新聞は一面トップでこれを報じていたが、読売新聞は第二社会面に小さく載せただけである。読売新聞はメディアとして恥ずかしくはないのだろうか。

   恥ずかしいといえば、今日発売の週刊現代を、迷った末に買うのをやめたのも、現代OBとして恥ずかしく感じたからである。今週の週刊文春を見て、週刊現代の編集部員たちは何も感じないのだろうか。時代と切り結べとまではいわないが、巻頭が「人生は最後に間違える」というヒマネタ特集では、週刊と名乗るのをやめるべきではないか。

   コロナ関連はやってはいるが、「医者がためらいながらも出している薬」「偏差値70の有名私大ミスコン優勝者 初のAV現場」「涙は心の汗だ 僕らは青春ドラマで大きくなった」という特集を、部員たちは喜々としてやっているのだろうか。520円も出して買う読者がどれほどいるのだろう。

   今度こういう企画をやったらいい。「520円で買えるモノ大特集」。牛丼ならお釣りがくる。安い居酒屋なら、日本酒が2合と少し飲める。平野啓一郎の『マチネの終わりに』(文春文庫)はKindle版だと468円だ。いかに520円が"理不尽"な値段か、考えたほうがいい。

   ところで、新型コロナウイルスの感染拡大は衰えを見せず、安倍首相の最後の悲願である東京オリンピック・パラリンピックも、開催、中止、延期で揺れている。

   週刊新潮は「五輪は消滅」とタイトルを打ち、IOCのバッハ会長やトランプ大統領の、「世界保健機関(WHO)の助言に従う」、「無観客で開催するよりも1年延長する方が良い選択肢だ」という発言で、「中止・延期」が現実味を帯びてきたと報じている。

東京五輪の2年延期に動く高橋治之・組織委理事の狙いは古巣・電通の利権を損なわないことだ

   そこに、東京オリンピック招致に"尽力"した元電通で大会組織員会理事の高橋治之も、「1~2年延期するのが最も現実的」といい出した。

   国士舘大学の鈴木知幸客員教授は、高橋の本音は2年延期だと見ている。それは「来年8月にアメリカで開催される世界陸上は電通が放映権を握っているから、そことバッティングさせるわけにはいかない」というのだ。

   再来年はカタールでサッカーW杯があるが、時期も11月から12月、W杯に出場する選手とは年齢層もかぶらない。

   それにその年には、北京で冬季オリンピックも開催されるから、「アジアが一丸となる」と謳うこともできる。

   私も延期論に傾いている。問題は選手だけではなく東京・晴海につくる選手村は、大会後に増改築して23棟のマンション、計約5600戸を売り出す予定だ。

   既に販売済みの物件もあり、予定通りに引き渡しができないと、「補償問題に発展する可能性もあります」(スポーツ紙記者)

   バカでかい新国立競技場も、ハコはできても、入れるものがないのでは、宝の持ち腐れである。

   これを機に、IOCの利権まみれになってしまった五輪そのもののあり方、運営の仕方について、世界の首脳たちが話し合う場を設けて、侃々諤々、とことんやりあったらいい。(文中敬称略)

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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