2024年 4月 24日 (水)

新型コロナ禍のなか、介護施設で制限されてきた面会。会うことが出来なくなった夫婦の声に耳を傾けると、新たな絆のカタチを見えてくる

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   新型コロナウイルスの感染を恐れて家族との面会を禁止する介護施設が増えた。大切な人と会えなくなったとき、人はコロナ禍とどう向き合えばいいのか。 吉田晋悟さん(76)は、重い認知症で介護施設にいる妻、多美子さん(77)とこの4カ月、一度も会えていない。「最後まで夫として一緒にやっていきたいのに、切り離されたままで終わってしまうのではないか」と不安がつのった。

  • 亡き夫の手紙を読んで励まされたという栗原はるみさん(NHKの番組ホームページより)
    亡き夫の手紙を読んで励まされたという栗原はるみさん(NHKの番組ホームページより)
  • 亡き夫の手紙を読んで励まされたという栗原はるみさん(NHKの番組ホームページより)

「コロナ禍が会えない時間こそ大切なことに気づかせてくれた」

   吉田さんは28歳で結婚し、子供3人を育て上げて、60歳過ぎから夫婦2人で老後生活が始まった。14年前に多美子さんが認知症と診断された。5年前から施設に入り、やがて夫と認識できなくなった。今年(2020年)2月から新型コロナ感染拡大で面会できず、多美子さんの姿は施設から届く写真でしか見られない。それでも、吉田さんは毎日、施設に通い続けている。建物内に入れないが、「ちょっとでも身近に感じたい」と話す。

   永島啓子さん(71)は、くも膜下出血で倒れ介護施設にいる夫、公明さんと面会できずに2カ月が過ぎた。夫には記憶障害がある。啓子さんは毎日、庭の花を描いた絵手紙を出し続ける。初めは「一方通行ですけど、少しでもつないでいられるという気持ち」だったが、いつしか思いを素直に込めたいと目的が変わったという。「コロナ騒ぎがおさまったら面会に行きますね」「4月13日は46回目の結婚記念日、一人寂しくおまんじゅうでお祝いしました」。いまは「会えない時間が大切なことに気づかせてくれた。さらけ出して伝えたほうが悔いは残らない」と思っている。

栗原はるみさん「夫が残した手紙を読むことが大きな力になった」

   料理家の栗原はるみさん(73)は去年(2019年)8月、46年間連れ添った夫、玲児さんをがんで亡くした。「孤独感、喪失感をコントロールするのが今も大変」という。夫が残した手紙を読むことで「残った人生の大きな力になった。早く元気になって報告したい」そうだ。

   吉田さんも、自宅で妻が書き留めたものを読み返す。そこには認知症の進行に抵抗するように、夫である自分の名前が繰り返しつづられていた。「必死だったのではないか。もっと知ってあげればよかった」「今度会う時に識別力が衰えていたとしても、私は妻を尊敬の思いで見ることができます」

   間もなく面会できる見通しがたった。ありのままの姿を受け入れる覚悟で、これからも「毎日会いに行く」つもりだ。

   永島さんは5月下旬、短時間の面会ができた。ガラス越しに、車いすの夫と3カ月ぶり。夫の「どなた? 啓子?」の声に周囲から拍手がわいた。啓子さんはボードに「元気だった?」と書いてやり取りし、15分間の面会を終えた。「貴重な時間は宝物です。これからも絵手紙を続けていきます」

   武田真一キャスターは「3人が共通して感じていたのは、会えなくても思いを伝えることの大切さです。コロナ禍をどう生きたらいいのか、私も考えていきたい」と結んだ。

    ※NHKクローズアップ現代+(2020年7月2日放送「夫婦2人 会えなくなった先に」)

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