2024年 4月 20日 (土)

前代未聞だらけの米大統領選。トランプ感染と早期退院でますます混迷! 郵便投票めぐる混乱で、法廷闘争になる可能性も

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   日本時間の10月6日、新型コロナウイルスに感染して入院していた米トランプ大統領が退院した。選挙戦終盤での現職大統領の感染で、トランプ陣営の選挙戦略に直接助言を行ってきたキーマンである保守系ロビー団体代表のグローバー・ノーキスト氏は、選挙の争点が新型ウイルス対策に絞られていくことを懸念していた。支持率で先行する民主党のバイデン候補に勝つためには、有権者の目を新型ウイルスからそらし、経済に集中させることが大切と考えているからだ。

   米国では新型コロナウイルスによる死者が21万人を超えており、バイデン候補は感染防止対策を重視し、集会もオンラインで開いてきた。6日の演説でも「大統領には国民を感染から守ろうという姿勢が見られない」と強く批判している。

   ノーキスト氏が重視しているのが共和党支持者の生の声だ。独自のネットワークを通じて毎週、支持者たちの声についての報告を受けている。共和党支持者の切実な願いは経済活動の再開だ。ノーキスト氏は「トランプ大統領が勝利するためには支持者に確実に投票してもらい、無党派層からのさらなる票の上積みが欠かせない」と言う。

  • 混迷深める大統領選の行方は?
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支持率バイデンがリード、トランプは焦っている...

   激戦州の1つ、ミシガン州で理髪店を営むマンキさんはトランプ支持者の象徴的な存在だ。全米各地から何時間もかけて会いに来る支持者もいる。感染が拡大し始めた3月に、民主党知事による経済活動の制限に背き、マンキさんはいち早く営業を開始。警察の捜査を受け、法廷闘争にもなったが、営業再開の正式な許可を勝ち取ったからだ。個人の経済活動を守るというトランプ大統領のメッセージをどのように市民に広く届けるかが再選のカギを握っているとノーキスト氏は考えている。

   NHKワシントン支局長の油井秀樹は「トランプ大統領は、バイデンは新型コロナに過剰におびえており、バイデンが大統領になれば都市が封鎖され、経済は崩壊すると訴えている。だが、支持率でリードされていることから、早期退院は焦りの裏返しとも言える」と話した。

   最新の世論調査でも「大統領が感染リスクを真剣に考えていなかった」とした人が72%、これまでの感染対策を「評価しない」という人が64%。

   慶應義塾大学の中山俊宏教授は「コロナ感染でキャンペーンができなくなり、トランプ大統領の描いた構図ができなくなってきている。接戦だったが、強みは経済しかなく、少しずつ差は開いてきている」と指摘。

   複数の米国メディアは、10月15日の第2回討論会にトランプ大統領は参加する意向を示している」と伝える。第3回討論会が22日にあり、11月3日は投票日。選挙戦の鍵となるのは何か。中山教授は「トランプ陣営が票を伸ばすのは難しく、支持基盤を固める戦い方をする。バイデン陣営は、高齢であることと失言の不安はあるが、失敗しなければ有利に戦えると感じている」と話す。

民主義の最後の砦の米国だが「どちらが勝っても分断は深まる」

   大統領選にはもう1つ、大きな危惧がある。投票が終わっても勝者が決まらないという事態になるのではないかという危惧だ。投票総数の3分の1にのぼるといわれる郵便投票による混乱が予想されているからだ。郵便投票をめぐっては両候補が激しく対立してきた。郵便投票の拡大を訴えてきた民主党は、支持者には投票率が低いマイノリティーや若者が多いため、郵便投票で投票率が上がれば有利になるという見方もある。しかし、大統領が任命した郵政公社のトップ、ディジョイ総裁が郵便投票を妨害するのではないかと批判されている。6月に総裁に就任したディジョイ氏は大統領の大口献金者。就任するや否や、赤字削減を理由に郵便物の仕分け機やポストを次々に撤去し、職員の残業時間も削減。そのため配達の遅れも頻発している。郵便投票は集計に時間がかかり、投票が終わっても長期間勝者が決まらない可能性もある。

   さらにトランプ大統領は先月下旬、新たな最高裁の判事に保守派のバレット氏を指名。バレットが議会で承認されれば、9人の最高裁判事の内訳は保守派が6人、リベラル派が3人と保守派が圧倒的多数となる。トランプ大統領が郵便投票の結果を待たずに勝利を宣言したり、状況次第で法廷闘争に持ち込んだりする可能性もあると専門家は指摘する。

   油井支局長は「法廷闘争は避けられないと懸念する人も増えている」として、「共和党、民主党ともに優秀な弁護士を全米から集めて、その準備を進めているといわれる。すでに郵便投票のルールをめぐって前哨戦ともいえる裁判が始まっており、大手メディアはあらゆる事態を想定して準備していると話している」と伝えた。

   中山教授は「どちらが勝っても分断が深まる可能性がある。民主主義の最後の砦の米国で選挙もできない、ディベートも低レベルとなると、民主主義の不安が高まっていく。なんとか米国はこの選挙を乗り切ってほしい」とコメントした。

文 バルバス

   ※NHKクローズアップ現代+(2020年10月6日放送「混とん アメリカ大統領選挙の行方」)

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