2022年 5月 26日 (木)

コロナ不況で困窮し、追い詰められる女性たちが増えている。解雇され、風俗店や「パパ活」に走り、性暴力の危険も。男女間の就業格差という構造的な問題が表面化している

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   新型コロナ下で経済的に追い詰められ、風俗店などで働く女性が増えている。6歳の子を育てるシングルマザー(29)はこれまで、飲食店のアルバイトと介護の仕事をしてきたが、コロナの影響で飲食店は閉店。介護の仕事だけでは収入が足りず、働く時間の融通がきく風俗店で働くことにした。「本当に嫌でした。一緒にお風呂入ったり。コロナとか風邪とか、いろんな菌、何持ってるか分からないから。その菌が子どもにうつっちゃったらどうしようとか、今でも怖い」。

   困窮する女性の間で秘かに広がっていると見られるのが「パパ活」だ。ネットを通じて知り合った男性と食事などをすることで、金銭が提供されるという。3か月前からパパ活を始めたゆかりさん(仮名、独身=28)は、これまでアパレルの派遣社員として働いてきたが、緊急事態宣言後に勤め先が休業、解雇された。「再就職で、こんなに何社も面談を受けて決まらなかったのは初めて。どうにかして生活費を稼がなきゃいけないとなった時に、パパ活を知った」

   パパ活は性暴力にさらされるケースもある。30代の専業主婦は、「無理やり(性)行為を強要されたり、避妊に協力してくれなかったり、逃げるに逃げられなかった」。コロナ禍で追い詰められる女性に、何が起きているのか。

  • (NHK「クローズアップ現代+」番組公式サイトより)
    (NHK「クローズアップ現代+」番組公式サイトより)
  • (NHK「クローズアップ現代+」番組公式サイトより)

風俗業界も不況、「客がゼロ」の日も珍しくない

   ホテルなどに女性を派遣し、性的なサービスを提供する東京・池袋の風俗店。半年ほど前から働く20代後半のけいこさんは、以前は派遣の仕事をしていたが、コロナの影響で契約を切られた。資格や特別なスキルもなかったため、再就職先が見つからず、コンビニでアルバイトをしながら、やむを得ず風俗で働くことにした。「アルバイトの時給は最低賃金で、生活は厳しかった」。

   非正規の労働者は解雇されるなどで減少、そのうち7割が女性だ。風俗業界に足を踏み入れる女性も少なくない。しかし、風俗業界もいま、不況に見舞われている。この店もコロナの発生以降客足が遠のき、売り上げは去年の5分の1に落ち込んだ。出勤しても客が来なければ、報酬はゼロ。最近は8時間待機しても客が全く来ない日も珍しくないという。「働かなかったら生きていけないし、こんな状態が続くのかな、と思うとちょっと怖い」とけいこさんは言う。

   行き場を失った女性たちがワラにもすがる思いで駆け込むのが、夜の仕事で働く女性たちの転職を支援する会社だ。問い合わせは去年の1.5倍に増えた。風俗と派遣キャバクラ勤務の女性(31)は、「コロナをきっかけにドンとお客さんが減って。仕事を変えなければとなって」。風俗店勤務の女性(27)は、「家賃は払えないし奨学金も返せない」。しかし、この会社でも紹介できる就職先は去年より約3割減った。「昼間の仕事といっても、スキルや経験がある人から採用されていくので、むちゃくちゃ厳しい」と担当者は言う。

   風俗で働く女性(29)は4月、茨城県や神奈川県の風俗店に「出稼ぎ」に行った。「風俗イコール稼げる、というのはもうない」。家賃や光熱費を滞納、スカートなど家にあるものを売り始めた。ハンガー5本が2555円で売れた。風俗とパチンコ店で働く女性(25)は、収入が月10万円。朝食は最近いつもプロテインだ。大学生の時に母親が自殺。奨学金返済のために風俗に。将来の夢は手話通訳士だが、レッスン代も払えなくなった。「コロナがなくなったら、一から出直したいけど」。

困窮する女性に広がる「パパ活」

   困窮する女性たちの間に秘かに広がっているとみられるのが「パパ活」だ。SNSや掲示板、アプリなどを通じて男性と知り合い、一緒に食事などをすることでお金を受け取る。文教大の池辺正典・准教授は、SNSの中で広がる援助交際に関連する「隠語」の動向を分析した。「ホ別」とは、「ホテル代を別にして、おいくら頂きたいです」との意味だ。4月の緊急事態宣言後、援助交際に関連する投稿数が、3万件から4万件近くまで増えていることがわかった。

   パパ活はリスクが大きい。2人の未就学児を育てる30代の主婦まりこさん(仮名)は、自営業の夫の収入がコロナの影響で激減。夫はストレスから暴言が多くなり、生活費も十分にもらえなくなった。「家族の食費とかおむつとかは、自分の貯金から出しています。主人からの暴言も重なって、もう精神的に壊れる寸前です」。子どもが保育園に行っている間、これまで10人以上の男性と食事を繰り返してきた。次第に体の関係を求められるように。抵抗感はあったものの、数万円の援助を受けられることから、断り切れなくなったという。性暴力の被害にもあった。「動画とか写真を撮られそうになったりとか、無理やり強要されて血が出たりも」。

   パパ活をあっせんする男性(34)は、女性を交際クラブに紹介、その見返りを収入としていた。これまで1500人以上の女性に、パパ活のノウハウを伝えた。「アプリに登録して、プロフィールの書き方がわからない方とか、男性が納得してお手当てを渡すトークのやり方とか」。コロナ以降、毎月の売り上げは約100万円。今年はすでに1000万円以上稼いだ。「正直ここまで行くとは思っていなかった」。一方で、パパ活は女性が危険にさらされることも多い。この男性は言う。「(トラブルの温床になっていることについて)嫌ならやめればいい。昔からあったことで、(こうした行為が)なくなることはない。後ろめたさはない」

女性の就業者が激減,男女間格差が弱い人を直撃している

   番組は、画面の右上にQRコードを表示して、国などが設置する相談サイトを紹介した。そのうえで、内閣府「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」座長を務めた白波瀬佐和子・東京大学大学院教授らに話を聞いた。

   白波瀬教授は、「最も大事なポイントは、今まであった構造的な問題が表面化したということ。就業者数を見ても女性の減り方(3月から4月にかけて70万人減)が大きい。その背景には、コロナ下の直撃を受けた飲食業、対人サービス業に女性が集中していて、とくに非正規、不安定な職業の人たちが多かった、ということがある。60年代以降の男女間の格差構造がいま、弱い人に出ている」。

   作家の石井光太氏は、「いま個人売春が増えているといわれています。風俗業がコロナ下でダメになり、女性たちが個人売春に走らざるを得なくなった。経済的に追い込まれた女性たちが、ダイレクトに個人売春に落ち込んでいっているのが現実だ」。石井氏は、「初めはデートをしてお金をもらうというビジネスだった。やわらかい言葉に聞こえるが、数年前から完全に売春を、とくに一番リスクが高いといわれる個人売春を指す言葉になった」という。「お店に守ってもらえないから、恐喝をされたり病気をうつされたり、危険がたくさんある」。

   未成年の少女たちへの影響も深刻だ。家庭内で問題を抱える少女たちが行き場を失って、性的な被害を受けるリスクが高まっている。10代から20代の女性を支援する福岡市のNPO「そだちの樹」に相談にやってきた少女(18)は、コロナ下で仕事が見つからず、かといって実家にも帰れない。「8月はマジで廃人生活でした。レトルトの味噌汁を飲みまくった。ホームレスもありかなって」。

   家族との関係がうまくいかず孤立した少女たちは、その思いをネットに書き込む。「さみしい」「繋がりたい」そんな言葉を、パパ活の男性側も見ている。NPOでは、SNSをこまめにチェック、返信し、専門の相談機関を紹介する。しかし、少女たちの書き込みは、目につくだけでも膨大で、対応が追いつかない。「死にたい」「消えたい」「つらい」というつぶやきも。「死にたい」だけでも、回答受付中だけで3043件がヒット、解決済みも入れると33万件を越える。石井氏は、「コロナによって家庭環境が悪くなって、13,4,5歳で逃げる。個人売春に走るしかない、という非常に危険な状態だ。これを認識して家庭や学校でどう防ぐかを考えなければ」と警告する。

文・栄 

   ※NHKクローズアップ現代+(2020年12月1日放送「"パパ活"の闇 コロナ禍で追い詰められる女性たち」)

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