2024年 4月 26日 (金)

「はやぶさ2」快挙の裏舞台は"想定外"の連続! 2回目のタッチダウンを決行するか、「決断」には重圧が降りかかっていた

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   12月6日未明、「はやぶさ2」が6年ぶりに帰還し、3億キロ離れた小惑星「リュウグウ」のサンプルの入ったカプセルを地上に投下した。8日にはそのカプセルも日本に帰還。はやぶさ2のプロジェクトマネージャー・津田雄一さんがリモートで番組に生出演し「到着したカプセルの側の部分を見たのですが、中の電子機器は6年間飛行した後とは思えないほどピカピカの状態でした」と喜びを語った。はやぶさ2は、リュウグウの砂と地下物質を採取して持ち帰るという世界初の快挙を成し遂げたことになるが、その舞台裏は想定外の連続だった。

  • NHK「クローズアップ現代+」番組公式サイトより
    NHK「クローズアップ現代+」番組公式サイトより
  • NHK「クローズアップ現代+」番組公式サイトより

リュウグウ表面は凸凹激しく、着陸地点見つからない!

   はやぶさ2が小惑星リュウグウに到達したのは2018年6月。しかし、送られてきた映像に現れたのは岩石だらけの小惑星の姿だった。表面が凸凹で着陸スペースが見つからず、いきなり窮地に立たされた。そこで、メンバーはリュウグウ表面の数万個もの岩石を分析し、10万通りのシミュレーションを重ね、ついに6メートル四方の隙間を見つけ、その狭いスペースにタッチダウンする決断をしたのだった。翌19年2月、タッチダウンは成功し、はやぶさ2はリュウグウの砂の採取に成功した。

   しかし、はやぶさ2のミッションのクライマックスは2回目のタッチダウンにあった。リュウグウが誕生した当時の状態にあると想定される地下物質を持ち帰るのだ。19年4月、はやぶさ2は爆破装置で人口クレーターを作ることに成功。「ここに降りることができれば、世界を数十年リードすることができる」。メンバーは沸き立った。

   だが、またも大きな難題が生じた。クレーターの中は大きな岩石だらけで着陸は極めて困難だったのだ。1回目のタッチダウンに成功したのだから、2回目の挑戦はせず、帰還してもいいのではないかという意見も出たほどだ。だが、メンバーは諦めず、クレーターの周辺に散らばった地下物質が採取できないか、検討を重ねた。

   可能性は2通りあった。1つはクレーターの南側。平らだがクレーターから遠く、地下物質が少ない。もう1つは北側。岩石が多く危険だがクレーターから近く、多くの地下物質がある。意見は真っ二つに割れ、津田さんも「迷った」と告白する。結論は安全策だった。クレーターの南側へのタッチダウンを試みたのは5月。しかし、そこに思わぬことが起きた。

   異常を察知したはやぶさ2が急上昇したのだ。想定外だった。だが、急上昇時に撮影された写真が幸運をもたらした。北側に6メートル四方の平地が見つかったのだ。津田さんは北側へのタッチダウンを決断し、その結果、はやぶさ2は史上初の地下サンプル採取に成功した。

   津田さんは、2回目のタッチダウン時の心境を「タコせんべい」と表現している。「1回目に採取したサンプルがはやぶさ2の中にある。そのうえで挑戦すべきか、JAXA全体の議論になり、上層部はもう帰ってきてもいいとしたのですが、チームとしてはやりたいという声が強かった。私は、上から下から押しつぶされそうで、タコせんべいだと思った」(津田さん)

地球の水はどこから...起源は解明できるか

   スタジオゲストの初代はやぶさプロジェクトチーム・寺薗淳也さんは「小惑星まで行って着陸して帰るのには4つの段階がある。通り過ぎて、周回して、着陸して、サンプルリターンする。アポロ計画でも10年かけたことをはやぶさ2はいっぺんにやってしまった。すごいことです」と驚く。

   それを実現させるだけの技術がすべてコンパクトに詰められているはやぶさ2を津田さんは「お弁当箱」に例える。NASAの探査機「オシリス・レックス」が今年10月に地球近傍小惑星ベンヌからサンプルリターンを成功させたが、ここにはやぶさ2のノウハウを取り入れるためにレクチャーを受けに来ていたほどだ。

   リュウグウからのサンプルリターンが世界から注目される理由は、水の起源に迫ることで、生命の起源解明が期待されているからだ。地球が誕生した45億年前には水はなかった。では水はどこから来たのか。従来の説は氷でできた彗星が地球に降り注いだからというものだったが、6年前に欧州の探査機「ロゼッタ」に搭載された分析機器による調査で、彗星の水は地球の水と成分が違うことが判明し、彗星起源ではない可能性が高まってきた。

   彗星起源ではなく小惑星起源説を取る東北大学の中村智樹教授は、「リュウグウのサンプルを待っている状態」と話す。リュウグウの岩石には水素と酸素が含まれていることは観測データでわかっており、「惑星上で測定しても、地上で調べる足元にも及ばない。この手で解析できることが大事」と期待する。

   寺薗さんは「ダイヤでも水晶でもない水がなぜ大事なのかというと、ただの水じゃないから。小惑星に残っている水を調べることで、生命の起源、太陽系のでき方をしるきっかけになるかもしれない」と話す。

   カプセルを投下したはやぶさ2は今、地球から11万キロ離れた場所にいる。津田さんは「はやぶさ2はすでに減価償却して自由の身。宇宙探査の醍醐味を楽しんでほしい」とわが子を見るような目で語った。

NHKクローズアップ現代+(2020年12 月8日「世界をリード 日本の小惑星探査~密着 はやぶさ2の舞台裏~」)

文   バルバス
姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中