「冷酷な善児」イメージ一転 さすがの脚本に改めて脱帽 【鎌倉殿の13人】

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   NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」8月28日(2022年)放送回。鎌倉の御家人たちは派手に権力をふるう北条を敬遠し始めた。(ネタバレあり)

   三浦義村(山本耕史)の北条への忠告に義時(小栗旬)も苦笑する。一方、失意の源頼家(金子大地)は修善寺で、「軍勢を率い、鎌倉を火の海にし、北条の者どもの首をはねる」と母・政子をも憎み、呪い殺すような勢いで北条家へ執念を燃やしていた。修善寺に幽閉されてしまった頼家の生涯を想うと哀れ。最期は殺されると本人も鎌倉も、視聴者も知っているからだ。

  • NHK「鎌倉殿の13人」番組サイトより
    NHK「鎌倉殿の13人」番組サイトより
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トウに頷いた善児

   そして頼家最後の場面。頼家と善児(梶原善)、2人の一騎打ちとなった。この2人、序盤は「嫌な感じ」の人物像であったのにもかかわらず、この時のために視聴者の心情を「ホントはいい人なのに殺される運命」まで導くさすがの脚本に改めて脱帽。

   善児ほど恐れられ、忌み嫌われていた人物はいなかった。ところが頼家の長男、一幡を人質にしている間に「人として」の愛情が生まれたのであろう。頼家に襲い掛かろうとしたその瞬間、悲しいかな一幡への愛情が仇となり、善児の氷のように冷徹な殺気に隙が生まれ、頼家の刀の方が善児を貫いた。

   息の飲んでこの瞬間を見届けたあと、トウ(山本千尋)が頼家の背後から襲いかかり、頼家の背中を突き刺した。トウの殺気もさすが善児仕込み。などと感心する隙もなく、トウは死にかけの善児にさらに襲いかかった。親の仇である。

   トウは範頼暗殺の場にいた女の子だ。善児が殺し屋に育てたとはいえ、恨みをはたす時期を狙って生きてきたトウの心情は計り知れない。トウが善児にとどめを刺すときに、善児が頷いたのは「この日」が来るのを知っていたからであろう。暗殺者の運命ということならば、トウもいつかは同じ運命となるのか。「命じられてした事とはいえ、多くの命を奪ってきた暗殺者・善児の最期はやっぱりこういう結末になりましたね...」「トウには躊躇いはあったと思う。でも善児を殺めた時に一旦彼女は人の心を失って、本当の暗殺者になったのではないかなと思う」などトウの善児に対する心情について視聴者もSNSで思いを巡らせていた。

   善児の壮絶な死は、ちょっとした「善児ロス」ではある。トウがさらに凄みを増してどうなって鎌倉と関わるのか、楽しみである。

(Y・U)

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