岡村正・東芝会長
過去を捨てる戦いに勝ったコーポレート・リーダー

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   東芝は2005年7月に創業130周年を迎えた、日本で最も古い電機メーカーである。第2次大戦前には、米国のGEと提携して世界の最新技術を導入し、業界トップをきって独走した時期もある。ところが、戦後は、生温い社風があだとなって、業績が上がらず、日立製作所などの後塵を拝し、ほとんど業界3~4位を低迷した。とりわけ、岡村正氏が社長に就任した2000年6月は米国のITバブル崩壊の影響を受けて、東芝は大赤字に陥り、存亡の危機にあった。

   企業が大赤字に陥った時、経営者はどうしたらいいか。米国の優れた経営者なら、「赤字部門を切り捨て、新しい収益部門を創設する」と、即答するだろう。しかし、従業員を大切にする伝統をもつ日本の大企業では、赤字部門を切り捨てることは容易ではない。まして、東芝のように、百年以上も「一流」の地位を占めてきた企業にとしては、経営者、従業員の両方にとって、「過去を捨てる」に等しい。
   いわゆる、「剛腕の経営者」ではない。容貌はスマートで優しいし、話し方は常にソフトである。この姿勢は、基本的に、若い従業員に対しても変わらない。この男がコーポレート・リーダーとして、東芝の過去を捨てる戦いを勝利に導いたのである。その秘密は何であったのだろうか。

岡村正・東芝会長
岡村正・東芝会長

   大学でも、東芝に入社してからも、ラガーマンだった。大学時代、東京大学という弱小チームに所属したが、よき先輩、コーチに恵まれて、「弱小チームでも、いかに試合に勝つか」という方法を習得した。また、スポーツとしてのラグビーの特徴は、サッカーなどと違って、前方にいる味方にパスできないこと。このルールがラガーマンにチー-ムプレーを徹底的に叩き込む。岡村氏は従業員にチー-ムプレーの大切さと勝利の味を教え込むことによって、東芝存亡の危機を克服したのである。
   社長就任直後、肥満化した企業体質を変えるためのアクションプランをつくった。その中心は“shrink to grow” という戦略で、成長のためにいったん縮もう、という考え方に立つ。ATM、衛星事業など、かなり多くの部門を削減した結果、2005年の総資産は5年前より約20%、人員は12%減少、有利子負債は38%も減らした。
   世界の電機・電子メーカーとの競争に勝利するためには、“shrink to grow” という戦略を完遂しなければならない。その場合、米国の企業なら、大規模のリストラ計画を発表し、粛々と実行すればいい。しかし、岡村氏は、「生涯のラガーマン」として、シュリンク戦略を、リストラの痛みに耐えなければならない従業員が納得できる方法を用いて、チームワークでやり抜こうと決意した。
   彼は社内のメール・システムを駆使して、従業員に戦略の必要性を訴え、「自分についてきてくれれば、あなた方に勝利の味を味あわせてみせる」という、リーダーとしての決意を伝えた。それだけではない。経営変革推進本部の責任者と二人で工場や事務所に出かけ、一線の若手社員と膝詰めの話し合いを重ねた。対話は月5回、相手は約100人、1年間で1,500人を超えた。
   日本の多くの企業経営者は「従業員の和が企業を勝利に導く」と説く。だが、岡村氏は「勝利なくして和は生まれない。また、競争に勝ったとき、従業員は己の価値を発見し、さらに努力して初めて、自己実現が可能になる」と言い切る。
   日本的経営者の一人といえるが、新しいタイプでもある。彼は2003年に東芝を委員会等設置会社に移行させた。これは、「取締役会の中に委員会を設置し、取締役会が経営を監督する」という、アメリカ型の経営の仕組みがモデルになっている。
   その成果について、次のように語っている。

   「私は2005年7月、社長を退任し、会長に就任しましたが、私が社長候補者を推薦し、指名委員会かが決定しました。これまで、社長人事は、事実上、密室で行われました。今回、初めて、人事プロセスを透明にできて、社内の他の人事にもいい影響を与えると思います。報酬委員会も機能しています。私は以前から『社長が自分の給料を決めるのはおかしい』と思っていたのですが、同業他社の例を参考に、報酬委員会が決めるようになり、ほっとしています」

   会長就任と同時に、日本経団連副会長に就任した。財界人としてどんな活躍をするか未知数だが、ソフトな人柄と行動が経済界に新しい変化をもたらすかもしれない。

文: 早房長治

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