枝川二郎の「マネーの虎」
公的資金を入れてでも銀行を救う理由

2008/10/27 11:58

   世界的な金融危機で各国が銀行を救うために競うようにして公的資金(税金)を投入している。資本主義の世の中では、「一般企業が苦しくなっても助けてくれないのに、銀行だけを助けるのはおかしいではないか」と思う向きも多いだろう。

   その怒りはもっともだ。しかし「銀行を守る」というのは、われわれ「一般人を守る」ためであることを理解する必要がある。一般の企業は主に銀行や他の企業などからおカネを調達している。個人が株を買うこともあるが、株の場合はリスクの高いことを承知で投資しているはずなので、企業が破たんして債権者や株主が損をしても、いわば自業自得といえる。しかし銀行は個人から広く預金を預かっているため、破たんしたら一般市民の生活に与える影響は大きい。そこで銀行に特別な規制や保護が存在することになる。

邦銀は金融危機への備えをしてこなかった

   それならば預金者だけを守れば良いではないか、と思うかもしれない。しかし、それはコストの点で現実的でない。日本の銀行の預金の合計は540兆円にのぼる。国の税収は年間90兆円(地方税を含む)程度しかないのに、安易にすべての預金を守ろうとしたら国の財政は破たんしかねない。

   それに、「預金を守る」ことは経営者を守ることにつながる。銀行が絶対つぶれないとなれば、銀行の経営者はリスクを無視して儲かる取引をどんどん行うおそれがある。そして経営がうまくいけば高い報酬をもらい、うまくいかなくなったら税金で助けてもらおうとする。つまり、モラルハザードである。あるいはそこまで酷くなくても、預金を守ることで無能な銀行経営者を温存してしまう可能性がある。

   だから、政府の対応として最もまずいのは市場環境が良いときは銀行を自由にさせておいて、厳しくなるとあわてて公的資金を入れることだ。しかし、今まさに欧米でそういう状況が起きている。そして、わが国でもこのところ急に公的資金の導入についての議論が高まっている。結局のところ、日本政府は「失われた10年」から何も学ばなかった、のではないか。

   わが国の金融システムはバブル崩壊であれだけの痛手を負ったのに、将来の金融危機に対するきちんとした備えがなされることはなかった。サブプライム問題では、日本の銀行の国際化が遅れているため、傷が比較的浅くてすんでいるが、そうでなければいま頃大変なことになっていただろう。

(続く)

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