2024年 4月 17日 (水)

介護ロボット先端技術「持ち腐れ」商品化に国の無関心

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   世界一の高齢化社会・日本。それもあって、介護や医療分野でのロボット技術で最先端を行く。海外からも期待されているが、商業化に厚い壁が立ちはだかっている。高齢化社会の強みをどう生かすか。大手家電メーカーの取り組みを通じてその可能性と課題を取り上げた。

介護施設での実証試験が進まない

   7日(2011年6月)に発表された高齢者白書によると、人口に占める65歳以上の高齢者の割合は23%を超えた。世界で最も高齢化が進んでいると同時に、人口の減少も著しいという。少子高齢社会では、介護や医療分野でロボットが高齢者の自立を促し、介護現場の人手不足を補い、かつ医療費抑制につながると期待されている。

   音声で操作できるだけでなく、車イスに変身するロボチックベッド、炊事を手助けするロボット、洗髪をするロボットなど、商品化を狙う介護ロボットは数多く開発されていて、年間売り上げ8兆円が見込まれている。

   ところが、この技術をなかなか商品に結びつけることができない。商品化するには介護施設などで性能を確かめる実証試験が必要とされているが、実証試験には専属スタッフが必要で、介護施設からそうした余裕がないと敬遠され、受け入れ先が見つからないからだ。国の支援もなく、せっかく新しい技術を開発しても生かしきれない現実が立ちはだかっている。

デンマークとパナソニックが共同事業

   そんなジレンマを抱えながら、介護分野のロボット開発に取り組む大手家電メーカーのパナソニックは、このほどデンマークの福祉関係団体と共同事業を進めることで合意した。大規模な実証試験を共同で行おうというもので、そのために必要な介護施設をデンマーク側が用意するという。

   デンマークは高齢者の割合が2010年現在16.5%、今後10年間で20%に膨らむと予想されている。社会保障費をどう抑えるかが大きな課題となっていて、国を挙げて取り組んでいる。

   どんなふうに介護ロボットは使われているのか。たとえば、ザラシの子どもを模した純白のかわいい日本製のロボット。認知症患者の心を落ち着かせる効果のあるとされ、1年前から導入され効果を上げている。1体60万円するが、国や自治体が負担している。あざらしロボットのおかげで、薬がいらなくなった患者もいるという。

   施設ではロボットをどのように使えば効果があるかを日々カルテに記録しノウハウを蓄積している。国が500億円の基金を設け、そこで得られたノウハウをもとに新たな介護ビジネスを育てる狙いという。

作り放しという「大量生産時代のクセ」

   日本ではどうか。パナソニック・ロボット事業推進センターの本田幸夫所長は、「単にモノづくりの技術だけでは追いつかれる。日本も早くこうしたシステムを立ち上げ進めないと、ノウハウが海外に落ちてしまう危機感がある」と訴える。

   「なぜ日本では先を見据える取り組みができないのでしょうか」とキャスターの国谷裕子。少子高齢化ビジネスを日本で研究しているドイツ日本研究所のフローリアン・コールバッハ副所長はゲスト出演してこう話す。

   「製品を開発してポンと消費者の前に置くだけでは、市場で成功しない。それは高度成長期の大量生産時代の考え方ですね。大量生産時代の概念であるメイド・イン・ジャパンの信仰がまだ残っていますが、すでに通用しなくなっています。

   利用者を開発のプロセス巻き込んで、一緒になって開発を進めていくことが必要な時代になっています。日本は宝の持ち腐れ。自分が持っている技術の価値を十分理解していないとも解釈できます」

   あの時は良かったという復古的な傾向にとらわれていては、いくら革新的な技術開発に取り組んでいても、常に過去を拠り所として進められる。これではグローバル経済の時代には勝てないのかも……。

NHKクローズアップ現代(2011年6月8日放送「“高齢化先進国”の強みを生かせ」)

モンブラン

文   モンブラン
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