人間・山田洋次が凝縮された「母と暮せば」あのシーン!映画宣伝以上の見応えドキュメンタリー
<山田洋次84歳の挑戦「戦争を継ぐ」>(NHK BS1)

印刷

   再放送だが見応えがあった。原爆を扱った映画、「母と暮せば」のメイキング映像といえばそれまでであるが、この映画を製作している監督の山田洋次に1年間密着した記録である。山田洋次は寅さんの「男はつらいよ」で有名で、娯楽映画作家と思われているが、このドキュメントを見ると、どうしてどうして立派な硬派演出家だ。

   例えば、「母と暮せば」の重要なシーン、長崎医科大学に在学していた息子・浩二(二宮和也)が、授業中に長崎の原爆投下で、一瞬にしてこの世から消える場面を撮るのに、インク壺の変化で表そうとする。CGも使い、スタッフと試行錯誤して、人類が初めて見る閃光とその後の爆風で、インク壺がぐにゃぐにゃに溶けて変形する様をやっと撮り終える。母親になる吉永小百合の演出でも容赦なく繰り返させる。実際の原爆体験者である美輪明宏にも話を聞く。美輪によれば原爆投下のあと、世の中のすべての音が消えてシーンとした静寂が来たのだそうだ。彼には放射能の影響はなかったのか。

   山田の母親は彼に大蔵省に入ってもらいたかったらしいが、大学を出て、とんでもない松竹映画になんか入ってしまった。いつの世も親の心、子知らずで、彼が映画監督として大成したのだから幸せな一家ということが出来る。「戦争を若い世代に語り継ぐべき」という、老いの一徹をみたような1編で民放では作れない作品だ。映画の宣伝以上に人間・山田の出たドキュメンタリーである。(放送2015年12月5日9時~)

(黄蘭)

採点:1
  • コメント・口コミ
  • Facebook
  • twitter

このエントリーはコメント・口コミ受付を終了しました。

注目情報
追悼
シニアの健康ライフ
Slownetからのおすすめ記事(提携)

お知らせ

電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中