2024年 4月 19日 (金)

医療業界

将来を展望するための3つのポイント

ポイント1
新薬開発の大きなリスク

 今後の医薬品業界を占うキーポイントは、再編、分業化、外資買収の3つである。
まず、業界の再編の動きが加速することが予想される。医療制度の改革は、医薬品業界に大きな影響を与えている。医療費(薬剤費)を抑制しようとする国の政策は、医薬品市場の伸び悩みに直結している。 そこで大手の製薬会社では、冒頭でも触れたように、新薬の開発に力を入れる一方で、米国など海外への進出を積極的に進めることが課題になっている。

医薬分業が確立し、患者に薬を販売するのは病院ではなく、薬局にゆだねられている
医薬分業が確立し、患者に薬を販売するのは病院ではなく、薬局にゆだねられている

  相次ぐ薬価改定が製薬会社の利益が大きく減少させる原因になっていることは、すでに紹介した。製薬会社が利益を高めるには、画期的な新薬の開発を進めることが急務となっている。画期的な新薬は、発売後、時間を経た製品に比べて、薬価が高くなるからだ。
  しかし新薬の開発には、膨大な研究開発費が必要とされる。しかし、それだけの資金と投入したからと言って、有望な新薬を開発できるとは限らない。大きなリスクを抱えるビジネスとなっている。一説には、新薬の開発においては実際に発売にこぎつけられるのは、6000分の1の確率と言われ、1つの新薬を発売するまでに10年以上の歳月と150億~200億円の費用がかかるとも言われている。

大型合併で2強時代突入か

  また、せっかく膨大な資金を投入して新薬の発売までこぎつけることができたとしても、20年間の特許期間が切れてしまえば、独占的な製造・販売ができなくなり、収益性は大幅に低下してしまう可能性がある。
 そのため、膨大な研究開発の負担を軽減するため、世界的な規模で業界再編が進んでいるが、日本の製薬会社も再編のうねりとは無縁では済まされなくなっている。有力な製薬会社同士の合併によって、経営規模が拡大すれば、新薬の開発負担が相対的に軽減されるからだ。

  2003年に米国のファルマシアを吸収した新生のファイザー(米国)の医療品の売上高は400億㌦以上に達する。これは国内首位である武田薬品工業の6倍弱の規模だ。
  しかし、国内でも売り上げで業界3位の山之内製薬と5位の藤沢薬品工業が05年4月に経営統合をすることをすでに発表している。もしこの大型合併が実現すれば、武田薬品工業に肉薄する国内第2位の企業が誕生する。こうした勝ち組同士の大型合併を機に、これまで立ち遅れていた国内の製薬業界の再編も一気に加速する可能性がある。

ポイント2
研究開発と生産の分業体制

  こうした業界再編をきっかけにして、業界内での分業化が進むことになろう。02年7月に薬事法が改正されて、医薬品の製造承認制度の見直しが行われた。従来は、新薬の開発会社は、自社の工場で製造すること(少なくも製造工程の1つは自社で受け持つこと)が義務付けられていた。改正後は自社で開発した新薬でも、製造をすべて他社に委託することが可能になった。
 その結果、大手製薬会社の中では、新薬の開発に経営資源を集中させ、生産を丸ごと外部に委託する動きが出ている。一方、中堅クラスの製薬会社の中には、新薬の開発は一切行わず、こうした受託生産に特化しようとする動きも出てきている。研究開発と生産の分業化である。

ポイント3
欧州勢の日本攻勢

 仏アベンティス、英グラクソスミスクライン独ベーリンガーインゲルハイムなど欧州の大手製薬各社が日本市場で新薬攻勢をかけてきている。生活習慣病や中枢神経系の病気など市場拡大を見込める分野に焦点を当てて、販売品目を増やしている。
 日本は米国に次ぐ世界第2の市場であり、欧州各社のシェアはまだ低く開拓の余地は十分だ。すでに米国の最大手であるファイザーが日本での事業展開を積極化させているほか、ロシュが中外製薬を傘下におさめた。この結果、外資のシェアは3割を超えている。こうした日本市場をめぐる日米欧企業の激突は、日本製薬業界の再編にさらに拍車をかけることは間違いない。

1 2 3
姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中