2024年 4月 18日 (木)

体のサイズや悩み流出させたTBC 損害賠償の金額が安すぎる

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   個人情報を流出させた企業への損害賠償の金額が安すぎる、という声が強まっている。最近は訴訟にならないのを見越して、お金を払わない例も増えている。流出事件が頻繁に起き、企業側の感覚は確実にマヒしてきている。

   エステ大手のTBCグループが2002年に5万人分の顧客情報をインターネットに漏洩させた問題で、東京地裁は07年2月8日、被害者14人に1人当たり2万2,000円~3万5,000円の支払いを同社に命じた。個人情報漏洩としては過去最高額だが、裁判には4年もかかり、原告は完全に「赤字」だ。

特定のアドレスを打ち込めば誰でも閲覧できる状態に

紀藤弁護士は、自らのブログでも判決内容を紹介している
紀藤弁護士は、自らのブログでも判決内容を紹介している

   漏洩した顧客情報は、TBCがホームページで募集したアンケートなどに記入された個人の住所、氏名、年齢、メールアドレス、それ以外にも、体のサイズや、身体的悩みなど、特秘性の高いものが含まれていた。ところが、HPの運営委託先がサーバーを移設した際にアクセス制限をしなかったため、02年3月頃から特定のアドレスを打ち込めば誰でも閲覧できる状態になり、インターネットに流出。被害者14人は02年12月19日に提訴した。東京地裁は07年2月8日に、二次被害があったと認められた13人に1人当たり35,000円、残る1人に22000円の支払いをTBC側に命じた。

   弁護団長を務める紀藤正樹弁護士は、

「個人情報保護が叫ばれているのに、賠償額がだんだん下がっている。当初は1人あたり1万円だったのに、06年5月のYahoo!BB個人情報漏洩事件の判決では1人あたり5000円。それはまずいと今回の裁判で争ったが、最高額になったことで下落の歯止めにはなった」

    と一定の評価はしている。賠償額が下がってきたのは、流出事件が頻繁に起き感覚がマヒして「こんなのは防げないんじゃないか」という「いいかげん」な考え方が社会や企業に蔓延しているからではないか、と紀藤弁護士は指摘する。そして

「企業は『被害者は訴えてこない』と甘えているし、今回の賠償金だってTBCは痛くも痒くもないはずです」

費用や時間がかかるために訴える人は少ない

    被害者が訴えを起こすのに最大のネックになっているのは「費用対効果」だ。今回の裁判は4年間続いていて、原告は計28回も裁判所に通っている。これに弁護士費用が加わるため、まるっきり「赤字」なのだ。こんなこともあって、5万人分が流出したのに、訴えたのは14人。

「今回の金額に全く納得していないし、控訴も考えているが、費用や時間がかかるために、控訴を申し出る被害者が出るかどうか」

    と紀藤弁護士は言う。

    アメリカにはクラス・アクションという代理人形式の訴訟制度がある。企業の行為によって多くの人が同様の被害を受けた場合、代表者が訴訟を起こすと、クラス・アクションに参加した全員が賠償金を受け取れる制度だ。

「日本でもクラス・アクション制度を導入しないことには、被害者は永遠に泣き寝入りということになりかねない。だから企業にはより高度な責任を負う、という姿勢が必要で、そのために何をすればいいかというと、賠償金を高くする、重い制裁を課すなどが必要なんです」

    紀藤弁護士は企業に情報漏洩を防ぐための緊張感を与えることが必要だ、と強調する。

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