2019年 10月 21日 (月)

編集長からの手紙
冤罪を組み立てる捜査員の誘惑

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   人間は話を面白くする誘惑に弱い、と思いたくなる。
   2003年の鹿児島県議選に絡んだ公選法違反事件で、07年2月24日、鹿児島地裁が県議ら12人全員に無罪判決を出した。その前には、富山県の強姦事件で服役を終えた人が、容疑者が別件で捕まったことから、無実だと分かった。ひどい話だ。共通するのは捜査段階で、「有罪ストーリー」が初期の段階で組み立てられていることだ。
   かつて取材した汚職事件で、ストーリーの見事な作られ方に圧倒されたことがある。この事件は冤罪だと、今でも確信している。

建設省キャリアの「冤罪」事件

冤罪は繰り返される(「欺かれた法廷」より。イラストは加藤孝雄氏)
冤罪は繰り返される(「欺かれた法廷」より。イラストは加藤孝雄氏)

   事件は建設省キャリアの地建局長に関わるものだった。舞台が田中角栄元首相の選挙区だけに世間の注目を浴びた。昭和52年、田中元首相がロッキード事件で逮捕された翌年のことだけに、なおさらだった。
   地元の零細建設業者から90万円の賄賂を受け取った容疑である。取材したのは、最高裁の有罪判決が確定した昭和60年だった。
   最初のストーリーは地元警察の警部補が中心になって作られていた。逮捕状の容疑がそれである。捜査が進むにつれ、話は小さくなっていく様子は裁判資料で分かるが、「芸者を通じてお金を渡した」という話のハイライトは動かなかった。
   地建局長は菓子折りに入っていた封筒をそのまま送り返したと主張した。中身は10万円だったという。検察は、局長が100万円から90万円を抜いて返したと反論。ここが最後までかみ合わなかったのである。

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