2022年 5月 22日 (日)

ITジャーナリストの佐々木俊尚氏に聞く ネットでの誹謗中傷問題(上)
実名の義務付け ネットのプラス面をつぶす

機能が進化した八角形ベゼル型"G-SHOCK"

匿名、実名ではなく、ペンネーム制を

――少ないながらも、境界のあいまいさから結果として問題を起こしてしまうということですね。では、問題はどうしたら解決可能なのでしょうか。

佐々木 まだ、あいまいなネットの世界が、人々の間に皮膚感覚として認識されていません。しかし、時間が経てば、あいまいさが認識できるのではないかと考えています。ネットリテラシーが高まるということです。一方、一人の個人攻撃のために本人が身の危険を感じ、攻撃をそのままスルーできないという問題が残ります。予防策には、ノイズや荒らしは読めないようにするコメントのレーディング(評価)システムが考えられるでしょう。評価するのは、人間、システムどちらでも構いません。ノイズを排除できれば、ウィキペディアやまとめサイトのように議論の流れを浮き上がらせられます。メールのフィルタリングサービスと同じで、その場合ノイズは放っておけばよいのです。

――お隣の韓国では、07年7月からネット実名制になりました。日本の総務省も今、情報通信法2011年施行による法的な規制を検討しています。

佐々木 仔細に読むと、今のところ規制の方向へは動いていないようですが、規制を可能にするニュアンスはあり、運用による規制の可能性を秘めています。しかし、私は、政府がネットを規制すべきでないと思っています。日本はこれまで、余計なことを言ってはいけない企業戦士の文化が中心でした。ネットの普及でそのタガが外れて、2000年ごろからモノを言える文化が生まれてきています。ディベート文化がなかったところに、ようやく自由な言論が生まれているのです。実名を義務付けると、そのプラスの面をつぶすことになります。韓国は、もともと実名文化なので、違和感がなかったんだと思います。オーマイニュースなどもそこから出てきたわけで、文化の土壌が違います。

――それでは、佐々木さんは匿名擁護派なのですか。

佐々木 私は、匿名と実名どちらかの擁護派ではありません。その問題は、ノイズのあるなしとイコールにされている誤解があります。実名にしたところで、ノイズが消えるわけではありません。実名でも、ひどいことを言う人はおり、決定的な方策にはならない。日本では、企業、組織から圧力を受け、自由がないから匿名に走っている面があり、「けしからん」と言ってもそれはなくなりません。大事なことは、匿名、実名ではなく、書き込んだ人がきちんとアイデンティファイされるシステムを構築して、ノイズを防ぐことです。

――具体的にそれは、どんなシステムですか。

佐々木 私は、ある人が掲示板やブログのどれとどれに書いたか認識できる顕名(ペンネームのこと)システムの「オープンID」がいいと思っています。これは、政府主導ではなく、業界主導で進めるものです。このシステムなら、実名を出さなくても、書き込みのアーカイブが蓄積されますので、ノイズや荒らしは少なくなるはずです。ある意味で、顕名は、匿名と実名の妥協点です。

――どのように運用されるのか教えて下さい。

佐々木 2ちゃんねるでも、IPアドレスからID制度に移りつつあり、その効果で「自作自演」もばれるようになっています。書いている人がだれなのか、IPアドレスよりもう少し早く突き止めるシステムが必要なのです。それによって、犯罪を未然に予防することもできます。顕名のアイデンティファイは、第3者機関が行うのも一つの方法です。とはいいましても、議論をしているのは誰か容易に突き止められる仕組みはよくありません。まっとうな議論は匿名が多いのであり、突き止めるのは刑事事件になるケースに留めるべきですね。

【佐々木俊尚氏プロフィール】 1961年、兵庫県生まれ。早大政経学部中退後の88年、毎日新聞社入社。岐阜支局などを経て、東京本社社会部。警視庁捜査一課、遊軍などを担当し、海外テロ、オウム真理教事件の取材にも当たる。99年、アスキーに移籍し、月刊アスキー編集部デスク。2003年の退職後は、フリージャーナリストとして主にIT分野を取材している。

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