2024年 5月 2日 (木)

始まった「大学淘汰」 聖トマス大「敗戦の弁」
(連載「大学崩壊」第11回<最終回>/募集停止続々)

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   「大学淘汰」の波は着々と押し寄せてきている。実に4割超の私大が定員割れし、2009年度に入ってからは4年制の「小規模」私立大学が続々と10年度からの募集停止を発表した。その中の一つ、聖トマス大学(兵庫県尼崎市)に「敗戦の弁」を聞いた。

入学者数の減少、歯止めかからず

   日本私立学校振興・共済事業団の2008年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」によると、集計された私大565校のうち、47.1%の266校が定員割れ。07年度と比較しても定員割れの私大は42校増加した。

   そんな中、聖トマス大学(兵庫県尼崎市)、三重中京大学(三重県松坂市)、神戸ファッション造形大学(兵庫県明石市)、愛知新城大谷大学(愛知県新城市)の4校が募集を停止する。6月18日には日本初の株式会社立であるLECリーガルマインド大学(東京都千代田区)も学部生の募集停止を発表。いずれも1学部しか持たない単科大で、学生数800人未満の小規模大学だ。 

   聖トマス大学は、1963年に「英知大学」として創立した。96年には大学院人文科学研究科を新設するなど拡大を目指してきたが、2000年から定員割れ。04年度は5学科を3学科に減らし、定員を250人に限定。07年には聖トマス・アクィナス大学国際協議会に加盟し、名称を現在の「聖トマス大学」と改称、国際交流の推進を図ったものの、入学者数は07年度が182人、08年度が78人、09年度が110人と減少に歯止めはかからず、募集停止を決断した。

   大学のホームページには「学生募集停止のお知らせ」が掲載されており、

「全学をあげてさまざまな施策を講じ努力をして参りましたが、このように厳しい環境に打ち勝つことができず、将来にわたって教育研究を継続することが困難になってしまいました。このような決定に至りましたことを深くおわび申し上げます」

とある。

有名校とそうでないところに二極化している

――学生数の「激減」はなぜ起きたのでしょう。

聖トマス大学:一言でいえば「努力が足りなかった」ということ。受験生のニーズに合った学科・学部をつくれず、有名校に志望が偏ってしまう中で、本校が肩を並べるところまではいけませんでした。それに、少子化の影響も非常に大きい。09年度については経済危機の影響で、学費の高い私立大学が敬遠された、ということもあるように思います。

――09年3月末現在で、約20億円の赤字ということですが、赤字経営はいつから続いていたのですか。「経済危機」の影響はあったのでしょうか。

聖トマス大学:1998年から赤字が続いていました。また、外貨建ての有価証券を保有しており、円高の影響もありました。

――今まで、どのような施策を講じてきたのでしょうか。

聖トマス大学:04年には学科を減らし、定員を限定する改組を行って経営資源の集中を図ったと同時に、神学科を人間学科に改名するなど、親しみやすい大学を目指しました。07年には聖トマス・アクィナス大学国際協議会に加盟し、「聖トマス大学」に改称、海外に興味のある学生のために留学システムの強化を行いました。08年は文学部を人間文化共生学部に改組、教職課程の強化を行いましたが、校名を浸透させることも難しく、結論としては改善できなかったということ。結果がすべてですから…。

――今後、小規模大学の経営環境は厳しさを増してくるのでしょうか。

聖トマス大学:少子化の余波で、有名校とそうでないところに二極化しているのは確かだと思います。当校も有名校に負けないよう頑張ってきたつもりでしたが、結果として失敗に終わってしまった。ただ、小規模でも特徴を出して頑張っているところはあります。小さい大学には小さいならではの良さもあるのでは。

――一部で合併も検討との報道もありましたが。

聖トマス大学:現時点では未定です。なくなる大学を卒業するのが嫌、と転校する学生もいるかもしれませんが、第一に考えるのは在校生の利益。卒業するまで、よりよい教育環境を提供し、就職支援を行っていきます。
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