2024年 3月 28日 (木)

警察官採用の「色覚検査」全廃 女性眼科医らの訴えで一歩ずつ改善

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   「色覚異常」に対する偏見や差別が、大きく改善されてきているという。このテーマに長くかかわってきた高柳泰世(たかやなぎ・やすよ)さんが2011年6月末、東京で開かれた「日本色覚差別撤廃の会」(石林紀四郎会長)で報告した。

   高柳さんは名古屋市の女性眼科医。1973年に開業して小中学校の学校医を引き受け、初めて色覚差別を知った。色の見え方が通常と違っていて、日本で開発された色覚検査表を正しく読めない子どもは「色覚異常」と判定された。工業高校、さらには大学入試も受けられなかった。

   その後、全国の国公私立大学484 校の学部・学科の1985年の大学入試要綱を集めて分析したところ、入学制限が1学部でもある大学は、国立では49%、公立で13%、私立で7%もあった。教育、医、薬、農学部の順で多かった。この結果は86年1月に専門誌に発表され、新聞報道されて大きな関心を呼んだ。

欧米では「まったく問題なし」なのに

   色覚検査はもともと徴兵検査用だったが、1958年からなぜか学校検査項目に導入されて、進学や就職指導に使われ出した。検査表を読めない子どもの率は男子で4.8 %、女子で0.4 %ほど。多くは日常生活に支障がなく、欧米ではまったく問題視されていない。色覚異常は遺伝で、女性の10%がその遺伝子を持っており、母親の苦悩は大きい。

   高柳さんが翌年度以降も毎年調査して発表したため、大学側の理解も深まり、いまも制限があるのは東京海洋大、神戸大、東海大の海洋学部系だけになった。

   1993年に発足した「日本色覚差別撤廃の会」や高柳さんの運動で、文部科学省は2003年に学校での色覚検査を廃止した。厚生労働省管轄の、民間企業の雇い入れ時の色覚検査も2001年に廃止されている。

   その後も別扱いだった公務員・旧公務員についても少しずつ改善に向かっている。たとえば警察官は、2007年まで全都道府県で「色覚正常」が条件だった。しかし、高柳さんらの働きかけで2010年には制限する都道府県は減り続け、この春2011年4月の新潟県、6月には最後まで残っていた沖縄県も制限を撤廃した。採用時の色覚制限があるのはいま、自衛隊、JR職員、一部地域の消防、船舶職員などに限られる。

「個々の能力での採否はともかく、鋭敏な色覚検査で一律に排除するのは差別であり許されない」と高柳さんは訴え続けている。

(医療ジャーナリスト・田辺功)

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