根拠が不明な情報がツイッター上で大量に拡散されるという事態が繰り返されている。つい最近問題とされたのは、「関東内の幼児の80%が40歳まで生きられない」というもの。発端はブログの書き込みで、それがツイッターに転載されて広まった。根拠の不確かさを指摘する声が相次ぎ、元々のブログの書き込みは削除されたものの、この「怪情報」は拡散を続けている。「友人の、知人の文科省勤務の方からの内通です」問題とされたのは、2011年10月11日朝、「重要」と題して掲載された文章で、冒頭に「友人の、知人の文科省勤務の方からの内通です」と断った上で、「3.11から今までに関東内に住んでいた幼児の80%が40歳まで生きられないデータが東大から発表されたとか。骨折れやすく、虚弱体質及びLDになりやすくなる等です」などとつづっている。東大が発表したとされる具体的な内容は示されておらず、東京電力福島第1原子力発電所から出た放射性物質と骨折、虚弱体質、ひいては学習障害(LD)とどのように関連するかについても明らかではない。だが、この書き込みは「お腹の赤ちゃんもか…」といった「一言」とともに、ツイッターを通じて急速に拡散していった。ブログに書かれていた内容がショッキングなだけに、根拠が示されていないことを疑問視する声も続出。コメント欄にも、発表の信ぴょう性について指摘する声が相次いだ。これに対して、ブログの持ち主は、「東大が発表したと言うよりは、東大の研究結果がそうだったと言う事で、発表はしていません。東大が研究結果を文部科学省へ伝えた内容を、文部科学省の方から横流しで聞いた。と言うだけなので、勿論ソースはありません」とトーンダウン。その後、「軽率な事をしてしまったと、大変反省しております」などとして、ブログの文章は削除された。ツイッターでは、結果的に誤報は訂正される??もっとも、ツイッターを通じて「根拠が不明な情報が検証なしに拡散される」といった事象は今に始まったことではなく、09年には、行方不明になっていた元タレントの酒井法子さん(40)=09年に覚せい剤取締法違反の罪で有罪判決、執行猶予中=について「遺体が摩周湖で発見された」との説が急速に広まった。このような事象が繰り返される背景について、ITジャーナリストの井上トシユキさんは「記者であれば、ある程度教育を受けている上、誤報を出した際は(1)訂正記事を出して上司に怒られる(2)名誉毀損で訴えられるというように『痛い目にあう』のに対して、ネットの匿名ユーザーは、基本的には痛い目にあったことがない。リスクを背負っていない」と、構造的な問題を指摘する。また、「結果的に誤報になった情報は、フック(つかみ)があるからこそ拡散するのに対して、いわゆる『訂正ツイート』は、フックがないので大して拡散しない」と、「ツイッターでは、結果的に誤報は訂正される」説にも懐疑的だ。さらに、今後の対策についても、「『情報をうのみにしてはいけない。出典を確認しないといけない』といった基本的なことを言い続けるしかない。下手に厳密に対策を打とうとすると、『ネット実名制』のような、別の弊害がある動きが出てくるでしょう」と、現時点で打てる手は限られているのが現状のようだ。なお、削除されたブログの文章には、「日本人には、著しくメディア・リテラシーが欠如していると思うの。メディア・リテラシーって、つまり、色々な情報をもとに、物事の真意を見ぬく能力」という主張も含まれている。情報の「根拠を確認する」「原典にあたる」ことの難しさを逆説的に裏付けた形だ。
記事に戻る