2024年 4月 24日 (水)

【置き去りにされた被災地を歩く】第5回・埼玉県久喜市 
内陸部の液状化、住民も驚いた 元は田んぼ、「再発対策」が急務

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広域地盤沈下エリアで地下水も上昇

南栗橋12丁目では、電柱や家が傾くほどだった(写真提供:久喜市)
南栗橋12丁目では、電柱や家が傾くほどだった(写真提供:久喜市)

   液状化には、「振動」「砂」だけでなく「水」という要素が欠かせない。南栗橋の造成地は、水田の上に砂を埋め立ててつくられたので、地下水は水田の下にある。つまり砂地の部分には流れていないはずだ。ところが都市計画課によると、地盤調査の結果、地表面から40センチぐらいのところに水が来ていたことが分かった。全体的に地盤が下がり、地下水の水位が上がった可能性は否定できないというのだ。

   液状化との因果関係は現時点で証明されていないが、南栗橋を含む埼玉県北東部は、広域地盤沈下のエリアに該当する。埼玉県環境部が2011年3月に公表した最新の「地盤沈下・地下水位観測年報」を見ると、南栗橋駅からほど近い場所にある観測井の水位計で、月平均の水位が前年より0.1メートル高かったことを示していたという。2010年3月発表の年報でも、前年比で0.4~0.6メートル高かったと報告されている。

   旧栗橋町は1984~90年にかけて7年連続で県内最大の地盤沈下量を計測、最大で1年に6センチも沈んでいた。その後1996年、2005年にも「ワーストワン」となっている。データで見る限り、地盤沈下と地下水の上昇は何年も継続しているようだ。仮に、砂の多い地盤に地下水の上昇と「条件」が整った状態で巨大地震を迎えていたとなれば、内陸にある南栗橋で液状化が発生したのも理解できる。

   被害は甚大だった。南栗橋だけでも全壊した住宅は11戸、大規模半壊も41戸に上る。道路は21路線で隆起や側溝の破損が起き、水道管や電柱にも影響が及んだ。

   久喜市によると、ライフラインは既に復旧。住民に向けては2011年3月13日以降、複数回にわたって説明会を開催する一方、田中暄二市長が埼玉県や国に対してたびたび支援を要望した。

   その結果、被災者生活再建支援法の適用が決まり、全壊家屋には最大300万円、大規模半壊には同250万円が支給されることとなった。一方、支援法の範囲から漏れる「半壊」「一部破損」に該当する住宅も合わせて131戸に上るため、久喜市では独自で最大100万円の支援を行い、住民の生活再建を後押しする。

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