2024年 4月 26日 (金)

日立の英国原発企業買収 ライバルの中国企業が手を引いた理由

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   日立製作所が英国の原子力発電事業会社「ホライズン・ニュークリア・パワー」を6億7000万ポンド(約850億円)で買収し、自ら原発の運営に手を出す決断をした。

   ホライズンの設立母体であるドイツの電力会社2社から2012年11月中に全株式を買い取る。当初は中国企業が買収者として有力視されたが、実質的な原発の発注者である英国政府の意向から、実績豊富な日立の手にわたることになったようだ。

きっかけはドイツ政府が「脱原発政策」にカジを切ったこと

   ただ、原発メーカーである日立がリスクの高い運営にも踏み込むことになり、ノウハウを持つ欧米企業の提携先探しが今後の課題となる。

   今回のM&A(企業の買収・合併)のそもそものきっかけはドイツ政府が2011年、「脱原発政策」にカジを切ったことにある。2009年にドイツの電力大手「エーオン」「RWE」両社によって設立されたホライズンは、英国の2カ所で原発4~6基を建設することが内定していた。しかし、ドイツ政府が脱原発推進を決めたことを受け、ホライズンの親会社2社が11年3月、ホライズンの売却方針を公表し、買収競争が始まった。

   当初は中国企業が有力視された。コスト競争力があるうえ、バックにつく中国政府による資金支援も期待できたからだ。電力需要の旺盛な中国は、米ウエスチングハウス(WH)や仏アレバから原発技術の供与を受け、世界有数の原発大国になりつつある。

英国政府が安全保障上の警戒感から中国企業の買収を疑問視

   建設中の原発は25基以上と先進各国が脱原発に傾く中、世界の半分を占める。既に14基が運転中だ。こうした中、WHやアレバと組んだ海外進出も目指しており、東芝が受注を目指すトルコなどにも名乗りを挙げている。今回のホライズンに対しては「中国核工業」がWHと、「広東核電」がアレバとそれぞれ組んで買収に手を挙げた。

   ホライズンの親会社2社は中国企業に関心を示し、一時は有力候補となった模様だが、実質的な原発の発注者である英国政府が、安全保障上の警戒感などから中国企業の買収を疑問視。アレバも消極的になるなど状況が変化するなか、9月には中国企業は2社とも撤退を決め、残った日立にお鉢が回った格好だ。

欧米の原発運営会社と提携して進める方針

   日立としては、原発建設受注をほぼ決めていたリトアニアで10月の国民投票の結果、原発建設反対が過半を占めるなど海外展開に暗雲が垂れ込めていただけに願ってもない展開だ。ただ、問題は初めての海外進出で原発運営まで踏み込むこと。日本国内なら東京電力や関西電力などが国と一体となって運営してくれたが、原発停止で燃料費がかさみ赤字に苦しむ今の東電や関電に海外に雄飛する余裕はない。

   日立は実績のある欧米の原発運営会社と提携して英国事業を進める方針だ。ホライズン株についても運営・建設事業の提携先などに順次売却し、将来的に出資比率を50%未満に抑え、リスクを減らしたい考えだ。10月30日の買収発表会見でも羽生正治執行役常務は「日立1社では難しい」と述べた。ただ、欧州は金融危機が続く一方、米国は安価な火力発電燃料が大量採掘できる「シェールガス革命」が進行中で原発ビジネスに及び腰のため、日立の思惑通りに提携企業が現れるかどうかは不透明だ。

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