2024年 4月 24日 (水)

倒産防ぐためいかに銀行の尻を叩くか 新政権は出資規制緩和をどうするのか

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   「5%ルール」と呼ばれる銀行の一般企業への出資規制を巡る議論が活発化している。金融庁が大幅な緩和を目指したが、金融審議会(首相の諮問機関)に押し戻され、貸出先の破綻(はたん)企業の再生支援などに限定しての緩和に落ち着きそうだ。

   銀行は証券会社やクレジットカード会社など、金融関係の企業の株式を100%持てるが、金融以外の事業会社については、上限を5%とすることが、銀行法と独占禁止法で定められている。戦前、財閥の中心に銀行がいて、事業会社の株式保有を通じて経営権を支配し、日本経済を牛耳ったことへの反省からだ。

通常の貸し出し規制5%を10~15%にする案も

   今回、金融庁が考えたのは、通常の出資規制緩和と、破たん企業再生の際の出資規制緩和の2本立て。

   通常の貸し出し規制5%を10~15%にする案を打ち出した。銀行から企業への資金の詰まりで、地域経済の疲弊を招いているという指摘を受けたもので、10~15%程度というのは、銀行の持ち分法適用会社になる20%にはしない、という考え方だ。

   会社更生法や民事再生法などの適用を受けた破たん企業の再生では100%出資を求める方針も打ち出した。銀行が破綻企業への融資を株式に切り替える「債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ=DES)」がやりやすくなり、銀行が新経営陣を送り込み、企業再生に全面的にコミットすることも可能になる。 破綻企業の再生には一定の時間が必要なことから、株式を持ち続けられる期間を10年程度とする考えだ。

背景には中小企業金融円滑化法の廃止がある

   金融庁の今回の方針の背景には、2013年3月末で中小企業金融円滑化法が廃止されることがある。同法は経営悪化した中小企業も、銀行と相談して再建計画を立てれば、不良債権扱いしないというもので、銀行の融資をしやすくし、または返済を猶予する効果があり、いわば企業の再生への時間を稼ごうという法律だ。

   しかし、長引く景気低迷で中小企業が経営不振からなかなか立ち直れないため、同法が廃止された途端、倒産が激増すると懸念されている。銀行の出資上限を緩和すれば、DESの活用で企業破たんを回避でき、再生が進む――という理屈だ。

   金融庁の方針を議論した金融審議会では、5%ルールの10~15%への緩和について異論が噴出。「実質的に銀行業以外の業務を行えることになる」と、銀行法の根幹に触れることへの懸念が主な論拠だ。銀行経営の健全化のため、変動リスクの大きい保有株式を順次減らしてきた、バブル崩壊後の金融行政との整合性を問う声も根強い。

特定の企業に限って出資上限を緩和する新しい案

   2012年10月31日の金融審に緩和方針を示した金融庁は、こうした批判を受け、12月5日の金融審の作業部会では、再生企業への100%出資を可能にする案は維持しつつ、全般的な緩和方針をあっさり撤回し、地域経済活性化や雇用維持に貢献する企業に限って出資上限を緩和する新しい案を示した。経営不振に陥ったスキー場を引き取って設備更新などの投資をするリゾート関連企業などへの出資を想定しているという。

   金融庁が、あたかも予め考えていたように当初方針を撤回したのは、「そもそもやる気がなかったから」(金融筋)との指摘がある。この話の発端は4月の民主党の成長戦略・経済対策プロジェクトチームが、銀行出資規制の緩和を打ち出したこと。その後、大きな議論にもならぬまま7月末に閣議決定した「日本再生戦略」に盛り込まれた。このため金融庁は、とにもかくにも緩和案をまとめ、金融審に提起したが、ハナから本気ではなかった、というわけだ。民主党政権の崩壊で金融庁の思惑通りの展開になっている。

   いずれにせよ、金融円滑化法が3月末で期限切れになるのは変わらない。「銀行は5%ルールを、中小企業支援を渋る口実にしてきた」(政府関係者)との指摘もあるように、倒産激増を防ぐためにいかに銀行の尻を叩くかは、新政権でも大きな課題であるのは間違いない。

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