2024年 4月 29日 (月)

産経新聞の投書が官房長官を動かす 官邸会見が「下向き」から「国民目線」に?

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   首相官邸の記者会見室の記者席の配置が、2013年10月2日午後の官房長官会見から少しだけ変更された。「長官の目線が下を向きっぱなし」という新聞の投稿欄を読んだのをきっかけに、記者席を1メートルほど後ろに下げたためだ。記者席とのスペースが広がる分、目線が少しは上に向くという訳だ。菅義偉官房長官は「会見は国民目線で」と意気込む。

産経新聞投稿「その先には国民や世界中の人がいるということを忘れないで」

レイアウト変更前の官邸会見場。記者席の最前列が撤去された
レイアウト変更前の官邸会見場。記者席の最前列が撤去された

   きっかけは2013年10月1日の産経新聞の投稿欄「談話室」に、57歳の開業医の女性から寄せられた投稿。投稿では、テレビで見る菅長官の会見を

「常々気になっていることがある。長官の目線が下を向きっぱなしなのだ。原稿を読んでいるわけではなく、質問した記者に向かって丁寧に説明しているためで、謙虚な人格の表れなのだろうと思う」

と指摘した上で、

「会見に注目しているのは決して記者だけではない。その先には国民や世界中の人がいるということを忘れないでほしい」

と目線が上に向くような工夫を求めた。

   会見室には、記者席の後方の一段高い場所にカメラ席が設けられている。カメラ席は2段構造で、1段目にスチールカメラ、2段目にムービーカメラが陣取る。

   首相や官房長官が使う演台は記者席よりも高い位置にある上、記者は座ったままで質問するため、答弁は記者を見下ろす形で行うことになる。半面、カメラが設置されている台は演台よりも高い位置にあるので、この投稿が指摘しているように、なかなか「カメラ目線」にはなりにくい。菅長官は、投稿について

「ご指摘はある意味ではもっともだなぁ、と思いまして」

と話し、改善の必要性を感じている様子。投稿では、(1)会見場を階段状にする(2)長官のお立ち台を撤去して記者が起立して質問する、といった解決策も提案されたが、実際に行われたのは記者席の最前列を撤去する、という方法だった。

安倍首相の会見でも「目線問題」は指摘されていた

   レイアウト変更の効果については、10月2日午後の会見では、

「どういう形になっているか、後でビデオを見てみたい」
「(投稿の)指摘が『そうだろうなぁ』と思い、(レイアウト変更を)試行的にさせてもらったが、常にこの会見は国民目線で行っていきたいと思う」

と述べていた。翌10月3日の会見でもレイアウトは変更されたままだったが、特にその効果について言及はなかった。少なくとも「悪くなった」ということはなく、ある程度の効果はあったとみているようだ。

   この「目線」問題、同じ会見場を利用する安倍晋三首相の会見でも指摘されており、10月1日に消費増税を発表した会見の様子を伝える記事のコメント欄には

「できれば安倍さん、テレビカメラの方を見ながら発言してほしかった。国民に直接説明をするのだという意味合いならばそうすべきだった。目線が、原稿を読むとき以外はだいたい首相の前に座っている新聞社やテレビ局の記者たちに向いていたから」

という意見があった。レイアウト変更で、今後は多少は改善される可能性もある。

細川、森、麻生の歴代首相はプロンプターを活用

   歴代の首相会見でも、「目線」のあり方については試行錯誤を繰り返してきた。例えば1993年の細川護煕首相、00年の森喜朗首相、09年の麻生太郎首相は、演台の前にある2枚の透明なパネルに原稿を映し出す「プロンプター」を活用。目線が下にいかないように工夫した。

   プロンプターは事前入力された原稿を画面に映し出して利用するため、事前に内容が決まっている演説や記者会見の冒頭発言には適している。だが、質疑応答には活用しにくく、必ずしも万能とは言えない。

   特に官房長官はポストイットが多数挟まれたファイルを手に会見に臨み、質問内容に応じてファイルを参照しながら答弁する。冒頭発言なしで質疑応答のみの会見も多く、あまりプロンプターの出番はなさそうだ。

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