筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療研究支援を目的とした米国発のチャリティー運動「アイス・バケツ・チャレンジ」(氷水チャレンジ)が日本国内で広まるにつれ、その裏で疑問や反対の声が日を追うごとに増えてきている。2014年8月21日にはお笑い芸人の武井壮さんが「思うところあって氷水はかぶりません!」と宣言して注目を集めたが、他の参加者たちも反発があるのを認識した上で、どうすべきか思い思いの選択をしているようだ。武井壮「参加者に敬意」氷水をかぶったことを報告した鈴木おさむさん(画像は公式ブログのスクリーンショット)「氷水チャレンジ」は指名を受けた人がバケツたっぷりの氷水を頭からかぶる動画をインターネット上で公開するか、支援団体の米ALS協会に100ドル(約1万円)を寄付するかを選択し、次の3人を指名して運動の輪を広げていくというもの。参加は強制ではないが、氷水をかぶったうえで寄付している人が目立っている。ALSという難病を知るきっかけとなることを評価する声も多いが、国内では「不幸の手紙と変わらない」「偽善の集まりだろう」「ただの馴れ合いにしか見えない」といった批判的な声も少なくない。そうした中、武井壮さん(41)の「思うところあって氷水はかぶりません!!」という宣言が、著名人が続々と氷水をかぶる流れに一石を投じた。ロンドンブーツ1号2号の田村亮さん(42)から指名された武井さんは21日、ALSに限らない難病支援や、飢餓に関する支援、東北の被災者への寄付などに思いを回すとともに、今回の運動については学ぶことで「寄付」するとツイッターで表明し、インターネット上で称賛を集めた。さらに武井さんは翌日、「キャンペーンで指名されて寄付行為をしないと決めています。自分の思う優先順位で自分の頂いた給与の中から寄付する先、金額をきめているだけなので、何も考えを変えることはありません」と運動に参加しなかった理由を説明した。一方で、運動によって多くの人がALSを知り、多額の寄付が集まったことについては「素晴らしいと思います」とし、「これを世界に広めた著名人の皆様や寄付及び参加された皆様の行動に敬意を表したいと思います」とも綴った。鈴木おさむ「このまま進むとネガティブ意見もっと増えるのでは」運動に対する反発の声は、指名された人たちの耳にも届いているようだ。その上でどう決断するかは人それぞれで、プロボクサーの亀田興毅さん(27)は氷水をかぶることを選んだ。21日のブログでは「この活動について色々な意見があるけど」と前置きした上で、「俺は何も間違った事やったと思ってないし、そもそも間違いと思ってたらやってないし、これをやる事によって一人でも多くの人がこの難病の事を知るきっかけになればと思います」と参加への思いを語っていた。寄付についての記述はなく、橋下徹大阪市長など3人を指名した。放送作家の鈴木おさむさん(42)は22日のブログで、ラジオのオープニング時に氷水をかぶったことを報告した上で、「本来なら3名指名するんですが、僕は指名をしない・・という選択をしました」とコメントした。反対意見があることや、疑問を感じながらも参加している人がいることを指摘し、「なんかね、このまま進むと、ネガティブな意見ももっと増えてきて、せっかくいいことしてるはずのこの企画自体が、マイナスなイメージももっとでかくなちゃうんじゃないかなと思ったり」(原文ママ)との懸念を示した。鈴木さんと同じく指名しないことを選んだのは、8月20日に動画を公開した俳優の金城武さん(40)だ。動画では言葉を発することはなく、かわりに中国語の字幕が流れた。この運動はALSという病気に対して関心が集まる非常にいいものだとしながらも、「ただの挑戦や、一時的な流行となってしまわないことを願います」と訴えた。かぶった水は環境に配慮したのか、バケツに注いだものではなく除湿器の水だった。その上で、「もう誰も指名はしません。この動画を見た皆さんが自発的に社会問題に関心を持ち、温かい行動をとっていただければと思います。挑戦する必要はありません」といった趣旨のメッセージを寄せていた。こうした「ルール外」の行動をとる人たちも一部にいながらも、チャレンジの輪は広がり続けている。22日には、みんなの党の浅尾慶一郎代表が安倍晋三首相を指名した。指名された場合は24時間以内にいずれかを選択するルールがあり、安倍首相による何らかのアクションが期待されている。
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