2024年 4月 24日 (水)

「大きすぎて潰せない」金融機関 この難問を解決する規制案が浮上

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   国際的な巨大銀行の自己資本比率の規制を強化する議論が本格化している。2014年11月の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、最低比率を現行の約2倍の16~20%に引き上げる案が示される見通しだ。

   日本の3メガバンクも巨額の資金調達を迫られる恐れがあり、日本は各国の事情に応じた柔軟な対応を主張。厳格な規制を求める米国などとの間で、激しい駆け引きが繰り広げられそうだ。

巨大銀行を公的資金で救済せずに済む

巨大銀行を公的資金で救済せずに済ませるには?
巨大銀行を公的資金で救済せずに済ませるには?

   新たな規制の対象は、破綻すれば金融市場に影響が大きい世界の29金融機関で、日本の3メガバンクも含まれる。29金融機関は2019年までに自己資本比率を8%以上にすることが決まっているが、これに加えて、経営破綻時に返済順位が低い劣後債などをさらに積み上げることが検討されている。

   新規制案には、2008年のリーマン・ショックを教訓に、金融機関が「大きすぎて潰せない(too big to fail)」という問題を解決する狙いがある。また金融危機が起きても、債権者に負担を求めて損失を吸収するしくみを整えておけば、巨大銀行を公的資金で救済せずに済むというわけだ。

   日本の3メガバンクの自己資本比率は現在15%前後。このため「16%程度への引き上げであれば、対応可能」(メガバンク幹部)と冷静な受け止めが多い。資本の積み上げは普通株ではなく、劣後債がメーンとみられるため、株式1株当たりの価値が薄まる懸念もない。また、「新規制の実施は5年以上先で、基準達成にはさらに猶予期間が設けられる」(金融関係者)という見通しも、日本の銀行業界を楽観的にさせている。

場合にとっては3メガバンク合計で9兆~10兆円の資金が必要に

   だが、新たな最低比率が20%まで引き上げられるとなれば、話は違ってくる。銀行関係者によると、比率を1%引き上げるのに必要な額は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が約1兆円、三井住友FG、みずほFGがそれぞれ約8000億円とみられる。20%まで引き上げるには、3メガバンク合計で9兆~10兆円規模の資金調達が必要になる計算だ。

   メガバンク幹部は「さすがに20%への引き上げはないと思うが、兆円単位の調達となれば厳しい」と表情をくもらせる。有利な条件で早めに資金を確保しようと、金融市場で世界の金融機関による資本調達競争が起き、出遅れれば調達コストが上がったり、必要な資金を確保できなくなったりする恐れも出てくる。

   その場合、銀行の顧客にしわ寄せされる可能性もある。自己資本比率のアップは内部留保を積み上げていくのが基本だが、「簡単に上げるには、比率を計算する分母になる貸し出しを減らせばいい」(銀行中堅幹部)からだ。銀行の間で貸し渋りの動きが広がれば、「金融危機を起こさないための規制強化のはずが、逆に世界経済の足を引っ張り、新たな危機を招きかねない」(アナリスト)との指摘も出ている。

各国の事情に応じた柔軟な規制を求める

   そもそも日本では、銀行破綻時に預金者の預金を元本1000万円とその利息まで保護する預金保険制度など、銀行の破綻処理のしくみが整備されている。欧米の巨大投資銀行と日本のメガバンクのような商業銀行ではリスクの取り方も異なり、日本の銀行業界では「厳しい規制を一律にかけるのはおかしい」との声が根強い。

   麻生太郎財務相は9月21日、オーストラリアで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で「日本の預金保険制度など、各国制度の特性が反映されるのであれば、検討案を支持する」と述べ、各国の事情に応じた柔軟な規制を求めた。全国銀行協会の平野信行会長(三菱東京UFJ銀行頭取)も9月18日の記者会見で「破綻処理が容易な構造の金融機関は(最低比率が)低くてもよいのではないか。金額が大きいので極めて大きなインパクトがあり、金融機関の信用・仲介機能、貸し出し能力を削ぐことになりかねない。引き続き意見を発信していきたい」と訴えた。

   日本の金融当局は今後も、厳格な規制を主張する米英などに対し、日本のメガバンクに適用される最低比率の引き下げなど、慎重な対応を求めていく方針だ。詳細な制度設計をめぐって水面下で各国の攻防が続くとみられ、メガバンクはその行方を注視している。

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