2024年 5月 6日 (月)

子育て支援の贈与非課税、1人当たり1000万円 銀行業界「満額回答」に商機到来と意気込む

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   政府が2014年末にまとめた2015年度税制改正大綱で、親や祖父母から子や孫らに贈られる結婚、出産、育児の費用を非課税とする新制度が創設された。

   既に始まっている教育費や住宅資金の贈与税非課税制度についても延長、拡充される。教育資金贈与の関連商品が大ヒットした信託銀行などにとって「二匹目のドジョウ」とも言えるビジネスチャンスが到来することになり、銀行業界は虎視眈々と商機を狙っている。

高齢者の金融資産を現役世代に移転

教育資金で「ビジネスチャンス」(画像はイメージ)
教育資金で「ビジネスチャンス」(画像はイメージ)

   税制改正大綱に盛り込まれた新制度は、親や祖父母が20歳以上の子や孫に結婚・出産・育児にかかる資金をまとめて贈与する際、1人当たり1000万円まで贈与税が非課税となる制度で、2015年4月からスタートする。具体的には、信託銀行などに専用口座を作り、結婚や出産、育児にかかったお金の領収書などを銀行へ持参して、制度の対象になる費用と認められれば、お金を引き出せるしくみだ。

   2013年度の税制改正で創設された教育資金の贈与税の非課税制度も、2015年末までの期限が2019年3月末まで延長されることになった。今回の改正と合わせて、30歳未満の子や孫ら1人当たり計1500万円までが非課税となる。

   結婚・出産・育児の資金の非課税化や、教育資金の非課税制度の延長は信託銀行をはじめ金融業界が強く要望していた。背景には、信託銀行などが教育資金贈与の制度創設に合わせて売り出した関連商品の好調さがある。教育資金贈与信託の2014年10月末時点の契約件数は約9万4000件、残高は約6300億円と右肩上がりで伸びており、「業界始まって以来の大ヒット商品」(大手信託銀行幹部)となった。

   この商品自体で収益が上がるわけではないが、各行がこぞって契約を競っているのは「顧客と2世代、3世代にわたる結びつきができる」(同)からだ。信託銀行などの主要顧客は資産を持つ高齢者が多いが、その子供や孫とは接点が少なく、顧客が亡くなった後に取引関係をいかに継続していくかが悩みの種だった。教育資金贈与信託をきっかけにすれば、資産を持つ新規の顧客獲得につながるうえ、その子供から孫にいたるまで何十年にもわたる関係を築けるというわけだ。

   政府も、高齢者のもとで滞留している巨額の個人金融資産が、子育てや教育にお金がかかる現役世代へ移転していけば、個人消費の起爆剤となって経済が活性化し、子育て支援にもつながると期待している。政府とも思惑が一致し、2015年度の税制改正では業界の要望通りに制度の延長・創設が盛り込まれ、ほぼ「満額回答」となった。

「格差の固定化」という批判も

   業界はビジネスチャンスの拡大を前に「新制度に対応する商品のラインアップを拡充し、ゆりかごから墓場まで人生のイベントごとに顧客をサポートする」(大手信託銀行首脳)と鼻息が荒い。既に教育資金贈与信託に続く契約獲得競争が水面下で始まっている。

   しかし、現場では制度の運用面に不安もあるようだ。先行して始まった教育資金贈与信託では「この習い事は制度の対象になるのか」などと顧客からの問い合わせが殺到。領収書を一つ一つやり取りしながら経費を払い出す作業も膨大で、信託銀行の行員からは「手間がかかる割に単品ではもうけが出ない商品」とのボヤキも聞こえる。

   新たな結婚、出産、育児の制度でも、ベビーシッター代は対象となるが、ベビーカーやおむつなどの購入費用は対象外など、利用者からみると分かりにくい面もあり、スタート当初は混乱する可能性もある。

   そもそも、これらの制度をめぐっては「贈与する資産がある富裕層に対象が限られ、格差の固定化を助長する」との批判も根強い。政府や業界の思惑通り、眠っている個人金融資産が動き出し、経済活性化や少子化対策につながるのか注目される。

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