2018年 11月 21日 (水)

「迫る本土決戦」「いまぞ国民総武装」 むのたけじさん、責任を取った「戦意高揚記事」

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   戦争中に日本の新聞はさんざん戦争をあおり、戦後はそのことをほうかむりして手のひらを返した。信用できない――しばしば日本のマスコミに突き付けられる批判だ。2016年8月21日、老衰のため亡くなった「むのたけじ」(本名・武野武治)さんは、たった一人でそうした批判を引き受け、けじめをつけた人だった。

   朝日新聞記者として戦意高揚記事を書いてきたことがトラウマとなり、その責任を痛感して終戦の日に退社、故郷の秋田で細々とミニコミ誌を発行し続けた。同世代はもちろん、後輩のマスコミ人にとっても、むのさんは常に「一記者」としての自らに反省を強いる鏡のような気になる存在だった。

  • 武野さんの記事が「復刻アサヒグラフ昭和二十年 日本の一番長い年」(朝日新聞出版)に掲載されている。
    武野さんの記事が「復刻アサヒグラフ昭和二十年 日本の一番長い年」(朝日新聞出版)に掲載されている。

「本社報道部 武野武治」の署名記事

   「いまぞ国民総武装――歴史的第八十七臨時議会開く」。アサヒグラフ昭和二十(1945)年6月25日号にそんな見出しの武野さんの記事が掲載されている。終戦の2か月前のことだ。2015年6月に朝日新聞出版が発行した「復刻アサヒグラフ昭和二十年 日本の一番長い年」によれば、書き出しは次のように始まる(編集部注=漢字の字体などは現代のものに置き換えた)。

「ありきたりのほめ言葉で飾ってそれで済ませる時ではないしまたそんなことではもはや誰も満足しない。第八十七臨時議会がどんなに深い歴史的な意味を持つものであったか、その重大な役割を実際どうはたしたか、ここに常套の修辞は並べない」
「だが、政府も議会側も立場は異なれ、いかに力をふり絞って眼前の大苦難と取っ組んでいるか、朝野の憂国の至念をお互いに痛ましいまでに切実に確認し合うこと、今度の議会のごときは確かにかつてなかったであろう」

   そして、戦局最終盤の議会審議の様子を記したあと、

「迫る本土決戦を前に、国民総武装への法的な裏づけを行った今期議会の成果は、それを俟(ま)ってはじめて真の威力を持つであろう」

と結ばれている。見開き2ページの報告は(六月十四日記)とされ最後に「本社報道部 武野武治」の署名がある。

   大正4年の生まれ。中国やインドネシアの戦場も取材した。この記事を書いたのは血気盛んな30歳のころだ。東条英機、近衛文麿、鈴木貫太郎ら政権中枢の政治家にもインタビューした経験がある。

異論を許さぬ戦時体制が進行

   戦前の日本では、出版法や新聞紙法、治安維持法、国家総動員法などによって多方面にわたる言論統制が行われていた。検閲は常態化し、発禁処分もあった。異論を許さぬ戦時体制がじわじわと強化され、「御用メディア」のみが生き残れる状況だった。アサヒグラフもそうした「国策協力媒体」だった。

   戦後、各新聞が大いなる反省を強いられる中で、朝日新聞は社説「自らを罪するの弁」(1945年8月23日)、声明「国民と共に立たん(関西版では「―起たん」)」(1945年11月7日)を発表し、村山長挙社長以下幹部がいったん辞任した。

   だが、武野さんは、国民を裏切った「自らの責任」にこだわった。新聞社を退社し、3年後の1948年、故郷の秋田にもどり、週刊新聞「たいまつ」を30年間、発行し「反戦平和」を訴え続けた。近年は、各地の講演などで戦争責任を死ぬまで反芻した。

   むのさんのところにはしばしば若い世代のマスコミ人が話を聞きに訪れた。メディアが戦争中に犯した「苦い教訓」を当事者からじかに聞くためだった。その死はNHKも全国ニュースで報じ、読売新聞も「戦争の根絶を訴え続けたジャーナリスト」と伝えた。

   肺がん、胃がんを患って晩年は体重40ロそこそこ。読売新聞の秋田版によると、最近は哲学小説を書いていた。62歳の人類学者と16歳の少女が主人公。自分が考え続けたことを2人の手紙のやりとりを通じて伝えたい。これを出すまでは死ねないと話していたという。 その夢はかなわなかった。

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