2024年 4月 24日 (水)

株主総会での賛否を個別開示 生真面目なアノ信託銀、慎重な某生保

   三菱UFJ信託銀行など大手信託銀行は、投資先企業の株主総会で「取締役選任」などの議案採決で議決権を行使した際の、個別議案の「賛成・反対」の内容を開示する。2017年3月期決算の企業が6月に相次いで開く株主総会の対応について、8月には開示することで各行の足並みがそろう。監督官庁の金融庁の意向に沿った取り組みだ。ただ、資金を預かって運用する組織として同様に「個別開示」を求められている生命保険業界などの一部は必ずしも公表するつもりはなく、対応が分かれる形になっている。

   信託銀行は、年金基金などの投資家から運用を委託されて資金を預かるのが主な仕事の1つだ。ただ、一般の商業銀行などと同様、企業や個人へのお金の融資も行っている。そうなると、お金を預かって資産運用を代行する者として企業の株式に投資する際、その同じ企業に独自に資金を融資していることも珍しくない。資金の融資先企業は「お金を借りてもらって利子をいただく大事なお取引先」なわけだが、信託銀行にお金を預ける年金基金などからすれば、「手心」を加えずに投資先の経営をきちんと監視してもらわねば困るということで、「利益相反」が生じやすくなる。

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機関投資家向けの行動指針を改定

   そこで、個別議案への「賛成」「反対」を開示することで、「なあなあではなく、しっかり経営を監視しているか」が白日の下にさらされ、利益相反の疑いを少しでも晴らすことにつなげようとの狙いもあるわけだ。積極的な議決権行使で投資先企業の価値を高めることになれば、投資家、運用者、投資先企業が全体としてハッピーということもある。

   金融庁は「スチュワードシップ・コード」と呼ばれる、信託銀行や生命保険のような機関投資家向けの行動指針を改定し、5月に公表した。英国を参考に2014年2月に策定したものをバージョンアップした。改定版のポイントは「投資先企業との対話の強化」。議決権行使結果の開示の充実はその最重要事項だ。従来は、取締役の選任や役員報酬といった主な議案ごとに議決権を行使した結果を集計して開示することになっていたが、個別の企業ごとの議案への賛否は分からなかった。

   そこで改定版は議決権行使の「個別開示」を促すことにした。背景には「集計開示」では不十分との声が市場関係者からあがっていたことがある。例えばトヨタ自動車が2015年に発行した個人投資家向けの「種類株」。「5年間売却できない契約のため、経営監視力に影響がある」として海外の投資家には反対票が多かったが、国内の機関投資家は大半が賛成したとされる。国内投資家がトヨタへの「おつきあい」を重んじたかどうかは不明だが、個別開示すればそうした不透明さも、少しは拭えるというわけだ。

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