音楽が若者を自殺から救っている 米ラッパーLogicの曲『1-800-273-8255』

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   10代の自殺率が上昇傾向にある米国で、政府が提供している自殺防止ホットライン「National Suicide Prevention Lifeline」の通話量が2017年5月以降急増している。

   5~6月の通話量は史上2番目になり、公式サイトへの訪問者数は10万人増加したとCNNが2017年8月29日に報じている。

   そのきっかけとなったのは、ラッパーのLogic(ロジック)が今年5月にリリースしたアルバム『Everybody』に収録された曲、『1-800-273-8255』だ。

  • 歌が若者たちを救っている(画像はロジックのステージの様子を伝えるMTVの記事)
    歌が若者たちを救っている(画像はロジックのステージの様子を伝えるMTVの記事)

MTVで放送されるとさらに急増

   実は『1-800-273-8255』とは「National Suicide Prevention Lifeline」の電話番号だ。

   8月27日には米音楽チャンネル「MTV」が、その年の優れたミュージックビデオを表彰する「MTVビデオミュージックアワード2017」を開催。ロジックも出演して『1-800-273-8255』をステージで披露し、同日中にホットラインに電話が殺到。通話量が前年同時期比50%増に達したという。

   しかし、なぜロジックはわざわざ曲のタイトルを自殺防止ホットラインの電話番号にしたのか。アルバム発売前の4月27日、ロジックは自身のツイッターで次のように話している。

「多くの人から自分の音楽が苦しい時の助けになったと言われた。けれど、僕自身はまだ十分ではないとも感じていた。暗闇の中で光になるような曲を作りたいと考えていた」

   8月3日付の「NEW YORK POST」紙の取材の中では、2015年ごろに自分自身が仕事に追われ暗闇の中にいる状態で、死ぬことを何度も考えたとコメント。しかし、妻や家族との生活を続けたいと何とか思いとどまったという。

   こうした経験から、人生を諦めて自らの手で終わらせようとする人を救うための曲として、『1-800-273-8255』を制作したのだ。

   歌詞の内容は自殺しようとしている人に呼び掛けるものではなく、自殺を決意した人物の視点から、その苦しみを吐露するものになっている。「死ななければ解放されない」としながらも、同時に「生きたいと感じている」「本当は死にたくない。生きることも死ぬこともさえもしたくない」と訴え、「その感情こそが生きていることだ」と締めくくっている。

   ロジックのツイッターには彼の曲を聞いたことで自殺を思いとどまったという若者たちからのコメントが寄せられており、

「死のうと思っていた日にあなたの曲をヘッドホンで最後まで聞いて、今では立ち上がることができた」

と感謝の言葉を述べる18歳の女性もいた。これらの言葉が嘘などではないであろうことは、前述のホットラインの通話量増加からも明らかだろう。

自殺防止の呼びかけも大きな影響を持つ

   CNNの取材に対し、「National Suicide Prevention Lifeline」の責任者であるジョン・ドレイパー氏は「影響は我々も驚くほどだ」とコメント。その上で、自殺防止のためにミュージシャンや俳優など影響力を持つ人々がポジティブなメッセージを送ることには意味があると指摘している。

「悲劇的な出来事、例えば(今年5月に自殺した)クリス・コーネルや(7月に自殺したリンキンパークのボーカル)チェスター・ベニントンの自殺、あるいは10代の若者の自殺をテーマにしたドラマなどが若者の自殺に大きく影響しているのは確かですが、一方で自殺防止の呼びかけも同じくらい大きな力を持つはずです」

   日本では政府提供の自殺防止ホットラインはないが、「日本いのちの電話連盟」が47都道府県で「いのちの電話」を提供しているほか、厚生労働省の「こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)」、などいくつかの相談窓口が存在している。

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