2024年 4月 20日 (土)

「エンゲル係数」ウィキペディア書き換え合戦 首相答弁直後に...官邸の陰謀説まで

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   国会でエンゲル係数をめぐる議論が行われた直後、ウィキペディア(日本語版)の「エンゲル係数」の内容が、あるユーザーによって書き換えられたことが注目を集めている。

   編集後の文章が政府側の主張を擁護するような内容だったため、批判派は「政権の主張によって事典の内容まで書き換えられるのか」などと紛糾、中には政府による「工作」「陰謀」を唱える人も。2018年2月2日午後の時点で、件の項目は編集できない状態となっている。

  • 安倍首相の答弁をきっかけに…(2017年10月撮影)
    安倍首相の答弁をきっかけに…(2017年10月撮影)
  • 安倍首相の答弁をきっかけに…(2017年10月撮影)

エンゲル係数の上昇をどう捉える?

   発端は、1月31日の参院予算委での質疑だ。

   民進党の小川敏夫・元法相は、各種の指標を挙げて「アベノミクスによって国民生活は苦しくなった」と主張、特にエンゲル係数の上昇を指摘し、政権批判を展開した。

   「エンゲル係数」についてウィキペディア(日本語版)で調べると、以下のようにある。

「エンゲル係数とは、家計の消費支出に占める飲食費の割合(パーセント単位)のこと。(中略)一般に、エンゲル係数の値が高いほど生活水準は低いとされる。これは、食費(食糧・水など)は生命維持の関係から(嗜好品に比べて)極端な節約が困難とされるためであり、これをエンゲルの法則という」

   総務省の統計によれば、エンゲル係数は2005年まで低落傾向が続いたものの、以後はゆるやかに上昇、特に2010年代半ばからはそのペースが速まり、2016年には25.8%(前年比0.8ポイント増、2人以上の世帯)と、1987年以来の高い数字を記録した。

   小川氏はグラフを示しながら、「エンゲル係数はアベノミクスが始まってから上がっている」として、

「安倍総理、これは厳然たる事実ですよ。国の行った調査でエンゲル係数が上がっている、国民の生活は苦しくなっている。それがアベノミクスの実質じゃないですか」

などと質した。対して安倍首相は、エンゲル係数の上昇自体は「ファクト」だと認めつつ、その原因には「物価変動のほか、食生活や生活スタイルの変化が含まれている」と反論する。野田聖子・総務相も、高齢化や共働きの増加など、やはり「豊かさ」以外の要素がエンゲル係数の上昇に関わっているとの認識を示した。

「安倍官邸が、wikipediaを書き換えてるようだ」

   かみ合わないまま終わった論戦だが、ウィキペディアの「エンゲル係数」の項目が、あるユーザーによって書き換えられたのは、その翌日2月1日の午前だ。

   ネット上のフリー百科事典であるウィキペディアは、そのルール・方針に従う限りはユーザーが自由に編集できる。ところがこのユーザーによる編集は、「値が高いほど生活水準は低い」とする「概要」の項を全面的に改稿、エンゲル係数の重要性を否定する内容に書き換えるものだった。

   このことに気付いた別のユーザーがツイッターで指摘したことで、一気に話題が拡散した。直前には、安倍首相がエンゲル係数の上昇は「食への消費が拡大し景気回復したということ」だと答弁したという不正確な要約がツイッター上で広まっていたことも(上述の通り、そうした趣旨の直接的な発言はない)、批判の燃え上がりに拍車をかけた。ジャーナリストの岩上安身さんがツイッターで、

「ウィキすらが即座に歪められる怖さ。ネット市民は、随所で知的防衛戦線を張り続けないと、無知と詭弁と卑劣とデマの連合軍に押し切られる」

と発言したのをはじめ、

「総理の発言に合わせて、Wikipediaのエンゲル係数が早速書き替えられたとか。アホに合わせて書き換えてたら、この国おかしくなるよ」
「王様が黒いものを白いと言えば愚民が『そう!白いですね!』という中世ジャップランドしぐさ」

などといった書き込みが続出、それどころか中には、

「国民をだますため、ウィキペディアまで書き換えた?」
「安倍官邸が、wikipediaを書き換えてるようだ」
「ただのバカにはできない、高度な雇われチームの暗躍はまず確実だな!」

など、「官邸の陰謀」説を唱える人まで出始めた。

わずか4時間後には差し戻されている

   もっとも、ウィキペディアの「編集履歴」を見ると、問題の記述はわずか4時間で、情報の出典が小説だったことを理由に差し戻されている。その後、ツイッターでの話題を聞きつけて訪れたと思われるユーザーたちの間で編集合戦となり、最初の書き換えから8時間後には、編集をしばらくの間差し止める「保護」状態となっている(内容は当初のもの)。決してウィキペディアが、書き込みをそのまま許していたわけではない。

   なお、最初に書き換えを行ったユーザーはこの編集以外に活動履歴のないいわゆる「捨てアカウント」であり、正体は定かではない。編集合戦に加わっていたユーザーの中には、英語版のウィキペディアにも同趣旨の加筆を行う者もいたが、その英語はGoogleによる機械翻訳そのままの文章である。「高度な雇われチーム」の暗躍ではなさそうだ。

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