2021年 2月 28日 (日)

『日報隠蔽』の著者に聞く(上) 「PKO日報」、だれが隠したのか?官僚にとって「国民は敵」なのか

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「射撃許可」まで出ていた

――最近は何でも政府の「大本営発表」だけ信じろ、みたいな空気がありますね。

三浦 そうですよね。でも、実際にアフリカの現場を見てみると、政府の発表はまるでデタラメだということがすぐにわかる。私は何度も「結局すべて嘘なんじゃないか」と現場で思いました。
 現場の情報が全く伝わっていってない。でも調べてみると、現場はちゃんと報告している。そこまではOK。でも、そこからどうして「戦闘はない」というような議論になってしまうのか。僕は非常に疑問を持っていました。現地では自衛隊の取材は原則ダメなのですが、でも何人かの関係者とは接触はできるんですよ。その時に感じた現場の持っている危機感っていうのは、それはそれは大変シビアなものでした。

――実際に戦闘があったわけですね。

三浦 南スーダンでは2013年12月に、初めて首都のジュバで、政府軍と、当時はいわゆる副大統領派との大規模な戦闘があった。その数か月後に僕が最初に南スーダンに行った時に、大規模戦闘の少し後に起きた事案について、派遣部隊の隊長が直接私にこんな話を聞かせてくれた。近くで銃撃戦があって、全隊員に武器の携帯と銃弾の装填をさせた。自己防衛のためなら撃てという「射撃許可」まで出していたと。そんな重大情報を派遣部隊の隊長自らが僕に伝えたんです。それがたぶん当時の現場の危機感です。なんで朝日新聞の記者にそれを言ったのかって言うと、それは日本に伝えなきゃいけないと、じゃないとたぶん、このままだと撃つか撃たれるかになってしまうと。

――復興支援どころじゃないですね。

三浦 この状況を、実はPKOへの参加時には想定してないんですよね。本来は復興支援で行ってるのに、実際は南スーダン政府軍を撃つとかですね、想定もし得なかった6段階も7段階も上のレベルの判断を、現地の自衛隊員はギリギリのところでやっていたわけです。現場はそれを僕に伝えたかったんだと思うのです。
布施 当時の記録を私はいち早く情報公開請求をして入手していたんですけど、その中で、現地の部隊が何をいちばん心配したかと言うと、日本政府は派遣継続ありきで、結局、戦闘が起こっても自衛隊は残ってしまったということでした。
 戦闘が起こると、国連の任務ってガラッと変わるんですよ。昔は戦闘が起これば国連全体の活動を停止したり、引き揚げたりしていたんですけれども、今のPKOというのは、文民保護が最優先の任務。武器を使って戦闘をしてでも、文民を保護しなければいけない、というふうに変わっているんですよね。
 となると、自衛隊にはできないんですよ。だから、政治は、いち早く現地の情報を正確につかんで、判断する必要がある。そのためには現場はちゃんと現地の状況を早く伝えなきゃいけない。そういうある種のメッセージを現場が発しているにもかかわらず、また2016年の7月に、再び大きな戦闘の状況を迎えてしまう。本来はその前に、そういった問題を解決してなくちゃいけなかったのが、13年の戦闘の時に情報が開示されず、議論が結局なされずに、2016年の7月を迎えてしまったところに、根本的な問題があると思います。

――情報が隠されるから、判断が狂う。なんだか戦前の日本軍みたいですね。

布施 その通りです。戦前の日本は、大本営発表で国民には軍にとって都合の良い情報だけが流され、国民の多くは自国の軍隊が海外で何をやっているのか知る術がないまま戦争に協力させられました。今の自衛隊が戦前の日本軍のように暴走して侵略戦争をやるとは思いませんが、それでも、武装した軍事組織を外国に派遣するというのは、国家として非常に重い責任をともなうことです。しっかりとシビリアンコントロールを効かせるためにも、適切な情報公開は不可欠です。

に続く)


●布施 祐仁(ふせ ゆうじん)
1976年、東京都生まれ。ジャーナリスト。『ルポ イチエフ 福島第一原発レベル7の現場』(岩波書店)で平和・協同ジャーナリスト基金賞、日本ジャーナリスト会議によるJCJ賞を受賞。このほか著書に『日米密約 裁かれない米兵犯罪』(岩波書店)、『経済的徴兵制』(集英社新書)、『災害派遣と「軍隊」の狭間で―戦う自衛隊の人づくり』(かもがわ出版)、『主権なき平和国家 地位協定の国際比較からみる日本の姿』(伊勢崎賢治氏との共著/集英社クリエイティブ)など。現在、「平和新聞」編集長。

●三浦 英之(みうら ひでゆき)
1974年、神奈川県生まれ。京都大学大学院卒業後、朝日新聞社に入社。東京社会部、南三陸駐在、アフリカ特派員などを経て、現在は福島総局員。2015年、『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』(集英社)で第13回開高健ノンフィクション賞を受賞。著書に『水が消えた大河で─JR東日本・信濃川大量不正取水事件』(現代書館)、『南三陸日記』(朝日新聞出版)など。



   【日本のPKO問題】
■南スーダンPKO日報問題
陸上自衛隊は2012年1月から17年5月まで、復興支援で南スーダンPKOに施設部隊を派遣。日報の開示請求にたいし、「廃棄した」として不開示にしていたが、のちに陸自での保管が報じられ、7月、当時の稲田朋美防衛相が引責辞任した。

■イラクPKO日報問題
陸上自衛隊は2004年1月から06年9月まで、イラクの復興支援で延べ約5600人を派遣。「ない」とされていた日報が存在していたことを、18年4月に認めた。

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