2024年 4月 20日 (土)

高橋洋一の霞が関ウォッチ
河野外相の「次の質問どうぞ」発言は問題なのか

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   河野太郎外相が2018年12月11日の記者会見において日露関係についての記者の質問に4回連続して「次の質問どうぞ」とだけ答え、記者が反発するという報道があった。

   新聞各紙は、河野外相を批判しており、立憲民主党の辻元清美・国会対策委員長の発言「議員や記者の後ろには国民がいる。質問に答えないのは国民を無視しているに等しい」を引用している新聞もある。

  • 12月11日の会見では「次の質問どうぞ」と繰り返した(写真は外務省の会見動画から)
    12月11日の会見では「次の質問どうぞ」と繰り返した(写真は外務省の会見動画から)
  • 12月11日の会見では「次の質問どうぞ」と繰り返した(写真は外務省の会見動画から)

1週間前にも同様の質問があった

   今回の場合、新聞が一方の当事者であるので、当然のことながら、新聞報道はあてにならない。情報の切り取りをして、相手方である河野外相のイメージ操作をする。昔であれば、河野外相が悪いということになっただろうが、今では、インターネットの中で、河野外相の言い分もきちんと検証できる。それは、外務省サイトの外務大臣会見記録だ。ここに、テキストも動画も掲載されている。正直に言えば、各省の大臣記者会見を各省サイトで見ておけば、新聞なんてまったく読む必要はない。官房長官の記者会見記録だけでも十分である。

   外務省サイトで、12月11日をみると、たしかに「次の質問どうぞ」を4回繰り返している。

   しかし、1週間前の4日をみると、同じ記者の同じ質問に対して、これから交渉が始まるので交渉の場以外では発言を控えると丁寧に答えている。

   こうした場合の一般的な対応は、前に同じ質問があったことをいい、同じ答えをいう、である。

   そうしなかった理由は、いろいろ考えられるが、一つは、感情的なもので河野外相のムシの居所が悪かったなどである。

河野外相と記者クラブの関係性

   もともと河野外相と外務省記者クラブとの関係はよくない。諸外国との外相会談では冒頭取材があるが、河野外相はしばしば英語で行う。これに対して、記者クラブから、日本語でやってくれとの要望があったが、河野外相は外務省記者クラブにくるのだから、英語くらいできる人をよこせと言った。外務省記者クラブにいく記者は政治部記者が多いので英語ができない人も少なくなく、この発言は反発を受けた。

   もう一つの可能性は、外交での当然である。7日のロシアのラブロフ発言をみるかぎり、まだ会談日程すらセットされていない状況だ。外交交渉では、会談日時の設定が最優先で、内容はその次だ。

   北方領土問題では、ロシアにとって日本と交渉することは現状より後退だ。なので、ロシアが交渉しない口実を交渉外で主張するのは常套手段だ。一方、日本は交渉に持っていけなければ何も得られない。ロシアに日本が交渉外で応じると相手の土俵に乗っかり不味くなる。

   安倍総理のこれまでのプーチン大統領との関係で、ようやく交渉開始まで漕ぎ着けたので、実際に会談日程のセットについて、日ロで協議中ならば、交渉外での余計な一言は有害無益だ。

   河野外相は、政治部出身記者の「外交音痴」を皮肉りつつ、国益を守ったのかもしれない。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「未来年表 人口減少危機論のウソ」(扶桑社新書)など。


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