2024年 4月 18日 (木)

朝日新聞社内で「マスコミの現状」を問う! 正論YouTuber「せやろがいおじさん」コラボは、なぜ実現したのか

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   海を背景に、赤いふんどし姿で社会に対して正論をさけぶ、沖縄在住の芸人でユーチューバーの「せやろがいおじさん」(チャンネル登録7万6000人以上)。そんな彼が、東京・築地の朝日新聞東京本社に「乗り込み」、マスコミに一言申す動画が2019年2月19日、YouTube上に公開され、話題を呼んでいる。

   新聞社内で次々と「正論」を叫ぶ動画に、ネット上では「よく、社内で撮影許してくれたな」など驚きの声が相次いでいるが、せやろがいおじさん本人も「懐が深い」と驚いている。

  • 朝日新聞社で一言申すせやろがいおじさん(本人のYouTube動画より)
    朝日新聞社で一言申すせやろがいおじさん(本人のYouTube動画より)
  • 朝日新聞社で一言申すせやろがいおじさん(本人のYouTube動画より)

新聞社で「マスハラ」主張

   動画の尺は、約2分10秒。冒頭、せやろがいおじさんは「お~い、マスコミの皆さ~ん、『マスゴミ』って言われてるけどどないする~?」と問いかける。その後、「こうなったらマスコミに直接殴り込んで言うたるで!」と叫んでジャンプし、場面は朝日新聞東京本社前に切り替わる。

   次に動画では、編集局内とみられる場所に移り、

「安室(奈美恵)ちゃんが引退する時に親戚のところ押しかけたりとか、人の土地入って勝手に撮影したりとか、あと裏(事実確認)取れてないのに時事性優先して流しちゃうところとか、他の会社を出し抜いてスクープを撮れたら、もう手段は選ばん! みたいなのはどーかと思う!」
「『マスゴミ』とまでは言わんけどこれはマスコミによる立派なハラスメント 『マスハラ』やと思う」
「他の業界のセクハラとかパワハラは報じるクセに、自分は堂々とハラスメントしてる!」

などと次々とまくし立てる。社員に話を振り、掛け合う場面もある。

   続くシーンでは、廊下とみられる場所を走りながら、

「マスコミは色んな業界が抱えている問題を指摘して問題提起する」
「じゃあマスコミが抱えている問題は誰が指摘する!?」

と疑問を呈し、屋上では、

「マスコミ同士で報道のあり方について、批判し合ったりツッコミ入れてくれる第三者機関を自分らで作った方がええと思う!」

などと持論を展開。最後は、沖縄の海に戻って、「マスゴミの『ゴミ』って言われてる部分片付けよ~」と叫ぶ。動画のコメント欄には、「受け入れた朝日新聞東京本社、えらい」「行動力の塊すぎですって」など、驚きの声が相次いで寄せられた。再生回数は22日14時現在で、2万3000を超えている。

朝日新聞「学ぶことが多いと感じました」

   J-CASTニュース編集部では、朝日新聞社広報部に書面で取材を申し込み、今回の企画の理由などについて聞いた。広報部によると、18年11月にせやろがいおじさんを東京本社内で取材する際、朝日側から動画撮影について依頼したという。

   社員に声を掛ける場面については、「声掛けはその場のアドリブで、事前の仕込みはありません」。あわせて、担当者のこんなコメントも届いた。

「動画撮影を含めた今回の取材を通し、批判や誤りへの指摘に対する、せやろがいおじさんの柔軟で謙虚な姿勢に、情報発信に携わるものとして学ぶことが多いと感じました」

   今回、J-CASTニュースでは、せやろがいおじさんこと、榎森耕助さん(31)=沖縄県在住=にも取材。企画の背景などを聞いた。

   榎森さんは電話取材に対し、「これをオッケーした朝日新聞の方が懐深いというか、ちょっと変態だなと思った」と冗談を交えながら答えた。

「すごく浮いてましたし、社外の人間が本社に入って撮影するのは、くまモン以来みたいで。それくらい珍しいことみたいです」

   赤ふんどしの恰好については「衣装の指定はなかったが、『そりゃその恰好で来ますよね』みたいな、暗黙の了解で合致した」と話していた。

既存メディアが担わない「新しい役割」

   動画の内容は、榎森さんが担当した。

「各部門、取材のお電話されているみなさんがいた。電話とかされていたので、ぼくも大きい声でわめいたりしちゃったら聞こえづらくなると思うし、取引先の方も『なんかすごい音が後ろで流れてるけど大丈夫?』みたいになると思うので、できるだけテイクは重ねられないなと思いました」

   社内では、「(動画を)見てます」などと声を掛けられることがあり、「マスコミの皆さんにも見ていただいているんだ」と感じたそうだ。

   18年9月には、安室奈美恵さんの引退をめぐる加熱報道についての動画を公開した。その背景には、世の中に問題提起するのがマスコミの仕事だと思うが、マスコミ自身の問題を提起する存在はないとの考えから、「マスコミ自身がそういう仕組みをつくっていかないといけない」との持論がある。

「ぼくみたいにネットで発信する人は、テレビ、ラジオ、新聞とかの批判をしていく。(そんな既存メディアがやらない)新しい役割をネットが担えたりするのかなと思う。『ここのテレビ局のことを言ったら仕事もらえなくなるんちゃうやろうか』みたいなことはあるが、どこのテレビ局からも別に仕事もらっていない状態なので(笑)」

   報道関係者から取材依頼をもらうことが多い榎森さんだが、「僕らの業界からしたら、このやり方、俺らの業界にないなというのが結構ある」と驚くこともあるそうだ。

「(マスコミ)業界の当たり前が、世の中の当たり前じゃない」

「例えば『明日の朝刊で出したいので、この前取材したやつ、もう一言もらえますか』みたいなのがあったりする。時事性が大事だからというのもあると思うが、僕らの業界にはまずなかったりする」

   そのうえで、「(僕らの業界では)事前にアポを取って事務所に連絡するが、結構直で(本人に連絡が)来たりとか。『そっちの業界の当たり前が、世の中の当たり前じゃないぞ』としっかり認識したうえで、いろいろやる必要がある」と提言。「数字とるためのスキャンダル、どうでもいいからと思ったりもする」とも求めていた。

   最後に、われわれネットニュースに求めたいことも、聞いてみた。

「数字を稼ぐためのデマとか、見出しで釣って内容が全然違うとか、そういうのはサブい。もちろんネットは黎明期中の黎明期だと思うが、そこら辺のマナーやモラルみたいのが整備されて、しょうもない記事やらんと、その一個上(の段階)として、数字的なものが取れるようなものもやりつつ、『稼げるから』と一辺倒にならずに、『ほんまうちの会社で伝えたいのはこれや』という筋が一本ないと」

(J-CASTニュース編集部 田中美知生)

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