2019年 8月 19日 (月)

アスクル岩田社長に「逆襲の一手」あるか ヤフーは「再任反対」議決権を行使

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   上場企業に対して筆頭株主が「資本の論理」を振りかざして公然と重要な経営方針に変更を強いる事例が相次いでいる。株式を買い増してスポーツ用品大手デサントの経営陣を刷新させた商社大手の伊藤忠商事や、日産自動車が経営の透明性を高めるための新設した委員会の人事に介入したフランス自動車大手ルノーが記憶に新しい。そして、次の主役となったのはIT大手のヤフー。株式の約45%(議決権ベース)を保有する通販大手アスクルに対して、岩田彰一郎社長の退任を要求したのだ。

   アスクルは2019年8月2日に定時株主総会を予定しており、ここで1997年から社長を務める岩田氏の取締役再任案が諮られる。これについてヤフーは7月17日、反対の議決権を行使する方針を表明した。さらにヤフーに次ぐ第2位株主で、アスクル株式の約12%を保有する文具大手プラスもヤフーに同調。24日には両社が議決権を実際に行使したとインターネットで明らかにして、岩田氏は「詰んだ」状態になった。

   一体、ヤフーとアスクルの間に何があったのか。

  • アスクルはどう対応するのか(画像はアスクル公式サイトから)
    アスクルはどう対応するのか(画像はアスクル公式サイトから)

共同で消費者向けの通販サイトを立ち上げ

   アスクルは、もともとプラスの一事業部門が独立して1997年に設立。岩田氏はプラスで事業を担当していて、そのままアスクル社長に就いた。扱い商品をプラスに限らなかったことが成功の基本条件とされる。いずれにせよ、その「創業者」追放ということだから、穏やかではない。

   オフィス向け通販の草分けとして成長してきたアスクルは、物流施設や配送網を全国に築いてきた。そこに目を付けたのがヤフーだ。ポータルサイトを運営しており、そこで入力される検索ワードは、利用者の「欲しいモノ」に該当することが多い。インターネット通販との相性は抜群だが、その分野ではアマゾンや楽天が既に先行していた。そこでヤフーは2012年にアスクルと業務・資本提携契約を結び、共同で消費者向けの通販サイト「LOHACO(ロハコ)」を立ち上げた。ヤフーはゼロから物流網を構築するのではなく、既にインフラを持っていたアスクルと組んで、時間を買った。15年には業務・資本提携契約を改定して、ヤフーが持つアスクルの株式を約45%に引き上げ、連結子会社にした。

   インターネット通販の市場は、BtoB(企業向け)、BtoC(消費者向け)ともに高い成長を続け、同業他社の利益や株価は好調に推移しているが、アスクルの業績は冴えなかった。2019年5月期の決算では、本業のもうけを示す営業利益が業績予想を25%下回る約45億円となり、純利益は約4億円にとどまった。アスクルのBtoB事業の成長は鈍化傾向にあり、ヤフーと組んだBtoC事業は2019年5月期まで6年連続で赤字を垂れ流している。こうした現状に業を煮やしたヤフーは「岩田社長の事業計画の立案力および事業計画の遂行力に疑問を抱く」に至ったのだ。

アスクル側、持ち株の売り渡しを請求する権利の行使も視野

   ヤフーの方針表明に対してアスクル側は反発した。7月18日に記者会見を開いた岩田社長は「経営の独立性が損なわれようとしている」と危機感を示し、ヤフー側が「ロハコ」事業の譲渡をアスクル側に迫っていた経緯を明かした。アスクル側の説明では、両社が結んだ協定にはヤフー側に著しい契約違反があれば、アスクルがヤフーに持ち株の売り渡しを請求する権利が定められており、この権利行使も視野に入れるという。

   だが、ヤフー側には売り渡しに応じる考えはなく、ヤフーとプラスが事前に議決権を行使したので、8月2日の株主総会で岩田社長の取締役再任は否決されることになった。ヤフーは後任の社長を派遣しない意向を示しており、現取締役から後任が選ばれる見通しだが、新体制になったアスクルにヤフーの影響力が高まるのは必至だ。

   強引な手法でアスクルの経営体制に介入したヤフーの背後には、ヤフーを連結子会社化したばかりのソフトバンクの影もちらつき、IT系企業の成長戦略としても引き続き注目を集めそうだ。

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