2020年 11月 24日 (火)

9月入学、現職校長の識者に聞く「現実的」な導入論 教員たちが今「つらい」のは...

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   新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、学校の入学や始業を9月に移行すべきだとの声が勢いを増してきた。これまでも、国外の学校と歩調を合わせるために9月入学を導入すべきだとの声は根強かったが、実際には一部の大学で9月入学のコースが設けられるにとどまっていた。

   9月入学導入論の高まりの背景には、休校で学習の機会が減ったり、オンライン学習への移行の度合いのばらつきで学力に格差が出たりすることへの懸念がある。政府からも前向きな発言が相次ぐが、どういったメリットやデメリットがあるのか。専門家の話も交えながら整理した。

  • 新型コロナウイルスの感染拡大で多くの学校で休校が続いている(写真はイメージ)
    新型コロナウイルスの感染拡大で多くの学校で休校が続いている(写真はイメージ)
  • 新型コロナウイルスの感染拡大で多くの学校で休校が続いている(写真はイメージ)

文科省では「一つの選択肢」としてシミュレーション

   9月入学をめぐっては2020年4月下旬、大阪市内の高校3年生2人が署名サイト「Change.org(チェンジドットオーグ)」で、「日本全ての学校の入学時期を4月から9月へ!」と題した署名を立ち上げている。(1)全国一律で8月末まで休校にすることで9月から平等な教育を受けられる可能性が高い(2)入試等もそれに準ずることで混乱を抑えることができる(3)海外の学校と足並みを揃えることによる留学の推進(4)かけがえのない青春を取り返すことができる、などと訴えて4月30日18時時点で約2万筆の賛同が集まった。

   政府からも前向きな発言が相次ぐ。萩生田光一文部科学相は4月28日の記者会見で、9月入学を「一つの選択肢」としてシミュレーションしていることを明らかにしたのに続いて、4月29日の衆院予算委員会では、国民民主党の玉木雄一郎代表の提案に答える形で、安倍晋三首相も「前広に様々な選択肢を検討していきたい」と応じた。この日行われた全国知事会のオンライン会議でも賛成論が出たが、会議を欠席した愛媛県の中村時広知事は、

「議論を今後進めることに異論はないが、性急な導入には反対」

とする意見書を提出するなど、慎重論もある。

東大は4月入学からの全面移行を検討したが...

   9月入学をめぐっては、東大が2011年、国際化の対応を加速させるために4月入学からの全面的な移行を検討したが、高校卒業後に半年間の空白が生まれることなどが問題になり、見送った経緯がある。

   千葉大教育学部の藤川大祐教授(教育方法学)は、こういった経緯を念頭に

「基本的には秋入学に変えた方がいいだろう、という流れが元々あった。新型コロナの問題で数か月の休校期間が生じてしまったということを踏まえると、この機会に実施するのが望ましいのではないか」

と9月入学への移行に前向きだ。4月入学の場合、入試はインフルエンザが流行して受験生が体調を崩したり、積雪で交通機関が乱れたりしやすい季節に行われる。9月入学に移行した場合、入試は6月頃に行われるとみられ、これもメリットだ。

「体調を崩しにくい時期に変更するのは良い方法。梅雨の季節だが、それで体調を崩す人は余り多くない。6月なら台風もあまり来ない」(藤川氏)

   夏休みには部活の大会も多く行われるが、酷暑が続く最近の状況を踏まえると、時期を移して「春頃に大会優先期間のようなものを設けるべきでは」と提言する。

2020年度の終わりを21年8月末まで延ばす

   新型コロナウイルスの感染収束の時期は見通せず、20年9月に学校が再開できるかは不透明だ。そこで藤川氏は、20年度を21年8月末までの1年5か月に伸ばし、新年度を21年9月から始めるのが望ましいと話す。

「20年9月に新年度を始めるとなると、今の学校の活動は決してゼロではないので『今やっていることは何なんだ』となりかねないし、出席日数のカウントも難しくなる。9月にフルに始められずに、例えば10~11月にずれ込んだとしても、21年夏までに取り戻すと考えれば、そんなに無理ではない。東京五輪・パラリンピックの延期で大幅なスケジュールの組み直しを迫られている局面でもあり、『21年8月までに今年度のスケジュールを入れる』という想定で組み直せば、かなり楽になるのでは」

   藤川氏は千葉大教育学部付属中学校の校長も務めており、現場としても9月入学移行が望ましいとの立場だ。

「つらいのは、学校再開に合わせて努力しても、それがすぐにリセットされてしまうこと。今は5月末まで休校することにしているが、それもどうなるか分からない。教員としては、様々なことに配慮して準備しても、それがムダになってしまうことが続いている。この状況を考えると、『21年夏までかけて、じっくりやります』と決まっていた方が、ずっとやりやすい」

   9月入学移行の場合、会計年度と学事年度がずれたり、3月卒業を前提にした公務員試験をはじめとする資格試験のタイミングとずれたりする問題もあるが、

「今から1~2か月で全部決めるのは現実的ではないので、まずは『今年度は延びる』ことを合意して、21年夏までに各組織で必要な対応を協議していただくことが必要なのでは」

として、時間をかけて解決することを訴えている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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