2024年 4月 16日 (火)

10万円給付金「希望しない」誤記入を防げ―自治体の工夫と努力 「チェック欄削除」「『辞退』手書きで」...

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   新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の緊急経済対策として実施される1人10万円の特別定額給付金について、誤って受給を断ってしまう懸念が指摘されている。総務省がつくった見本の申請書に「受給を希望しない人」用の「チェック欄」があり、勘違いするおそれがあるためだ。実際に給付事務を行う自治体では、分かりやすさを重視して書式を工夫しているところもある。

   山形市では、見本に設けられていた「チェック欄」をそもそもなくした。福島市では、不要な場合に「辞退」と記入する形式に。須坂市では「希望する」と「不要」の2つの欄を設け、どちらかにチェックを入れるようにしている。

  • 総務省がつくった特別定額給付金申請書の見本様式1。給付対象者の項目の右側に「受給を希望しない」のチェック欄がある(赤い円は編集部による強調)
    総務省がつくった特別定額給付金申請書の見本様式1。給付対象者の項目の右側に「受給を希望しない」のチェック欄がある(赤い円は編集部による強調)
  • 山形市の申請書の記入例。「希望しない」のチェック欄はない
    山形市の申請書の記入例。「希望しない」のチェック欄はない
  • 総務省がつくった特別定額給付金申請書の見本様式1。給付対象者の項目の右側に「受給を希望しない」のチェック欄がある(赤い円は編集部による強調)
  • 山形市の申請書の記入例。「希望しない」のチェック欄はない

総務省「必ずしも世帯全員が受給しないことがあり得る」と欄を作るが...

   特別定額給付金は、2020年4月27日時点で住民基本台帳に記録があれば誰でも受給できる。「郵送申請」の場合、申請書に記入し、本人確認書類や口座確認書類を添える。

   申請書については総務省が「見本」として様式を2つ示している。申請は世帯単位で行うため、給付対象者(世帯員)を一覧で書く項目がある。懸念されているのは「様式1」にある、各対象者の受給意思を確認するチェック欄。「給付金の受給を希望されない方はチェック欄(□)に×印を御記入ください」と書かれているが、実際は希望している人が誤ってチェックを入れてしまわないかと指摘があがっている。

   河野太郎防衛相も5月14日、ツイッターで「定額給付金の申請書の『希望しない』に勘違いでチェックをつける人が多いようです。間違いないように気をつけましょう」と投稿。10万件以上の「いいね」がつくなど注目された。

   総務省特別定額給付金室の担当者は21日、J-CASTニュースの取材に、見本の中で「希望しない」のチェック欄を設けた理由について「必ずしも世帯全員が受給しないことがあり得ると思われるためです」と話した。単身世帯で受給を希望しない人の場合、申請書を出さなければ済む。しかし、2人以上の世帯では希望する人と希望しない人が同居している場合が考えられる。これに対応するため、見本に同チェック欄をつくったという。

   実際に申請を受け付け、給付事務にあたるのは自治体(市区町村)になる。申請書の様式も総務省の見本をそのまま踏襲する必要はなく、自治体ごとに用意することになる。「希望しない」のチェック欄についても、受給の意思を明確にするために工夫している自治体がある。

「市民全員に給付金を受け取っていただきたい」

   山形市では「希望しない」のチェック欄そのものをなくした。理由について佐藤孝弘市長は18日、フェイスブック上で「チェック欄にチェックされて送られてきた場合、市役所からお電話して、本当にその意思なのか確認する必要が生じる。これは、ただでさえ膨大な事務に追われている状況に拍車をかけてしまい、本末転倒になってしまう」「万が一、家族の一部だけ受給したいという方(ほとんどおられないと思いますが)がいれば、申請書にその旨書き込んでお送りいただくか、電話で市役所にお問い合わせいただけばよい」といった説明をしている。

   山形市特別定額給付金室の平吹史成室長は21日、取材に対し、「『希望しない』のチェック欄は間違いが起こりやすいと思われます。加えて、市長は『市民全員に給付金を受け取っていただきたい』と考えています。そして地元で消費してもらいたいということと、もし辞退したい場合も、一度受け取ったうえで寄付などに有効活用していただきたいということがあります」と話した。

   それでも世帯(家族)で1人だけ受給しないなどの場合は、「お電話いただければ『(取り消し)線を引いてください』といった対応もできます」と平吹室長。「辞退の意思をよりはっきりと示す方法があると思います」と話している。

   福島市では、給付を希望しない人が「辞退」と手書きで記入する欄を設けている。同市生活支援係の担当者は取材に「チェック欄ですと、確認の意味でチェックをつけてしまう人もいるだろうと思います。本人の明確な意思が示せるよう、直接『辞退』と記入する形にしました」と話す。

   公的な給付金については14年にも、5%から8%への消費税率引き上げにともない、低所得者向けに「臨時福祉給付金」が支給された。「今回の特別定額給付金の事務担当の中には、以前の臨時福祉給付金などを担当していた職員もいます。その時の経験から、申請様式で紛らわしい部分は極力なくそうという意見があがり、できるだけ分かりやすいものにしました」(福島市担当者)という。

市民から誤記入について問い合わせも

   長野県須坂市では、特別定額給付金を「希望する」「不要」という2つのチェック欄を設け、どちらか1つにチェックを入れる形にしている。総務省がつくった見本の「様式2」がこれと同様だ。なお「様式2」は、スキャンすることで手書き文字などをデジタルデータに変換できるOCR(光学的文字認識)に対応したものとして示されている。

   須坂市の総務課特別定額給付金担当者は「誤ってチェックを入れることを懸念し、OCR用として出されていた『様式2』を使わせていただきました。『希望する/希望しない』という書き方だとまた紛らわしいところもあるので、そこは考えられていると思います」と取材に話す。

   それでも、このチェック誤記入の懸念が浮上し、報道されるようになると、市民からの問い合わせが増えたという。

「特に申請書を提出済みの方は、申請書のコピーをとって手元に置いておけばご自分で確認できますが、コピーせずご郵送いただいた場合はどう記入したか確認できません。ニュースで誤記入の問題を見て、自分はどうだったかと不安になるようです。できるだけ記載間違いがないように、あったとしてもすぐに対応できるようにしています」(須坂市担当者)

   10万円給付申請の受付開始日は自治体ごとに異なるが、申請期限は郵送申請方式の受付開始日から3か月以内となっている。「郵送申請」のほか、マイナンバーカードがあれば「オンライン申請」もできるが、後者については中止を決めた自治体も出てきている。詳しくは市区町村のウェブサイトや、総務省の特別定額給付金特設サイトに説明がある。

(J-CASTニュース編集部 青木正典)

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