2024年 4月 25日 (木)

「次亜塩素酸水系」5製品、コロナ不活化効果は「不十分」 北里大研究グループが検証試験

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   北里大学大村智記念研究所の研究グループは、アルコール系消毒剤やハンドソープなど市販製品の新型コロナウイルス不活化検証試験をおこない、結果を公表した。

   試験では、厚生労働省が新型コロナウイルス対策として拭き掃除に推奨する塩素濃度をクリアした次亜塩素酸水系の製品も対象となったが、総じて結果は振るわなかったとしている。

  • 次亜塩素酸水系5製品はコロナ消毒に「不十分」という研究結果(画像はイメージ)
    次亜塩素酸水系5製品はコロナ消毒に「不十分」という研究結果(画像はイメージ)
  • 市販製品の新型コロナウイルス不活性効果一覧(北里大ニュースリリースより)
    市販製品の新型コロナウイルス不活性効果一覧(北里大ニュースリリースより)
  • 次亜塩素酸水系5製品はコロナ消毒に「不十分」という研究結果(画像はイメージ)
  • 市販製品の新型コロナウイルス不活性効果一覧(北里大ニュースリリースより)

アルコール系消毒剤、ハンドソープなどで「完全消毒」

   試験は北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学I研究室の戸高玲子研究員、芳賀慧特任助教、澤田成史助教、片山和彦教授のグループによって実施。2020年9月1日に北里大学の公式サイトで研究結果を要約したプレスリリースが公表され、9日発売の雑誌「感染制御と予防衛生 2020年9月号」(メディカルレビュー社)では詳細な試験手法・結果が掲載されている。

   リリースによると、試験では市販のアルコール系消毒剤、ハンドソープ、台所洗剤、次亜塩素酸水などの製品による新型コロナウイルスの消毒効果を検証。その結果、市販のアルコール系消毒剤はアルコール濃度 50%以上の製品、ハンドソープ系、台所洗剤類、お掃除・ふき取り系の製品では各製品の使用方法に従って使用すれば、試験に用いた3万個の新型コロナウイルスを完全に消毒することが可能だったとした。

   具体的に見ると、アルコール系消毒剤は「ビオレu手指の消毒液」(花王)など11製品、ハンドソープ類では「ミューズ泡ハンドソープ」(Reckitt Benckiser)など5製品が消毒効果の総合判定で「完全消毒」という結果になった。また、台所洗剤でも「防菌JOYコンパクト」(P&G)、「ママレモン」(ライオン)、「マイフレッシュ」(ロケット石鹸)など18製品、お掃除・拭き取り系では8製品が「完全消毒」となった。

次亜塩素酸水は全メーカーが「商品名・社名非公表」

   一方で、結果が振るわなかったのが次亜塩素酸水系の製品だ。厚労省公式サイトによれば、次亜塩素酸水は「次亜塩素酸」を主成分とする酸性の溶液で、酸化作用によって新型コロナウイルスを破壊・無毒化するものだとしている。ハイターなど塩素系漂白剤に代表される、アルカリ性の「次亜塩素酸ナトリウム」とは別物であり、同省は「混同しないように」と注意を呼びかけている。

   次亜塩素酸水系製品では「精製次亜塩素酸ナトリウム(200ppm)」「弱酸性次亜塩素酸水(100ppm以上)」「次亜塩素酸水(200ppm)」「弱アルカリ性次亜塩素酸ナトリウム(200ppm)」「次亜塩素酸水(250ppm)」の5製品の原液を対象に実験(ppmは百万分率の塩素濃度)。しかし、製品の劣化がないことを確認してから試験を実施したものの、新型コロナウイルスの消毒効果はいずれも総合判定で「不十分」という結果になった。

   また、アルコール系消毒剤やハンドソープなどでは多くのメーカーが商品名・社名を公表していたのに対し、次亜塩素酸水系製品では5社全てが社名・商品名非公表だった。うち4社は「社名商品名非公開希望」としていた。残り1社の「精製次亜塩素酸ナトリウム(200ppm)」のメーカーは商品名・社名の公開を希望していたものの、研究グループが「同業他社とのバランスを考慮し、匿名とした」としている。

論文はあくまで「科学的検証結果の報告」

   次亜塩素酸水の効果について、厚労省は公式サイト上で、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の検証を元に「一定濃度の『次亜塩素酸水』が新型コロナウイルスの感染力を一定程度減弱させることが確認されています」と説明している。これを根拠に、新型コロナウイルス対策の「拭き掃除」として、有効塩素濃度80ppm以上の次亜塩素酸水をたっぷり使って、モノの表面をヒタヒタに濡らし、少し時間を置いて拭き取るよう推奨している。

   一方、今回の北里大研究グループの試験では濃度が最低100ppm以上、最高250ppm以上の次亜塩素酸水が使われた。それにもかかわらず、消毒効果は不十分という結果になった。

   今回の試験に携わった北里大学大村智記念研究所の片山和彦教授は、9月7日のJ-CASTニュースの取材に対し、こう強調した。

「私どもの論文は、実験検証の結果を報告しています。つまり、科学的検証結果の報告です。国による呼びかけを否定する、肯定するなどの目的ではなく、実験結果を報告しているのです」

   ただ、片山教授自身が国立感染症研究所に勤務していた際、複数のガイドライン策定にかかわってきた経験として、以下のように語っている。

「この結果だけではなく、複数の実験結果の報告を受け、ガイドラインを見直すか否かは、厚労省や、経済産業省が話し合いの上に決めていきます。ガイドラインは、その時々の論文報告、WHO(世界保健機関)のガイドライン、海外のCDC(アメリカ疾病予防管理センター)、FDA(アメリカ食品医薬品局)にあたる機関の報告やガイドラインを参考に時々刻々と変化していきます」
「私達の報告に加え、複数の検証結果が出揃い、客観的評価ができるようになった時点で、現行のガイドラインを改定する必要が生じた場合、科学的検証に基づいて、新たなガイドラインを策定するでしょう」

「空間噴霧」には厚労省も慎重な姿勢

   なお、厚労省は次亜塩素酸水の「空間噴霧」に関しては、公式サイトで以下のような見解を示している。

「『次亜塩素酸水』の空間噴霧で、付着ウイルスや空気中の浮遊ウイルスを除去できるかは、メーカー等が工夫を凝らして試験をしていますが、国際的に評価方法は確立されていません」
「安全面については、メーカーにおいて一定の動物実験などが行われているようです。ただ、消毒効果を有する濃度の次亜塩素酸水を吸いこむことは、推奨できません。空間噴霧は無人の時間帯に行うなど、人が吸入しないような注意が必要です」
「なお、ウイルスを無毒化することを効能・効果として明示とする場合、医薬品・医薬部外品の承認が必要です。現時点で、『空間噴霧用の消毒薬』として承認が得られた次亜塩素酸水はありません」
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