2021年 5月 19日 (水)

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 
JAL・ANA巨額赤字でも「統合」のあり得なさ 異なる企業文化、2社許容できる市場規模

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   JAL(日本航空)とANA(全日本空輸)が、過去最大の経営苦境に陥っている。新型コロナウイルスの影響をもろに受けているのだ。

   2020年度について、JALとANAのそれぞれの国際線旅客数は前年比▲96.9%、▲95.9%、国内線旅客数も前年比▲66.7%、▲71.5%と悲惨な状況だ。その結果、それぞれの純損益は、▲3000億円、▲5100億円と過去最大の赤字になると予想されている。

  • 統合話まででたJALとANA
    統合話まででたJALとANA
  • 統合話まででたJALとANA

経営論から見れば統合はあり得ない

   こうした状況で、両社は、ホテルや家電量販店・スーパーのほか地方自治体・神社へ社員を出向させ、その人件費を一時的に出向先が負担し、事実上支援を受けている。

   JALとANAの窮状から、2010年に破綻したJALへの公的支援から連想し、両社が倒産する場合、再度公的資金の注入や両社の統合話まででている。この統合話の裏には、韓国では2社統合がなされていること、欧州でも寡占化が見られていることから、日本の航空会社も国際競争力強化を図る必要があるともいわれている。

   筆者は、ただちに両社が倒産という最悪の事態にはならないと思っている。というのは、2019年度のバランスシートをみると、純資産でJALは1兆2000億円程度うち利益剰余金8000億円程度、ANAは1兆1000億円程度うち利益剰余金5500億円程度なので、まだ余裕があるからだ。

   経営論の立場から見れば、JALとANAの統合はあり得ない。JALはもともと政府主導の半官半民会社としてスタートし、1987年に完全民営化した。一方、ANAは、民間会社としてスタートし、JALを追い越すまでになった。

   両社は出自が水と油ほど違う会社であり、企業文化がまったく異なるので、経営統合はうまく行かないといわれている。

産業組織論から見れば航空会社を2社許容できる

   経済学の産業組織論からみれば、企業文化はどうでもよく、経済規模から見て航空会社は何社まで許容できるかとなる。大雑把な分析であるが、日米欧でJALとANAクラス以上の主要航空会社数をみると、それぞれ2社、7社、6社である。日米欧のGDPがそれぞれ5兆ドル、21兆ドル、15兆ドルであることから見れば、2.5~3兆ドル程度で1社許容となる。この観点からみれば、2兆ドルの韓国で2社を統合するのは、市場規模に見合っていて合理的だ。また、欧州で航空会社への公的資金注入が行われても統合がないのも納得だ。

   こうした産業組織論の観点から見れば、日本のGDPでは航空会社を2社許容できるので、JALとANAを統合する必要はないし、もし統合するとすれば、人為的な独占を作ることになって独禁法にも抵触しかねない。

   もっとも、この立場では、非情な先行きになることもある。経営論から、社風の違うJALとANAは合併すべきではないとされるが、産業組織論からは、もし日本の市場規模が小さくなり万が一にもGDPが半減したらどうなるか。その場合には、JALとANAは社風が違うなどと悠長なことは言っておられずに、生き残るためには統合が必要になる。

   コロナ禍で経営が芳しくない会社が今後出てくるだろうが、再編話もあるだろうが、それらによく注意したい。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。


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