2024年 4月 19日 (金)

民放AMラジオ局、大半がFM転換目指すも3局「見送り」 メリット多数も「ジレンマ」に直面

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パブコメで「カバー率低下やむなし」に賛同相次ぐ

   多くのAM局が懸念するのが、実証実験案に示されたカバーエリアの問題だ。AMの電波はFMよりも届く範囲が広い。そのため、AM並みのカバーエリアをFMで維持しようとすると多数の中継局を建設しなければならず、設備投資の負担が重くなる。

   実証実験案には56の放送事業者からパブリックコメントが寄せられ、そのうち16事業者が「『ある程度世帯・エリアカバー率が低下することはやむを得ない』との考え方に賛同」し、29事業者が「世帯カバー率について、地域ごとの地形的事情に応じた柔軟な対応を要望」した。例えば文化放送は、

「AM電波とFM 電波の伝搬特性の違いから、AM放送のエリアの全てをFM放送でカバーするためには相当数の中継局の置局が必要になるものと考えられ、現状のAMラジオ事業者の経営状態に鑑みると、現実的に厳しい状況です」

と訴えている。

   北海道と秋田の3社が、現時点で「FM局になる」宣言への参加を見送っているのは、この「中継局」問題が関係している。特に北海道はカバーエリアが広大でハードルが高い。北海道のFM専業局、エフエム北海道(AIR-G'、札幌市)は、札幌市の手稲山の親局以外に、旭川や函館など道内10か所に中継局を設置して約90%の世帯カバー率を実現している。それでも、HBCとSTVがAMの中継局を置いている稚内や根室はカバーできていない。両社が現時点で運用しているFMの送信所は手稲山のみ。仮にFM転換しようとすればAIR-G'並みの設備投資が求められることになる上、それでもAMと比べてサービスエリアが狭くなる可能性が高い。両社は札幌以外にFM送信所を設置する計画について「現時点では全く未定」と口をそろえる。

   秋田のABSは、総務省が掲げる世帯カバー率90%に向けた「ロードマップが描けない」と話し、設備投資のための経営体力の問題を挙げている。現時点でABSが運用するFM局は、秋田市の大森山公園にある親局のみ。28年までにカバー率を90%に上げられる程度に中継局を設置できる見通しが立たないため、「(今回の宣言に)参加しないという経営判断」をしたという。

   さらに、今回の宣言に参加することになると、他局と協力しながらワイドFMに対応した端末の普及活動にも参加することになる。だが、ABSのリスナーからすれば「対応端末を宣伝しておきながら、FM化はしないのか」といった事態になりかねない。こういった事情も、参加見送りの判断を後押しした。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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