2024年 4月 20日 (土)

三菱自動車×満寿屋商店「我慢しないで、楽しまないと!」 異業種対談で見えた「環境にやさしく」を続けるヒケツ

提供:三菱自動車

「企業」と「自然」の共存には、何が必要?

   百瀬さんは1987年に三菱自動車に入社。2007年にアウトランダーPHEVの先行開発、2008年からi-MiEVの量産開発と、電動車両の開発に携わるようになり、自動車が環境に与える影響を強く意識するようになったという。

   一方、満寿屋商店もCO2やフードロス削減のための取り組みを積極的に行っている。それぞれの視点から、環境問題に対する企業の在り方を伺った。

満寿屋商店の杉山さん。フードロス削減のため、閉店後に売れ残ったパンを集めて夜間販売をしているという
満寿屋商店の杉山さん。フードロス削減のため、閉店後に売れ残ったパンを集めて夜間販売をしているという(一部加工)

――環境問題に対し、具体的にどのような取り組みを行ってきましたか。

杉山:弊社で最初に試みたのは、木質バイオマスの「ペレット」(木くずなどに圧力を加えて固めた固形燃料)を使用することです。ペレットは完全燃焼すると煙が出ないし、熱量がコントロールできるため、ベーカリーの工場の中でも使えるのではとなりました。薪のピザ窯だと、ものすごく大きな排気設備が必要になりますが、ペレットだとほとんどそれが必要ないんですよね。ちょうど十勝の足寄町でペレット開発を積極的に進めていたので、ペレットを使用した日本初の業務用オーブンを一緒に開発しました。
百瀬:ペレットを燃やしたCO2は、もともと大気から吸ったものなので、カーボンニュートラルなんですよね。
杉山:しかもペレットの主な原料は、森林の間伐材です。森林を管理するために間伐するので林業ともマッチしています。
百瀬:里山も守れるし、すごいですね。
僕が大事だと思うのは、楽しく続けられる仕組みを作ることです。我慢して環境にやさしくするのは、長続きしないんですよ。それで結局やめてしまうと、結果的に環境にやさしくない。電気自動車も、我慢する不便が楽しくていいって人もいますけれど、本当は我慢しない便利な電気自動車にしなくてはいけない。将来も子どもたちが、おいしいパンを食べられたり、きれいな青空の下で遊べたりする......そういう世界を後世に残していくことが大事なのです。そのためには、いかに我慢しないで、環境にやさしくできるか。これは、僕が考え続けているテーマです。
電気自動車の場合、まずは価格を安くすること。それと、面倒な充電を簡単にする。最後に、1回の充電で長い距離を走れる。この3点をクリアしないと、消費者には届かないと考えています。

――「我慢しないで、環境にやさしく」がキーワードになってきますね。

百瀬:その通りですね。今、当社で推進しているのが、資源の有効活用です。使用済みバッテリーに太陽光発電の電力をためる蓄電システムを実験中です。電動車両で使っているバッテリーが役割を終えたとき、バッテリーとしては7~8割がまだ使える状態です。アウトランダーPHEVのバッテリーの総電力量は約14キロワットアワー(※注1)、7割になっても約10キロワットアワー。一般家庭の消費電力が1日あたり約10キロワットアワーと想定すると、ほぼ1日分の電力が貯められる計算になります。
また、バッテリーを車に積んだ状態で有効活用する方法も考えています。電動車両から電力を取り出すV2H機器を使って家に給電し、太陽光パネルで発電した電力を車に戻す「電動DRIVE HOUSE(ドライブハウス)」は2019年に一部エリアで試験販売を実施しました(現在は試験販売を終了)。

※注1:三菱自動車公式サイトより。アウトランダーPHEVの総電力量は13.8キロワットアワー。

「電動DRIVE HOUSE(ドライブハウス)」の流れ(三菱自動車公式サイトより)
「電動DRIVE HOUSE(ドライブハウス)」の流れ(三菱自動車公式サイトより)
杉山:大変参考になります。私は今後、地産地消のテーマパークを作り、電力供給が止まってもパンが作れる工房をそこに設置したいと考えています。2018年9月に発生した北海道胆振(いぶり)東部地震の際に、コンビニやスーパーの物流が止まってパン屋にお客さんが殺到し、店を閉めざるを得なかったということがあったのがきっかけです。自家発電に中古バッテリーが使えるかもしれないと、今ふと思いました。
百瀬:電力は、深刻な問題ですよね、普段は当たり前のようにあると思っているから。僕らもさっきのシステムを使えば家単位の停電は防げますが、システムのない家は防げません。社内でよく話しているのは、近隣のディーラーを基地にして、冷たい水や温かいシャワーなど最低限のライフラインを提供できたらないいね、と。
それに近い取り組みとしては、太陽光発電による電動車両への充電と、電動車両から店舗への電力供給を可能にした「電動 DRIVE STATION(ドライブステーション)」の店舗展開を、2016年から始めています。
また、災害時にPHEVを被災地に派遣する「DENDOコミュニティサポートプログラム(災害時協力協定)」を125自治体と締結し(2021年7月20日時点)、気候変動に対応した取り組みにも力を入れています。関連する話として、過去には、台風の影響により停電が続いていた千葉県の特別養護老人ホームで役立ててもらおうと、「アウトランダーPHEV」を派遣したこともありました(記事はこちら)。

――災害時に早急な復旧が求められるものの一つが電力ですよね。「企業」と「自然」の共存に向けて、どんなことが必要だと思いますか。

百瀬:やっぱり企業は経済活動を主にして考えているので、非常に短い期間で何かを得る活動が多いように感じます。しかし、今後はもっと長期的な目を持って活動していく必要があると思います。
最近は、環境、社会、ガバナンスの要素を考慮したESG投資が盛んになってきて、個人的には嬉しく感じています。そういうことをちゃんと考えている会社が正当に評価されて、投資条件がよくなって、会社として存続できるっていうのはすごくいいなと思います。

――企業の取り組みを後押しする、周囲の環境も大事ですよね。

百瀬:まだ十分ではありませんが、電動車両の充電スポットも最近は増えてきました。政府が発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、2030年までに急速充電設備を3万基設置することになっています。今は全国で約7700基(※注2)なので、実現すれば3~4倍くらいになりますね。

※注2:2020年5月時点。充電方式はEV用急速充電規格の国際標準であるCHAdeMO(チャデモ)。

杉山:電動車両の普及が進みそうですね。
私は企業と自然の共存のために、身の回りにあるものの大切さを感じることが必要だと思います。百瀬さんもおっしゃっていますが、「楽しい」や「おいしい」につながることを実感する――そういう仕組みを作ることですね。例えば、地元の食材を使ったパンを食べることは、地域とつながることです。それが血や肉になって、心になっていく。それを実感すると、すごく豊かになります。今の日本社会ではその機会がなかなかない。パンを通じて、地域の豊かさやつながりを意識できたらと思います。

――「北海道小麦キャンプ2021 in 十勝」でアウトランダーPHEVを使用したのも、企業と自然の共存ですよね。

杉山:以前、三菱自動車のブランド発信拠点「MI-Garden GINZA(マイガーデンギンザ)」(現在は閉店)を訪問した時に、アウトランダーPHEVの存在を知りました。自動車から電力を取り出してバーベキューとかできるのが、すごく新鮮だったんですよね。
そして今年の「北海道小麦キャンプ」がリモート開催になり、イベントの様子をライブ配信することになったときに、その電力をどうしようと。試しに発電機を使ってみたんですけど、音がうるさいんですよ。
百瀬:ダカダカダカダカってね。
杉山:だから、なるべく音がないようにしたいと考えたら、「たしか三菱自動車に、電力を確保できる車がある」と思い出してPHEVを使用しました。使ってみたら、音が静かで、バッテリーも持続していましたね。北海道小麦キャンプ自体が、十勝の風土や自然環境を大事にした食品づくりを全国にアピールするイベントなので、目的にも適していたと思います。
姉妹サイト
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック