2024年 4月 19日 (金)

約8000話「サザエさん」アニメ全タイトル集めたファンの奮闘 「普遍的良さがある」...調べ上げた原動力

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   アニメ「サザエさん」は1969年の放送開始以来、その歴史は52年以上に及ぶが、すべてのストーリーのタイトルを調べ上げてきた人がいた。「サザエさんサブタイトル保存プロジェクト」として、5年にわたってコツコツ続けてきた取り組みのおかげで全話が網羅できるようになった。少年時代からのサザエさん愛を貫いたファンの奮闘と思いを聞いた。

  • サザエさん全話のタイトルを調べ、冊子にしてきた(提供:磯野家のお茶の間さん、以下同)
    サザエさん全話のタイトルを調べ、冊子にしてきた(提供:磯野家のお茶の間さん、以下同)
  • 第1話から記録してきた蓄積
    第1話から記録してきた蓄積
  • サザエさん全話のタイトルを調べ、冊子にしてきた(提供:磯野家のお茶の間さん、以下同)
  • 第1話から記録してきた蓄積

「天気予報のように当たり前な存在」

   「サザエさんサブタイトル保存プロジェクト」を続けてきたのはツイッターアカウント名「磯野家のお茶の間」(以下、お茶の間)さん。もちろん自身もサザエさんファンだが、1969年10月5日放送の第1回から現在までの放送話タイトルを記録し続け、冊子に記してきた。

「サザエさんは長寿アニメですが、その割にはソフト化や配信の機会も少なく詳しい資料に恵まれていませんでした。各話のタイトルも作品の魅力の一つだなと思っているのですが、全話を網羅する資料がない。これをすべて記録することなんて誰もやっていないかもししれない、なら自分がやればいいじゃないか、全部まとめてリストにして発信してみたら面白そうだと思って始めました」

   2022年で55歳、波平の年齢(54歳)を越えたというお茶の間さんは、子どもの頃「鍵っ子」で磯野家のような大家族への憧れもあったと話す。

「一人っ子できょうだいもいない子ども時代だったので、大家族って楽しそうだなって憧れがあったのと、『サザエさん』は当時から天気予報のように当たり前な存在だったので、当たり前すぎてかえって研究してみる人がなかなかいない雰囲気だったと思います」(お茶の間さん、以下同)

   初放送から毎週日曜日18時30分からの放送で一貫している「サザエさん」は、お茶の間さんによると放送回数は22年4月3日までで2645回、話数は8000本近くに及ぶ。アニメではタイトル画面で各話に番号が振られていて、4月3日の第3話「悩む門には福来る」の番号は「No.8394」だが、話数とは一致していないとのこと。

「スぺシャル回では3話以上放送されていますし、途中で番号が飛んでいたり、製作過程でお蔵入りになった回があったりしますので、実際の話数は8000話弱になります」

タイトル登場回数1位のキャラクターは?

   複数の脚本家が参加している「サザエさん」は、タイトルの付け方にも脚本家ごとにクセがあり、見抜けるようになったという。とりわけ放送初期からの大ベテラン、雪室俊一さんと城山昇さんはそれぞれに個性がある。

「タイトルにイクラちゃんの名前があるとだいたい雪室さんです。アニメ化にあたってのイクラちゃんの名付け親なだけあります。また花沢さんが活躍する回も雪室さんが担当することが多いんです。タイトルの付け方が意表を突いていて『中島くんは美容院』のようにえっ?と思う意外な言葉の組み合わせを使うのも雪室さんの傾向ですね」

   城山さんの場合は「王道」だという。

「城山さんはずっと『サザエさん』のタイトルを考案してきたことがにじみでている感じです。例えば『姉さんてのひら返し!』のようにさらっと簡潔にキャラクターの名前を入れたり、人物名を一切いれないで『いい話だな』と思わせる回があるのも特徴です」

   キャラクターごとにタイトルの登場回数も集計している。お茶の間さんによると1位はカツオ、次にタラオ、3位にワカメと続く。以下ベスト10はマスオ、イクラ、波平、サザエ、タマ、ノリスケ、花沢さんの順になるそうだ。

   ただし波平を「父さん」としている回などは含まないため、別の基準で統計を取ればまた違う傾向が見えてくるかもしれないと話すお茶の間さん。「タイトルに名前が出てくるということはその話の主人公であることが多いですが、時には本当に主人公的な人物は別なこともあります。各話の本当の主人公が誰か、なども調べようとすると、やればやるほど深くなりますね」とも。

アニメ誌・テレビ誌を手がかりに

   8000話近くのタイトルをどうやって記録してきたか。近年のものや自力で録画済みのものは確認も容易だが、そうでなければ過去の雑誌や文献、関係者のつてをたどるしかない。

「古いものはVHSで再生して確認することになります。他にもアニメ誌の『アニメージュ』が一時期、放送済のアニメ番組の情報を掲載していました。そのため、過去のアニメージュを所蔵している図書館に日参し、近場に所蔵されていない分を探して遠方の図書館まで夜行バスで遠征したこともあります。
ただ、アニメージュにも掲載されていない時期のものがあります。そうなれば過去の新聞のラテ欄を確認しますし、初回放送分の記録がなくても再放送の方で新聞に情報が載っていたことがあります」

   気の遠くなるような作業だが、中には廃刊になったテレビ雑誌にしか情報がないこともある。

「すでに廃刊になってしまった『TVぴあ』や小学館が発行していた『テレパル』を探して東京の大宅壮一文庫まで行ったこともあります。他にも、運よく知り合った脚本家の方からご縁でいただいた資料なども活用してきました」

   実は最初期よりも1970年代後半から80年代前半の放送回の方が資料が少なく苦労したそうだ。

「初期の回は現在オンデマンド配信で確認できるものも多いですが、この時期のものは情報が載っている雑誌が少なくて。『サザエさん』は昔はアニメファンからあまり注目されておらず、アニメの中でも地味な扱いだったんです」

永井一郎さんから聞いたこと

   様々な手を駆使して、ようやく全話のタイトルが揃った。ツイッターで活動に関する投稿が拡散されたことで情報提供者も現れ、1986年4月6日初放送の「おしゃれいろいろ」をもって全てのタイトルが判明したことを、22年4月3日にツイッターで報告した。「北海道の方が調べて下さった地方紙の情報と、アニメ史研究家の方がワザワザお持ちのビデオを調べ報告して下さった2点から、最後のタイトルが判明しました」とのことだ。

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「おしゃれいろいろ」ですべてのタイトルが揃った
「毎回のジャンケンを記録したり、湯沸かし器の登場シーンを記録したりと、今の『サザエさん』にはいろいろなマニアの人がいます。これは夢ですけど...リストが完成したらサザエさんにまつわる歴史もまとめて同人誌にして国会図書館にも置いていただいたりとか。自分で情報を集めているだけでは意味がないので、発信してサザエさんの面白さを知ってくれる人が増えればいいですね」

   お茶の間さんが少年時代から研究し続けてきた「サザエさん」だが、この遠大な取り組みの原動力は何だったのか。

「もう奥さんや子どもよりも長く付き合ってきたような作品ですから...長い歴史があるだけでなく、時代を超えた普遍的な良さがあるのかな、と。
昔はおおらかな時代だったので声優さんやスタッフの方と知り合う機会もありました。私が覚えている言葉に、波平さん役の故・永井一郎さんが言っていた『サザエさんは空気みたいなもので、皆当たり前のもののように思っているけど、いざなくなったら「えっ!?」てなるんですよ』というものがあります。
私もそのような気持ちでファンのコミュニティがなかった時代から『当たり前に見てきた作品だけどなくなったら淋しいし、良さを伝えていきたいな』と考えて活動してきたのかな、と。それだけの面白さがある偉大な作品だなと思っています」

(J-CASTニュース編集部 大宮 高史)

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