2024年 4月 19日 (金)

選挙の「マークシート式投票」なぜ普及しないのか 「自書式」やめられない3つの理由

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   立憲民主党が2021年秋の衆院選に続いて22年夏の参院選も「民主党」を比例代表の略称として総務省に届け出る方針を決め、また数百万票単位の案分票が出る見通しになった。立憲・泉健太代表は22年4月15日の記者会見で、「民主党」票が出る理由のひとつとして「あえて『国民民主、立憲民主一つでやってほしい』というメッセージを込めて書いた」可能性を挙げた。

   逆の見方をすれば、候補者や政党名を投票用紙に記入する「自書式」ではなく、候補者や政党名に○をつける「記号式」であれば、そもそも「略称」を設ける必要はないようにも見える。マークシートや電子投票も「記号式」の一種だ。そうであれば、今回のような「民主党」票をめぐる問題は起きないことになるが、なぜ「記号式」は広まらないのか。

  • 国政選挙では「自書式」が導入されている(写真はイメージ)
    国政選挙では「自書式」が導入されている(写真はイメージ)
  • 国政選挙では「自書式」が導入されている(写真はイメージ)

「略称」規定は1982年の「拘束名簿式比例代表制」導入時から

   公職選挙法に政党の「略称」に関する規定ができたのは1982年の改正だ。この改正では、個人名を書いて投票する「全国区制」が参院で廃止され、代わりに政党名を書いて投票し、事前に政党が届け出た名簿から当選者が決まる「拘束名簿式比例代表制」が導入された。政党の正式名称を書く煩雑さを減らすための略称導入だとみられ、当時の国会審議(1982年8月6日、衆院公職選挙法改正に関する調査特別委員会)では、略称について「トレードマークあるいは愛称、そういうものを含むのか」と尋ねる議員の質問に、参院法制局の担当者が「含まないのではなかろうかと存じます」と答えている。

   一方、記号式の歴史は比較的古い。62年と70年の公職選挙法改正で、地方自治体が条例で定めれば、首長選挙や議会議員選挙を記号式で行うことができるようになった。最初に記号式で行われたのは62年11月に投開票された栃木県鹿沼市長選だ。

   国政選挙でも、94年に衆院に現在の小選挙区比例代表並立制が導入された際の公選法改正で、記号式の投票が可能になった。ただ、一度も実際の投票は行われないまま、翌95年に議員立法で自書式に戻された。提出者は自民党の瓦力氏ら26人。自民党議員が中心だが、当時与党だった「新党さきがけ」に所属していた枝野幸男氏や前原誠司氏らも名を連ねた。

立候補者が多い時の投票用紙のサイズは...?

   当時の提案理由では、(1)有権者が投票用紙の中から投票しようとする候補者あるいは政党を見つけ出すことは容易でなく、かえって有権者に無用な混乱を与えるおそれがある(2)立候補の届け出の締め切り後に候補者名、政党名の入った投票用紙を調製しなければならない(3)記号式投票では一見してどの候補者、政党への投票かがわからないため、開票作業に時間がかかる、などと説明された。これとは別に、自民党議員が「有権者に名前を書いてもらう」ことを重視することも影響したとの指摘も根強い。

   上記の提案理由にもあるように、記号式の導入にはハードルがある。例えば、立候補者や政党の数が多かった場合、投票用紙を大きくする必要がありそうだ。ただ、投票用紙の交付、読み取り、カウントは機械で行っており、使える用紙のサイズは決まっている。そのため、投票用紙を大きくすると今の機械の利用が難しくなり、開票に時間がかかるようになる。機械で使えるサイズに収めるために字を小さくするのも、本末転倒だという指摘が出そうだ。これが上記の提案理由の(1)と(3)が絡む問題だ。

   (2)の問題も難しい。公示(告示)日の17時に立候補が締め切られ、候補者が確定しないと投票用紙を印刷できないが、翌朝には期日前投票が始まってしまう。きわめてタイトなスケジュールで印刷するか、期日前投票だけ自書式にするかの運用を迫られる。

   こういった事情のため、地方自治体で行われる「記号式」の投票は、候補者の数が比較的少ない首長選が中心。期日前投票や不在者投票は自書式だ。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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