2024年 4月 21日 (日)

「面白いマンガが読みたい」一心で歩んだ38年 プロ作家も多数輩出「コミティア」の歴史とこれから

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コミティアが「マンガ家の登竜門」に

――コミティアには多くの出版社が持ち込みを受け付ける「出張マンガ編集部」が設けられています。ここからデビューする作家もいるそうですが、どんなねらいで導入したのでしょうか?作家さんから要望があったのでしょうか?

「出張マンガ編集部の企画を始めたのは2003年からですから、20年近く前になりますね。作家さんからの要望という訳ではなく、私としては、同人と商業の間の垣根を下げたい、という意図で始めました。
当時の同人作家は商業誌に対して、自分の好きなものを描かせてもらえないんじゃないか、編集者は厳しくて怖い、というイメージを持たれていました。私は『ぱふ』の仕事で彼らと接点があったので苦手意識はありませんでしたが、確かに私から見てもキャリアの浅い作家さんに対して高圧的な態度をとる編集さんがいたのは事実です。しかし情熱をもって良いマンガを作ろうとする編集さんもたくさんいたので、コミティアは商業誌の編集者とは良い関係を築きたいと考えていました。
先に言ったように、作品が同人誌に発表されても、商業誌に発表されても、その価値が変わるわけではありません。ただ、良い作品はなるべく多くの人に読まれて欲しい。だから、オリジナルの作品を描く同人作家には、商業誌の選択肢もあることを意識して欲しかったんです。出張マンガ編集部はそういう可能性があることを可視化する目的もありました」

――出版社が訪れることを恐れる参加者はいませんでしたか?

「最初は少し抵抗もあったと思いますが、歓迎する声のほうが圧倒的でした。二次創作の場合は著作者・権利者に見られたくない人もいたと思うけれど、コミティアはオリジナル作品に限定しているので、比較的問題なく受け入れられました。『出版社が出張する形で自分たちの作品を見に来てくれる』ということで、持ち込みにハードルを高く感じていた作家も気軽に挑戦しやすくなりました。
また出版社からしても持ち込みが減りはじめた時期だったので、双方の需要がマッチして今の形になりました」

――中村さんを突き動かすのは、「プロ・アマ問わず面白いマンガを読みたい」「面白いマンガを何らかの形で世に広めたい」という気持ちなんですね。

「そうですね。だから2014年に30周年記念で『コミティア30thクロニクル』を出版できたことは、自分としてもマンガ界に一つの功績を残せたと思っています。コミティアの30年の歴史の中で発表された作品の中から、短編を中心に厳選しアンソロジーの形で書籍化したものです。ある書店員さんは『載っている作品が全部面白いのはすごい』と感心してくれました。本を売るプロの評価として嬉しかったです。こういう言い方は変ですが、同人作品が商業作品に対して、質の点ではけして引けを取らないことを証明できたと思います」

――今や「マンガ家の登竜門」と呼ばれるコミティアですが、プロを目指しているわけでもなく、マンガを描き始めたばかりのような初心者で、自身のマンガが「面白い」のかもわからない。そんな自信のない作家も参加して良いのでしょうか?

「もちろん遠慮なく参加してほしいです。初心者でも大ベテランでも平等に机を並べて作品を発表できるのが同人誌即売会の何よりの良さです。
作家さんも作品を発表するときは毎回ドキドキですよね、自分では自信があっても読者にどう評価されるかわからない。でもコミティアを続けて分かったことは、とにかく作家さんは一作ずつ完結させた作品を描き続けないと成長しないんです。だから描きながら自信が無いときも、ままずは形にして人に見せることが大事です。
売れる売れないは次の段階。もし読者の反応が良くなければ次の作品に生かせばいい。創作活動は一作ずつ切り取って考えるのではなく、描き続けながら成長することが目的です。
ただ作家さんにはその時その時で描きたいものがあるでしょうし、それが無い時は休んでも構わないと思います。しばらく離れてまた描きたいことが自分の中に生まれたら戻ってくればいいんです。
コミティアはこれからもずっと続きます。作家の皆さんには、作品を通して交流ができる場所、成長できる場所を維持することを約束します。だから安心して今描きたい作品を描いて、本にして持ってきてください」

――「コミティアに参加すると漫画を描きたくなる」と多くの参加者から言われています。

「それはサークルアンケートでもよく書かれることですね。一つの広い空間に、何千人という作家が集い、それぞれが自分の作品を持ち寄って発表している。彼らは仲間でもありライバルでもある。これは初期にスタッフの仲間だったマンガ家の山川直人さんの言葉ですが、『マンガ描きが一番にやる気になるのは、人に何か言われた言葉よりも、仲間が面白いマンガを描いたときに何より負けられないと思うんだ』と言われたことがありました。ああ、コミティアはそういう場所になればいいんだな、と考えて、これまで続けてきました」
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