「タイパ重視」職場の若者が耳を傾ける話し方の秘訣 上司は「成功体験」語ってはいけない

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成功体験は「自慢話」と受け取られ、時間のムダに

――先輩や上司と話すことは「タイパ」に合わない、つまり、時間の無駄だということですか。実は、私は後輩のA君に「もっとこうすれば、いい取材ができて、いい記事が書けるのになあ」とアドバイスをしたいのですが、どう話せばいいでしょうか。

福澤さん タイパ志向のある若者は、早く成長したい人が多く、短い時間での学びを大切にします。上の人と一緒に飲みに行ったら2~3時間はかかる。もし、2次会にでも行ったら、5~6時間かかるかもしれない。それに見合う学びや成長があるのか、少しシビアにとらえる傾向がうかがえます。

ただし、私たちの調査では半数以上(52.4%)の若者が「上の世代の人との会話によって学ぶことがある」と答えています。Aさんが、最初から上の人と話しても「学びはない」と考えるタイプなら交流自体を拒まれる可能性もありますが、何かを学べるかもしれないと期待するタイプなら、交流することをポジティブにとらえて、聞く耳を持ってくれる可能性も高いと思います。

――ズバリ、A君にどんな話し方をすれば、アドバイスがビシッと響くでしょうか。

福澤さん 何より、あなたの成功体験を話すより、失敗体験を話すことが大切です。

心理学研究の話になりますが、人間はモチベーションを高めて何かを成し遂げようとする時に、「成功したい、だから頑張る」と前向きの反応を示す「促進的志向性」のタイプと、「失敗したくない、だから頑張る」と後ろ向きの反応を示す「予防的志向性」のタイプの2つに分かれると言います。

本来は本人の志向にあったアドバイスの仕方が望ましいとされていますが、ある研究(注1)では、高齢者との交流についてはどちらのタイプの若者でも、「失敗しないための教え」のほうが、感謝を抱いたという結果になりました。

こうした研究結果からわかるのは、あなたの失敗体験、たとえば、「こんな記事を書いたら、炎上して困っちゃった」とか「全然、ページビュー(PV)を稼げない時期が続いて落ちこんだ」といった経験談を話したほうが、相手の心に響くし、学びになるととらえてもらえる可能性が高いということです。
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