「タイパ重視」職場の若者が耳を傾ける話し方の秘訣 上司は「成功体験」語ってはいけない

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「キミはスゴイ」より「キミは役に立っている」

――なぜ、若者は上の人と話す時は、「予防的なアドバイス」に感謝するのでしょうか。

福澤さん 若者が上の世代との会話をする際、気を遣って持ち上げたりすることもあると思います。そのため、若者には最初から、「自慢話をして自分自身がいい気持ちになりたいのだろう」というバイアスがかかっているのではないでしょうか。そうした心理もあって、上の世代からの成功体験をもとにしたアドバイスを素直に受け止めきれないのでは。

そこで、あなたが自分の恥をさらしてまで失敗談を語れば、Aさんは「この人は、自己犠牲を払ってまでオレのことを思ってくれている」と、真っ直ぐ心に刺さると思います。

上の人が下の人と話す時に大切なことは、積極的に自分の弱みを見せる「情報開示」なのです。まず、決して偉そうにせずに、相手(Aさん)を貶(おとし)める気はないと暗に伝えること、それが若者から信頼感を得る土台です。

なおかつ最初は、自身の弱みである失敗談を面白おかしく話すなどして、リラックスした雰囲気をつくれれば、相手の警戒心もとけやすくなると思います。そうしてお互いに信頼関係をもってコミュニケーションができるようになれば、今度こそ、ビシッとした、突っ込んだアドバイスでも若者が素直に受け取りやすくなると思いますよ。

――私はもともとお茶らけた人間で、失敗談を面白おかしく話すのが得意なので、何とかA君にアドバイスできそうですね。ほかに大事なポイントはありますか。

福澤さん 日本の若者はほかの国の若者に比べ、自分を肯定する「自尊心」が非常に低いと言われています。内閣府が2018年に行った7か国の若者の意識の国際比較調査によると、自分自身に満足したり、自分に長所があると思ったりする若者の割合は、わずか10%で、7か国の中で最低でした。米国では58%、英国では42%、お隣の韓国でも36%の若者が自分に満足しています。

その代わり、自尊心に関連するもう1つの項目である、自分が社会や周囲に役立っているかどうかを重視する「他者に対する有用感」の意識は、自分への満足感」と比べて他国との間に大きな差はでませんでした。そして、有用感が高いほど、自分への満足感も高くなるのは、日本の特徴でもあります。

米国や英国の若者は、他者に役に立っているかどうかに関係なく「自分はスゴイ」と感じ、「自尊心」が高いのですが、日本の若者は、自分が役に立つという関連で「自尊心」が高くなる特徴があります。

だから、Aさんと話す時は、「君はスゴイよ」というより、「君は会社の役に立っているよ」とか「みんな、君に救われているよ」と声かけすると、Aさんのモチベーションもググッと上がるのではないでしょうか。

また、現在は、若者の意識や価値観が多様化していることを改めて認識して、決めつけや先入観を持たずに接することがとても大切です。
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