「タイパ重視」職場の若者が耳を傾ける話し方の秘訣 上司は「成功体験」語ってはいけない

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「人、それぞれ」という相槌は「冷たい」

――どういうことでしょうか。

福澤さん たとえば、1990年代初頭までは「定番のライフコース」がありました。学校卒業後に就職、結婚して子どもをもうけ、妻は専業主婦として家庭を守り、夫が稼ぎ頭として出世を目指すというものです。しかし、今の若い世代は1990年以降に生まれ、多様な価値観が当たり前の社会に育っています。

「男性だから出世したいはず」「女性だから子どもがほしいはず」という先入観は禁物です。実は先日、私は女子学生を中心に「女性のキャリアと子育ての両立」をテーマにした研修を行ないました。すると、さまざまな意見の学生がいることがわかりました。

「結婚はしたいけど、子どもはほしくない」とか「結婚はしたくないが、子どもはほしい」とか、中には「子どもを生んだら、キャリアはいらない」とキャリアと子育ての両立を拒否する人もいました。両立を目指す学生が多いかと思っていましたから、その多様さに驚かされました。

――想定とは違っていたわけですね。そういう時はどうするのですか。

福澤さん 私はつい「人、それぞれですね」と言ってしまいました。これは最近、異なる意見の人と出会った時に使われる、相槌を打つ便利な言葉です。しかし、自分でも使いながら、あまり良くない言葉だと反省しています。相手に寄り添っているように見えて、実は無難にやり過ごしているからです。

社会学者の石田光則さん(早稲田大学文学学術院教授)は著書『「人それぞれ」がさみしい―「やさしく・冷たい」人間関係を考える』(筑摩書房)のなかで、「人それぞれ」という言葉には、個々の人の違いを尊重する一方で、考えが異なる者同士が互いに本音で語り合わず、内面に深く踏み込むことを避けようとする面があると、指摘しています。

――では、どういう言葉ならいいのでしょうか。

福澤さん 私なら、「どうしてそう思うのか」とか「ぜひ、教えてほしい」といった問いかけをおススメします。そうすれば、Aさんと本音でぶつかり合い、業務を超えたコミュニケーション理解が深まることでしょう。
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