2025年2月末、米原駅の駅弁業者、井筒屋が駅弁事業を終了した。
滋賀県にある米原駅は、東海道新幹線と北陸本線の乗り換え駅として、多くの人が利用していた。また東海道本線も接続しており、鉄道の一大ジャンクションとして機能していた駅だった。
そういう駅では、旅行中の空腹を満たすために、駅弁を買う人が多く、また駅そばなども売れていた。ほかには、駅の売店でお菓子や飲み物を買う人や、新聞・雑誌を購入する人もよくいた。
以前は鉄道で遠くに出かける際には、長時間の移動となり、食事を途中で手配しなければならないことも多かった。その際に駅弁というのは非常にありがたい存在だった。安いものも高いものもあり、ふつうの幕の内弁当もあればご当地の名産品を盛り込んだものも売られていて、非常に重宝するものだった。
鉄道の時刻表には各地の駅弁が掲載され、名物駅弁を紹介する本も多く見られた。
鉄道の要衝で売られていた駅弁
街自体は有名ではないのに、駅弁でその名を知られる駅というのもあった。たとえば信越本線の横川駅は、「峠の釜めし」の存在で多くの人に知られていた。
米原駅も、井筒屋の「湖北のおはなし」があったからこそ、知名度の高い駅だった。
横川駅にせよ米原駅にせよ、停車時間が長かったり乗り換えがあったりで、ホームに人が行きかう駅である。待ち時間を利用して購入する、というのがよく見られた。
しかし横川駅は、高崎から長野まで新幹線が開業する際に、横川から軽井沢は廃線となり、行き止まりの駅になった。
米原駅も駅弁が売りにくい状況になっている。北陸新幹線が金沢から敦賀まで延伸し、米原経由で福井方面に向かっていた人たちが北陸新幹線を利用するようになり、乗り換え客が減った。しかも米原~敦賀間という短時間の特急だと、車内で駅弁を食べようという気にはならない。米原を利用する人は、北陸方面と名古屋方面を行き来する人だけになり、場合によっては敦賀・米原と短時間で複数回の乗り換えをする必要が発生する。
そうなると、駅弁を食べようという気にはならない。井筒屋は今後の見通しを厳しいものだと感じ、事業を終了したと考えられる。
しかし、こういった時代でも生き残っている駅弁業者はある。横川駅の荻野屋もその一つだ。