ハーフサイズカメラは「大衆機」
ハーフサイズカメラは、最近になって新しく発明されたものではない。ハーフサイズカメラの名機と言われるオリンパスPenシリーズの最初の製品は、1959年に登場した。なんと86年前だ。
1959年といえば、高度経済成長期の直前の時期である。終戦から10年余りの未だ貧しい暮らしの中、フィルムも当時の賃金水準と照らし合わせると、決して安くはない。そのため、35mm版でも16枚撮りフィルムというものがあった。Penを使えば、それが32枚になるのだ。
ちなみに、筆者の手元には1962年発売のPen EESがある。当時のカメラの「大きくて複雑」という概念を覆すような小型かつシンプルな設計で、写真撮影の専門知識のない人でもいい写真を撮影できるということを宣伝文句にしていた。
能動的なシャッター速度の調整や絞り調整は不要で、フィルムの巻き上げは富士フイルムの『写ルンです』のようなダイヤル式だ。
セレン光電池が作用し、暗いところではリリースボタンを押せなくなるという機能も搭載されている。これにより、光量不足の写真を撮影してしまうことを回避できるのだ。
そんな歴史あるハーフサイズカメラが、令和の物価高時代にいままた脚光を浴びている。(澤田真一)