美容整形ブームが到来し、早くも数年の時が経過した。令和の今は10代の若者が美容クリニックへと訪れる光景もわりと普通となり、整形に対する偏見が非常に薄れている。
「美しい顔」を手に入れる人々が増える一方で、悲しいかな、手術が失敗に終わるケースも多い。そのたびに私は「整形は魔法ではない」という現実を改めて思い知るのだが、「整形失敗」の定義も非常に難しいところだ。
誰もが見てわかるほど造形が崩れていれば、失敗と断言してもいいだろう。しかし、第三者にはわからない程度の微々たるズレが気になり、クリニックにクレームを入れて揉める患者も後を絶たない。
実際に、クレームに対して「逆ギレ」をするパターンなどのトラブルも。おそらく以前から問題は起きていたと思うが、ブームによって美容整形の闇が明るみになった点は否めない。
整形失敗とSNS炎上...悪いのは?
そもそも手術には「絶対」の二文字がない。何が起こるかわからない人体を取り扱っているのだから、予想外のトラブルが発生するのは当たり前。医師のセンスが大きく問われる美容整形に関しては、ゴールが一つとは限らないものだ。
一般的な外科手術とは異なり、新たな顔へ生まれ変わるのが目的となると、医師と患者による意見のすり合わせは非常に重要なところ。個人によってオーダーが全く違うとなると、少しのズレが生じるだけでも患者は納得がいかない。
明らかに見た目が悪くなった場合、高いお金を払った側が騒ぐのは当然のこと。これは技術的な問題もあるだろうか。いずれにしても、真摯な対応がなく「お金だけもらってハイ、さようなら」といった態度なら、SNS上で炎上まっしぐら、「晒し」に遭っても文句は言えないのだ。
しかし、なかには勝手な事情で失敗を招き、クリニックのせいにする人もいる。
最も多いのが手術後の「禁忌」とされる喫煙や飲酒を平気でして感染を引き起こし、該当箇所が化膿。その結果「失敗された!」と騒ぐパターンだ。鼻の術後に感染した人が大騒ぎをしたものの、蓋を開けてみると禁忌に手を染めまくっていたという、完全なる自業自得オチなんてことも。
そして、見た目は綺麗なものの自分の理想とはかけ離れているために「カウンセリングの時の態度が悪かった」「話を聞いてくれず、勝手にやられた」と後出しのごとくSNSに書き込む事例も珍しくはない。
果たして悪いのは医師なのか? 患者なのか? どうして、このようなトラブルが多発するのか? 筆者は、儲かるからと言って経験と技術が浅いまま開業する医師、そしてブームに乗っかり諸々のリスクを考慮せずに手術を受ける患者が増えてしまった。これらの要素が、悲惨な状況を招く原因の一つだと考える。
「失敗」における概念は人それぞれだが、トラブルを起こさないための心掛けをお互いにもっと考えねばならない。