7月も終盤に差しかかり、2025年プロ野球シーズンも折り返しを過ぎた。セ・リーグで過去3年連続最下位に沈んだ中日ドラゴンズで、ファンの注目を一身に集めている存在がいる。ドラフト1位ルーキー・金丸夢斗投手だ。
7月21日の横浜DeNAベイスターズ戦では相手エース・東克樹投手に8回1失点と好投。しかし0-1で敗戦投手となり、いまだプロ初勝利を挙げられていない。
SNSでは中日ファンや他球団ファンからも「金丸かわいそうすぎる」という声が上がっている。
150キロを超えるストレートで健闘しているが......
関西大学のエースとして、昨年11月のドラフト会議で「即戦力No.1左腕」と注目された金丸は、4球団の競合を経て中日に入団。
今年のキャンプでは腰痛の懸念から調整が遅れたものの、5月5日の横浜DeNAベイスターズ戦でプロ初登板・初先発を果たした。
150キロを超えるストレートと緩急をつけた投球で6回92球8奪三振、被安打5に抑えたが、2失点して敗戦投手となった。それでも、前評判どおりの実力を発揮し、近く初勝利も確実と思われた。
しかし、それから約2か月、8試合に先発して0勝4敗と、いまだ勝ち星はない。
なかでも初勝利に迫ったのは7月8日の読売ジャイアンツ戦。7回2失点で降板後、味方が勝ち越して勝利投手の権利を得たが、9回に逆転されサヨナラ負けを喫した。
驚きの「援護率1.24」攻撃力の低い味方打線
これまで8試合の登板中、防御率は2.41。7試合で6イニング以上、自責点3以下に抑えるクオリティ・スタート(QS)を記録し、先発投手としての役割は十分果たしている。
しかし問題は、味方の援護点。金丸登板時の援護は著しく少ない。
7月21日時点のデータでは、中日はチーム打率と得点数がともにリーグ最下位。
セ・リーグで規定投球回を満たしている13人の投手の中で、最も援護率(投球時の味方得点を9イニングあたりで換算した数値)が低いのは、同じく中日の松葉貴大投手だが、その数値は2.31。16試合登板で7勝6敗を記録している。
金丸の援護率は1.24。つまり、2点取られたら勝てないというハードモードなのだ。
これではファンならずとも「かわいそうすぎる」と感じるのは当然だろう。
尊敬するカブス今永のルーキー時代に酷似!?
このような金丸投手の不運な状況に、あるメジャー投手のルーキー時代を思い出す野球ファンも多い。
それは、シカゴ・カブスの今永昇太投手だ。
2016年、即戦力左腕としてDeNAに入団した今永は、3月29日の巨人戦で初先発して以降、5試合のうち4試合でQSを記録。
この間、防御率は2.45とセ・リーグ5位だったにもかかわらず、援護率はわずか0.50。それでも今永は「言い訳は防御率0点台の投手だけが言える」と、前向きに勝利を目指した。
そして5月6日の広島東洋カープ戦でプロ初勝利。「今日は広島ではなく過去の自分に勝てた」と語り、「投げる哲学者」「今永語録」などの言葉を生んだ。
今永はこの試合から5連勝を記録。この年は8勝9敗と負け越したが、防御率2.93という堂々たる成績を残し、長く低迷していたDeNAが初めてクライマックスシリーズ(CS)に出場する原動力となった。
金丸は以前から尊敬する投手として今永の名を挙げており、背番号も同じ「21」。
勝てない状況でも「プロ1年目からいい経験をさせてもらっています」と語る姿には、今永の影響を感じさせる前向きさがある。
7月21日、DeNA戦の中継で解説を務めた元・中日コーチの荒木雅博氏は、何度も「いつか勝てるピッチャーなので」と繰り返した。
中日は昨年まで立浪和義監督のもとで3年連続最下位だったが、今年は井上一樹監督に代わり、この日までに4位とチーム再建の兆しが見えてきている。
今永同様、金丸が中日の救世主となり、世界に羽ばたくエースとなる日は近いはずだ。