2025年7月20日投票の参議院選後の政局は、「石破退陣」論と「石破続投」論のはざ間で迷走状態が続く。選挙で最大の争点だった「物価高対策の消費税減税と給付」は与党が負けたのに、実現する目途が立たない。一方で、得票を大幅に伸ばした参政党がこの先「日本人ファースト」の看板の下に何を実現するのか、これも、わからない。「既成政党は30年間なにをしていたのだ」選挙後のJNNの世論調査(8月2、3日)によると、石破茂内閣の支持率が4ポイントアップ(36.8%)したほか、参政党(10.2%、4ポイント↑)や国民民主党(8.7%、2.8ポイント↑)の支持率は上がり続けている。自民党本部事務局で長い間選挙の実情を見てきた久米晃・元事務局長(70)は、今回の参議院選結果をこう評価する。「平成以降、少子化や労働力不足、食糧自給などさまざまな課題を、政党が示してきましたが、なにひとつ結果が出ていません。既成政党は30年間何をやっていたのだ、という積もり積もった不信があったと思う」(週刊金曜日8月1日号)。昨年秋の衆議院選で自民党は261議席から191議席へ一挙に70議席減らし、今回の参議院選でも大敗した。「ただ、参政党が支持されたわけではない。既成政党不信の受け皿になったわけです。自民党にも立憲民主党にも票を入れたくないひとが、新しい、何かやってくれそうだな、という期待感で参政党に票が集まったのだと思います」。「政治はロックだ!」の標語掲げていたがしかし、「既成政党不信の受け皿」になったとみられる参政党の主張はよくわからない。今回の参議院選に向けて今年の初めころには、「政治はロックだ!」や「愛と政治」との標語をポスターに出したが、話題にならなかった。その後、都議選前に打ち出した「日本人ファースト」が、いきなり炎上した。同党のHPにある新憲法の構想案では、天皇について「元首として国を代表」(第3条の2)、「国は主権を有し」(第4条)としており、憲法学者からは「憲法学の観点から言えば、憲法の体をなしていない」(石川健治・東大教授、朝日新聞より)との批判がある(J-CASTニュース7月9日)。神谷宗幣代表は、7月3日の街頭演説(東京・新橋駅前)で新憲法案について「こりゃあ叩かれるぞと思いましたよ。でも、国民のみなさんにご意見いただきながらブラッシュアップして」と語っていた。東京選挙区で2位当選したさや氏も「核武装は最も安上がり」と発言して話題になったが、8月1日の初登院時には「党とのすり合わせが終わりましたら、ご報告させていただきたい」。「参政党のかたち」はまだ、よく見えない。予算委員会では石破首相もあいまいよくわからないのは参政党ばかりではない。今回の選挙で最大の争点だった「消費税減税と給付」をめぐる議論は、4日の衆院予算委員会でもあった。野田佳彦・立憲民主党代表が「国民一人当たり2万円」の与党給付案は参院選大敗という「民意」で退けられた、としたうえで「立憲案のような給付案を考えるのか」と投げかけられても、石破首相は「(比較第一党と第二党の)責任を共有したい」と述べるにとどまった。協議の見通しは今のところない。では、と久米晃さんに改めて聞いた。「(自民・社会)55年体制の終わりとともに、政党は消えたのではないか。その代わり『御用聞き集団』による目の前の雑務処理政治がしばらく続くのでしょう」各党、御用聞きに走っているという。しかし、だれの御用を聞くのか。(ジャーナリスト 菅沼栄一郎)
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