お盆の時期は、新幹線や特急に多くの人が押し寄せる。当然ながら、満員の列車が多い。そこで、それほど遠くではないところに帰省するのなら、普通列車を使ってみるのもひとつの案だと思われる。近年の普通列車は、加減速性能も向上し、それにより速達性が向上している。普通列車でも、それなりに速い。そこで、普通列車で帰省してもそれほど違和感がない場所はどのあたりか、現実的に帰省で使えるのかを考えてみたい。東京駅を朝9時前後に出発し、到着地でも無理のない時間に収まる範囲内で紹介する。9時台に出発、大阪は18時過ぎるけど東京駅を平日9時16分、土休日9時20分発の普通列車に乗ると、熱海には11時06分に着く。11時14分に熱海を出発すると、静岡に12時30分、浜松には13時43分に到着する。このあたりは無理のない時間帯だと考えられる。だが、もう少し先に行けるのではないだろうか?浜松で13時46分発に乗り継ぎ、14時21分に豊橋に着く。そこから快速に乗り、15時28分には名古屋に到着する。乗車券だけで乗り継いで行っても、それなりに早く名古屋に着くと考えられるのではないだろうか。ちなみにこの先を乗り継いでいくと、大阪には平日は18時13分、土休日は18時12分に着く。大阪だと現実的ではないが、浜松や名古屋だとそれほど時間はかからない上、静岡だと現実的な選択肢としてありうる時間ではないか、と考える。なお、この場合は交通系ICカードは使用できず、紙のきっぷを購入することが必要だ。乗車券だけでも指定席券売機で購入できる。中央線方面はどうか。平日なら東京を9時17分に出発する快速は、10時29分に高尾に着く。土休日なら9時20分発で10時28分着だ。そこから平日なら10時40分、土休日なら10時45分高尾発に乗る。甲府には平日は12時21分着、土休日は12時22分に到着する。甲府は結構近いのではないか?さらにその先、小淵沢には13時14分に着く。ここで14時05分発に接続し、松本には15時19分に到着する。松本までなら可能性としてありで、甲府は現実的と考えられる。甲府や松本なら、交通系ICカードで行くことができる。高崎線・東北本線方面は接続が「難敵」では高崎線方面はどうか。東京9時21分発の快速「アーバン」に乗れば、平日なら11時05分、土休日なら11時13分に高崎に着く。だがこの先が問題だ。前橋に向かうなら列車の本数があるものの、水上方面には12時02分まで待たなければならない。この列車で水上に13時09分に着いても、13時32分発長岡行きに接続することは可能である。ただ、群馬県と新潟県の県境は列車の本数が少なく、列車の遅れなどが発生すると大変なことになる。なお長岡には15時32分に到着、1分乗り継ぎで新潟行きに乗り、16時50分に新潟に着く。正直、高崎・前橋までしか普通列車での帰省は薦めない。交通系ICカードは、群馬県と新潟県をまたいだエリアを設定していない。東北本線方面を見てみよう。平日なら東京9時11分発、宇都宮11時14分着、土休日なら東京9時03分発、宇都宮10時52分着で、宇都宮ならば着いてしまう。11時23分発の黒磯行きで12時17分着。だがここからは接続がよくない。13時22分発までしか列車がない。この列車に乗っても、新白河・郡山で乗り換え、福島には15時26分着。15時43分発に接続し、17時05分に仙台に着く。黒磯~新白河間がネックになっているため、普通列車は使いにくくなっている。ここでも、交通系ICカードは東京からなら黒磯までがエリアとなっている。では常磐線はどうか。9時18分東京発に乗ると、10時33分に土浦に着く。水戸には11時32分に到着する。この先、高萩止まりの列車が接続し、その先のいわきに行くなら12時10分発に乗る必要がある。いわきには13時37分着となる。ここから先は本数が少なくなり、上手に接続しても広野までになってしまう。いわきまでがぎりぎり、といえるのではないだろうか。なお、いわきまでは東京から交通系ICカードを使用することが可能だ。高崎や前橋、宇都宮まではスムーズだが東京からの帰省で普通列車が使いやすいのは、なんといっても東海道方面である。接続がスムーズで、遠方までも行きやすい。そこそこ使えるのが中央線方面。甲府までなら、不便さはそれほど感じない。問題は高崎線・東北本線方面である。高崎や前橋、宇都宮まではスムーズだが、その先はもう接続が悪いというのが正直なところである。常磐線方面もこれに近い。土浦・水戸までは普通列車が十分使用できるが、限界がいわきであるといえる。このあたり、「青春18きっぷ」の使いやすさとも似てくるのだろう。普通列車を乗り継ぐにあたっても、接続が悪いところがいくつかの路線で見られる。近距離という限定条件で普通列車での帰省も可能ではないだろうかと考えられる。なお、東海道方面だけは例外であるといえる。(小林拓矢)筆者プロフィールこばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『京急 最新の凄い話』(KAWADE夢文庫)、『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)。
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